シニア転職体験記18

構内巡回は、午前と午後それぞれ1回30分間行っていた。構内に不審物が持ち込まれてないか、職員用の駐車場や官舎の敷地内に不審者がいないか不審物が置かれてないか、車が傷つけられていないか等に気を配り巡回点検する。面会控室も巡回対象箇所だ。組員幹部や組員が集団で面会に来所する時は、10数人で控室が占拠状態になる。そんな中を巡回するのだが、何回か巡回するうちに怖いお兄さん達も自然と通路を開けてくれるようになった。さて、裁判所への出廷、退廷後の帰着時、警備員は専用車両が一端入る出入ゲートの開閉作業を行わなければならない。ここはセキュリティゾーン(収容棟への入口)のため詳細は紹介できないが、警備員として唯一収容所の内部を見ることができる場所である。出廷時はマイクロバスに3〜5名の収容者と同数の刑務官が乗り込む。その際、収容者の後ろ手には手錠がかけられ繋がれた腰紐を刑務官が持ちバスに乗り込む。約30m離れた鉄条門トビラの前で車両が動き出すまで待機するのだが、収容者が乗り込む様子を観察することができる。裁判所への出発、帰着は毎日午前と午後マイクロバス各2台が使われる。他施設から入所してくる場合のセキュリティゾーンでの作業は、出発時とは逆となる。警察署からの入所は、ほぼ毎日、検察やその他の施設からの入所は不定期だ。ところで、指定暴力団の最高幹部が出廷する際は通常時と様相が全く異なる。その日は出廷車両は1台のみ、特別警戒と称して裁判所までの道中、拘置所保有の警戒車両と警察の警護用覆面パトカーが複数台マイクロバスの前後について警護する。空には警察の警戒ヘリと報道ヘリが飛び交い物々しい。構内表門の周辺は、拘置所の精鋭警備隊が厳重警戒するとともに外の面会駐車場は終日閉鎖され警察車両が駐車して警戒にあたるとともに周辺の道路はパトカーが数台で警戒する。また、報道陣もテレビクルーを始め取材に来る。次回は古くは刑場として、昭和に入ってからは死刑執行も行われてきた当該拘置所において体験した不思議な出来事などについて紹介して転職体験記の拘置所編を締めくくりたい。続く。

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