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「くまのぬいぐるみ」(03)

くまのぬいぐるみを抱っこしていたせいで、チャックまの体も泥だらけになってしまいました。でもなんだかさっきまでの辛い気持ちがなくなって、ちょっと楽しくなってきたチャックま。
「きっと今日、ひどい天気なのにボクがお散歩に出たのは、このくまさんに会うためだったんだ」
そんな気持ちになったチャックまでした。

お家が見えてきました。すると玄関にコグマがタオルを持って立っていました。
「おかえり、チャックま!そろそろ帰ってくると思ったよ。はいタオル。背中を拭いてあげる」
「ただいまー、ありがとう」
「泥だらけじゃないの、どうしたの?…あ、その子は?」

チャックまは、雨がひどかったこと、散歩が大変だったこと、そしてくまのぬいぐるみに出会ったことを話しました。
「きみも災難だったんだねぇ…」コグマはそう言いながらそのくまさんをやさしく拭いてあげました。でもすっかりずぶ濡れになって、チャックまが踏んづける前から泥だらけだったくまさん。そう簡単にはキレイになりそうもありません。
「…天気のいい日にお風呂に入れてあげないといけないかもね」
「そうだねぇ…」

★ ★ ★

明けて翌日。昨日の荒れた天気が嘘のように梅雨の晴れ間がやってきました。そう、お洗濯日和です!
世の多くの主婦(主夫)たちが大喜びでお洗濯をしていそうなその日、チャックまとコグマもくまさんをお風呂に入れてあげることにしました。

まずチャックまが大きなたらいをお腹から引っ張り出しました。川の水はまだ前日の雨の影響で泥水でしたが、そんな時のためにきれいな水が湧いている内緒の場所を二人は知っていました。
たらいにくまさんを乗せて、二人は気持ちのいい青空の下をのんびりとその場所に歩いていきました。

湧き水をたらいに汲むと、まずはくまさんをよーく濯ぎました。もちろん乱暴なことはしません。チャックまの大きな手で、やさしく揉むようにゆっくりと、です。するとすぐに澄んだ水が泥やら汚れやらで真っ黒になりました。それを2〜3回繰り返してある程度きれいになったら、チャックまはお腹から固形石鹸を取り出しました。
「結局これが一番キレイになるんだよね」コグマが嬉しそうに言いました。

チャックまは石鹸に水をなじませてから泡立て始めました。しっかり泡立ててからその泡でくまさんを包み、またやさしく揉み始めます。
「ボクもやりたい!」
コグマが言うので、チャックまと二人で交互にゆっくりやさしく、くまさんを泡で揉んであげました。

充分に洗って最後に湧き水で濯ぐと、くまさんはすっかりキレイになっていました。
チャックまとコグマはもちろん、当のくまさんの顔もなんだかとっても嬉しそうに見えました。

04に続く


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