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「くまのぬいぐるみ」(09)

チャックまが起きてくると、コグマと一緒に目を黒く塗りました。チャックまのお腹から出てきた、のっぺらぼうのてるてる坊主たちにもお礼のつもりでそれぞれに顔を書いてあげました。

「それ、ファスニャンに似てるね!」「こっちはボクそっくり!」
そんな風に話しながら二人は楽しく作業をしました。それが終わると、チャックまが家の前の川原に薪を何本か持ちだしました。
「しばらく放っておいたから、しけってなきゃいいんだけど」
チャックまは薪を小さく山にして、その中に枯れた杉の葉を多めに押し込むとマッチで火をつけました。しばらくフウフウと息を吹きかけていると、心配するほどのこともなく薪から炎が立ち上がりました。
「コグマ、焚き火が燃えてきたよ」チャックまがコグマに声を掛けました。

コグマはてるてる坊主たちを抱えて焚き火のところまでやってくると、そばにみんな並べて手を合わせました。
「てるてる坊主さん、晴れにしてくれてありがとうございます」

二人は一つ一つ、大切に焚き火の中にてるてる坊主を入れていきました。てるてる坊主たちはみんな燃えて、青空に昇っていきました。

しばらく燃えていくてるてる坊主たちを無言で見つめていた二人。
「さぁ、そろそろ朝ごはんにしよう」チャックまが言って、あらかじめ汲んであったバケツの水で焚き火を消しました。
「朝ごはんを食べたら、くまさんを見に行こう!」コグマは嬉しそうに言いました。

そうそう二人が晴れて欲しかったのは、くまさんのことを心配してのことでした。ところが二人はいざとなると、くまさんを入れた落としもの箱の様子を見たいような、見たくないような、不思議な気分になりました。
くまさんがまだいれば持ち主が現れていない残念な状態ですし、くまさんがいなければ持ち主が持ち帰ってくれたのかもしれないけれど、それはそれでもうくまさんと会えないということでした。

二人は鮭の切り身を焼いたおかずとおにぎりで朝ごはんを食べた後も、なんとなくグズグズしていました。そのうちに日が高く上り、気づけばお昼間近になってしまいました。

「…お散歩に行こうか」

どちらからともなくそう言うと、二人は重い腰を上げて散歩に出ることにしました。いつもの散歩道を歩けば、必然的に落としもの箱の前を通ることになります。
二人はいつもならスタスタと歩いていく散歩道を、なんとなくノロノロと歩いていきました。

そして…

ついに落としもの箱が見えるところに出てきました。最初に見えたのは後ろ側なので、中がどうなっているかは近づくまで見えません。
二人はだんだんドキドキしてきました。箱の中はどうなってるのかな。くまさんはいるのかな、いないのかな。

怖いものに近づくように二人はソロリソロリと箱に向かって歩いていきました。すると…

「あ…いない……」
箱の中にはくまさんの姿は影も形もありませんでした。
「いや、ちょっと待って」チャックまは箱の中を覗き込みました。

「ほら!」チャックまが箱の中に手を入れて何かを取り出しました。
それは手紙でした。

10に続く


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