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#1415 今日から『風流佛』に挑戦するぞぉ!

さて……幸田露伴は1889(明治22)年2月から8月にかけて「都の花」に『露団々』を発表し、山田美妙に絶賛されたあと、同年9月に吉岡書籍店の叢書「新著百種」の第五号で『風流佛[フウリュウブツ]』を発表します。ちなみに「新著百種」は以下の順に出版され、記念すべき第一号は#1001から#1042にかけて読んだ尾崎紅葉の『二人比丘尼色懺悔』です。

第一号 尾崎紅葉『二人比丘尼色懺悔』1889年4月
第二号 饗庭篁村『掘出し物』1889年5月
第三号 石橋思案『乙女心』・尾崎紅葉『風雅娘』1889年6月
第四号 巖谷小波『妹背貝』1889年8月
第五号 幸田露伴『風流佛』1889年9月
第六号 広津柳浪『残菊』1889年10月
第七号 宮崎三昧『松花録』1889年12月
第八号 作者不詳『芳李[ポーリーン]』・依田学海『小野篁[オノノタカムラ]』1890年2月
第九号 川上眉山『墨染桜』1890年6月
第十号 渡部乙羽『露小袖』1890年10月
第十一号 岡田朝太郎『妾薄命』1890年11月
第十二号 森鷗外『文づかひ』・幸田露伴『 真言秘密聖天様』1891年1月
第十三号 丸岡九華『山吹塚』1891年2月
第十四号 浮世夢介『石倉新五左衛門』1891年3月
第十五号 松原岩五郎『長者鑑』1891年6月
第十六号 武田仰天子『新世帯』1891年7月
第十七号 中村花痩『離れ鴦』・作者不詳『朝顔』・巖谷小波『ばアや!』・遅塚麗水『碧流』1891年8月
号外 尾崎紅葉『新桃花扇』『 巴波川』1890年12月

#1297でも紹介しましたが、評論家の内田魯庵(1868-1929)が1927(昭和2)年に発表した「露伴の出世咄」には、『風流佛』に関してこんな記述があります。

露伴の名をして一躍藝壇の王座を爭ふまでに重からしめたのは『風流佛』であつた。『露團々』は露伴の作才の侮り難いのを認めしめたが、奇想天來の意表外の構作が讀者を煙に卷いて迷眩醉倒せしめたので、私の如きも讀まない前に美妙や學海翁から散々襃めちぎつて聽かされてゐた爲かして、讀んだ 時は面白さに浮れて夢中となつたが、其の面白味は手品を見るやうな感興で胸に響くものは無かつた。が『風流佛』を讀んだ時は讀終わつて暫くは恍然として、珠雲と一緖に五色の雲の中に漂うてゐるやうな心地がした。アレほど我を忘れて夢幻に徜徉するやうな心地のしたのは其後に無い。短篇ではあるが、世界の大文學に入れるべきものだ。

ということで、魯庵が世界の大文学に入れるべきといった『風流佛』を読んでいきたいと思うのですが……

それはまた明日、近代でお会いしましょう!

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