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ショートの小部屋

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2017年7月の記事一覧

アドバイス

あなたの思う通りになさい

そう

殻を打ち破るの

方法はいくらでもあるわ

私も応援するから

それに

お道具も貸してあげる

何にする?

これなんかどう?

使い方は簡単

相手に向けて引き金を引くだけ

ねっ

簡単でしょ

だめ?

それじゃあ

このお薬は?

コーヒーか何かに混ぜて飲ませるだけ

ほんの少しでいいのよ

これもだめ?

うーん

それじゃあ、これは?

ロケットラ

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突然私の娘が消えた

どこを探しても娘の姿はない

途方に暮れた私は妻に電話を入れた

「あなた何言ってるの?」

妻は私たち夫婦に娘はいないと言った

そんなはずは無い

私には・・・という名前の

名前・・・

名前・・・

咄嗟に娘の名前が出てこない

いや、絶対にいたはずだ

スマホに一緒に写した写真があるはず・・・

どこにもない

もう一度妻に電話を入れる

「お掛けになった番号は現在

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能力

視界の隅で何かの影を見る事ってありません?

ふっと影が動いて

ハッとしてそっちを見ても

誰もいない

そんな事ってありません?

そんな影が見える人は

その方面の能力がある

または

能力に目覚めた

のかも知れませんよ

視界の隅をよぎるのは

こちらの世界の者ではない

決して私たちと

交わってはならない

闇に棲む者の姿なんです

それが見えるって事は

あなたは

もうすぐ向こ

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宇宙灯台

ここは宇宙空間に浮かぶ

宇宙灯台

航行する宇宙船の無事を願い

明かりを灯し続ける

今日もまた

一隻の宇宙船が

銀河の海に迷い

ここへと流れ着いた

傷ついた船を直し

疲れきった体を癒し

また新たなる航海へと旅立てばいい

ここは宇宙灯台

宇宙空間でただ一つの

宇宙船乗りのオアシス

行く先を見失った船は

なぜかここに流れ着く

そして再び旅立つ者も

ここに居付く者も

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映像機器

私、すごい映像機器を開発しました

観ている人が

その映像の中に入って

実際に体験できるというもの

どう、凄いでしょ?

では早速試してみましょう

準備は簡単

ヘッドフォンとスコープを装着するだけ

それだけで映画の中に入ってゆけるんです

ここにディスクをセットして

それでは再生スタート

すごいすごい

超リアルだーっ!

痛てーっ!殴られた

本当に痛い

あーやめろ、撃つな

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プレイボール

ビッチャー投げました

ど真ん中のストレート

空振り三振

いや、バットを戻した

累審はセーフの判定

しかしボールはど真ん中

おっと、主審はボールの判定

フォアボールです

さあ一塁にランナーが出ました

次のバッターに第一球

ここで一塁ランナー走った

キャッチャー二塁へ送球・・・

しません

投げていれば

悠々アウトというタイミングでしたが

キャッチャー投げられません

投げ

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ドア

ここはあなたの心の中

たくさんの知識や

思い出の

一つ一つが

小さなドアの向こうの小部屋に

詰まっています

おや?

一つだけ鍵の掛かったドアがありますね

赤さびた古い鉄のドアです

大きな錠前でしっかりと閉ざされています

このドアを開ける鍵も

きっとあなたの心の中にあるはずです

探してみましょう

ありました

すぐに見つかりました

ずいぶん長い間

その鍵を握り締めていた

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代理人

私は代理人

この世界から

消えてなくなりたい

そんなあなたの代理人に

なってさしあげましょう

さあ

手をだして

私があなたの手に触れれば

もうあなたは誰でもない

私があなたになるのだから

もう何の心配もない

あれこれ思い悩む必要もない

誰もあなたを知る人もない

それどころか

あなたは人間でさえなくなるのだから

さあ

どこへでもお行きなさい

あなたは

すべてのもの

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迷子

私は迷子になってしまった

右も左も分からない

この深い森に

光は届かない

どこからか低いうなりだけが聞こえる

いくら歩いても

この森を抜ける事は出来ない

なぜここへ来たのか

私は立ち止まり考える

資料を整理していた

そして

誤って大切なデータを消してしまった

そうだ!

思い出した

赤と緑と白と黒の

巨大な木々に覆われたこの森は

私のパソコンの内部だった

失われたデ

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守る

あいつらが来る

釜や斧や鉈を手に

暗闇を這いながら

お前を奪いにやって来る

でも心配はいらない

私が全力でお前を守るから

だから

もう泣くのはおやめ

涙を拭いてあげるから

私の胸で眠りなさい

たくさんの声が聞こえる

お前を呼ぶたくさんの声が

足音が聞こえる

迫り来るたくさんの足音が

息づかいが聞こえる

すぐそこに迫る荒い息づかいが

だが心配はいらない

あいつらが束

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同窓会

A「おう、久しぶり」

B「5年ぶりか」

C「Fの葬儀の時以来だもんな」

D「Bお前、最近どうよ」

B「いやー、地獄地獄」

A「Dお前の方は?」

D「まだ捕まんねえ」

C「そうか、まだなのか」

B「そろそろ時効じゃねえのか?」

D「来年の3月」

A「ったく、警察は何やってんだ」

C「犯人は分かってんのか?」

D「ああ、スナックの客でZって男がいただろ?あいつさ」

B「Zなら

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遠距離恋愛

遠く離れた星の

異星人の女と恋に落ちた

きっかけは些細な事

スペースフェイスブックで

お互いに一目ぼれ

実際に会った事はないが

星間テレビ電話で毎晩おしゃべり

でも僕たちは

この恋が実らない事を知っている

僕は25歳

彼女は1700歳

年の差は関係ない

僕の身長は175cm

彼女は45メートル

身長も関係ない

僕の体重は70kg

彼女は25万キロ

体重も関係ない

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彼女

ついに彼女が出来た

25年生きてきて

初めて

しかも

理想の顔立ちと

理想のスタイル

そして

理想の性格

完璧と言う他はない

彼女が出来た

幸せが

僕の心を満たした

大声で

叫びたくなる

記念すべき

西暦2017年

7月

19日

水曜日

ついに

僕の

彼女が・・・

完成した

背後霊 ある背後霊の独り言

俺は背後霊

ある男の後ろで

その男を見守っている

「もっと前向きに生きろ!」

「他人のあら捜しはやめろ!」

「もっと自分を大切にしろ!」

背後霊は見守りながら

色々なアドバイスを送る

だがほとんどの場合

相手に伝わる事は無い

「相手の気持ちになって考えろ!」

「うるさい!うるさい!うるさーい!」

背後霊がうるさすぎる

だいたい

背後霊の俺を見守る事ないだろ

俺も背後霊

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