シニア転職体験記17

この拘置所には全国に名を知られた指定暴力団のトップとNo2、No3が収容されている。トップは地裁で死刑、高裁では無期懲役の判決をうけたが上告され最高裁で争われることになっている。この組織のメンバーが3〜4人毎日のように拘置所に通ってくる。顔ぶれは毎日一緒だ。平日フル出勤、面会時間の9時〜16時まで開始前から最後まで滞在している。面会用駐車場と面会控室を頻繁に出入りしているのだ。最初は何のために毎日来所してくるのか不思議に思っていたが、観察しているうちに彼らの役割いや仕事の内容がわかってきた。一言で言うなら使い走りの役目だ。まず入所している最高幹部からの求めに応じて差し入れ等を行う仕事。差し入れは週刊誌や菓子類などの食品、衣服や羽毛布団などの寝具類にも及ぶ。また幹部の衣服を持ち帰り、クリーニング後きちっとアイロンをかけて差し入れするのも仕事だ。次に中の最高幹部と外の幹部との連絡係。3つ目は、マネージャー的な仕事だ。具体的には外の幹部達や最高幹部の家族が面会訪問する時に一切の段取りを担う役目だ。毎日通って来るので彼らとは顔見知りになった。普段は紳士的で愛敬があるが目つきだけは鋭く、妙なオーラを発している。1週間に1回以上幹部達が入れ替わり立ち替わり最高幹部に面会にやってくるが、そのお世話をするのも彼らの役目だ。幹部達とその付き人(ボディーガード)は、お揃いの黒のスーツでやって来る。多い時は10数名だ。面会駐車場での彼らの動きを見ていると893の世界の一部を垣間見ることができる。付き人達は幹部が来る1時間前から面会駐車場で待機し、その時間帯は黒づくめのお兄さん達がたむろするので異様な光景となる。幹部が到着すると1列に並び姿勢を正して出迎える。お辞儀は約90度の角度で時間も長い。ある意味で礼儀正しいとも言えるが893の世界の主従関係の厳しさが感じられる光景でもある。ところで、彼らはどういう訳かトヨタ車が好きなようだ。特に黒のアルファード。ナンバーも8が入っているのがお好きなようだ。従って、自身が運転する場合は、アルファードでナンバーが北◯◯や筑◯で数字に8が入っている車はできるだけ避けるようにしている。さて、到着した御一行は定められた手順を踏んて面会控室に向かう。面会控室は、文字通り面会人が待機する場所である。10数名が座れる長椅子が置いてあり、入口には差入物の検査室と差入用の売店がある。面会室の入口の部屋には刑務官が金属探知機等により面会人の身体チェックを行った上で面会室へ案内する。この面会控室に午前と午後に巡回警備するのも警備員の仕事だ。次回は巡回と裁判所への出廷、各施設からの入所時の模様を紹介したい。続く。

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