日本語がしゃべれなかった男の物語(プロローグ)
生まれも育ちも生粋の日本人だが、40歳過ぎまで日本語が苦手でうまくしゃべれなかった。これは本当の話である。原因は生まれ育った環境によるところが大きかったのに違いない。私は、昭和33年(1958年)に奄美大島の最北端の太平洋に面した小さな集落で生まれた。世帯数約60戸、人口は約200人弱の小さな集落である。昭和30年〜40年代は日本が高度成長期の坂を駆け昇っていく時代であったが、奄美大島は本土より10年以上も時代の潮流に乗り遅れていた。戦後しばらくアメリカの軍政下にあったが、激