tokkodo/とっこうどう

古本屋を営んでいます。本を読むのが好きです。

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マガジン

  • ちょっとだけ明治はじまり雑学集

    いま身の回りにある、あんな物もこんな言葉も、すべては明治時代に原点がありました!当ブログ連載中にちょっとだけ紹介した雑学を一挙に集めてみました!

  • 坪内逍遥の『小説神髄』に挑戦だ!

    この国に「小説」を根付かせる!では一体「小説」とは何なのか!「小説」の性質と意義を理論的に紹介したのが坪内逍遥の『小説神髄』です!近代文学を読む上で避けては通れない理論書をはたして読破できるのか、挑戦しました!

  • 『中国小説史略』読書奮闘記

    「小説」という語源の『荘子』から20世紀に至るまで、中国小説の歴史を初めて学問的にまとめたのは小説家の魯迅でした!「小説って、なんで小説なんだ?」という疑問から始まった魯迅の『中国小説史略』の読書日記です!

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こんな始まりかたでもいいんじゃないかな

気がつけば… ぼくは立派なおやじになり、 気がつけば… ぼくは古本屋の店主になっていました。 歳というものは、生きていれば勝手に取るものですから、致し方ありません。しかし、よりにもよって、21世紀というデジタルまっ盛りの時代に、どうしてぼくは古本屋の店主になったのでしょうか。 古本屋の店主になるくらいですから、当然、本が好きなわけですが、それなら新刊書店の店員でも図書館の職員でもよかったわけですが、なぜか古本屋の店主になってしまいました。 思い返してみると、ぼ

    • #1480 どうせ馬鹿なのっそり十兵衛は死んでもよいのでござりまする!

      それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 十兵衛を寺から追い出そうと寺の者たちが騒いでいるところに、「何事に罵り騒ぐぞ」と上人の一声、一斉に鳴りをとどめます。事情を聞いて上人は「為右衛門そなたが素直に取次さえすれば……十兵衛殿、こちへおいで、とんだ目に遇わせました」と未学を軽んじず下司を侮らない対応。慈悲が浸み透り感涙の十兵衛。庭をめぐって、折り戸に入ると、小庭に出ます。ふたりは茶室に入り込み、十兵衛は下の動きたどたどしく「お願いに出ましたは五重塔のた

      • #1479 五重塔の仕事を私にさせていただきたい!

        それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 十兵衛を寺から追い出そうと寺の者たちが騒いでいるところに、「何事に罵り騒ぐぞ」と上人の一声、一斉に鳴りをとどめます。事情を聞いて上人は「為右衛門そなたが素直に取次さえすれば……十兵衛殿、こちへおいで、とんだ目に遇わせました」と未学を軽んじず下司を侮らない対応。慈悲が浸み透り感涙の十兵衛。庭をめぐって、折り戸に入ると、小庭に出ます。 「台目」とは台目畳のことで、畳の四分の一を切り取った残り四分の三側の大きさの畳

        • #1478 その六は、騒いでいる十兵衛たちのところに上人様が現れるところから……

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 今日から「その六」に入ります!それでは早速読んでいきましょう! ここでいう「法令」とは、鼻の両脇から唇の両端に伸びる、ほうれい線のことです。 「有楽形」とは、信長の弟の織田有楽斎(1552-1621)がひらいた茶道の一流派のことです。 「方星宿の手水鉢」とは、生け込み形で縦長の四角柱状の石で正面に星と刻まれている手水鉢のことです。 ということで、この続きは…… また明日、近代でお会いしましょう!

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          #1477 でかき声を発して馬鹿め!!!

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 襟のしるしの字さえ朧げな半纏を着て、古い股引を穿いて、髪は埃にまみれて、顔は日に焼けて品格なき風采の男が、うろうろのそのそと感応寺の大門に入ろうとすると、門番が「何者ぞ!」と質します。男は、腰を屈めて馬鹿丁寧に、「大工の十兵衛と申しまする。御普請につきましてお願いに出ました」。門番は、源太が弟子を遣わしたのだろうと通します。用人の為右衛門が立ち出で、「見慣れぬ棟梁、何の用事でみえられた」。「わたくしは大工の十兵

          #1477 でかき声を発して馬鹿め!!!

          #1476 その五は、のっそりの十兵衛が上人様に御普請を願い出るところから……

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 今日から「その五」に入ります。それでは早速読んでいきましょう! というところで、この続きは…… また明日、近代でお会いしましょう!

          #1476 その五は、のっそりの十兵衛が上人様に御普請を願い出るところから……

          #1475 かすかなる眼の光りを放ち「塔を建てよ!」

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 当時有名な番匠「川越の源太」が請け負って作った谷中感応寺は、どこにも批判すべき点がなく少しも申し分ない。そもそもこのような大寺にしたのは誰なのか。宇陀の郎圓上人である。若くして蛍雪の苦学を積み、雲水の修行をかさね、寂静の慧剣を砥ぎ、済度の法音を響かせる老和尚。道徳高い上人が新たに規模を大きくして寺を建てようと言い給うと、このこと八方に広まって、自ら奮って四方に寄付をすすめて行く人もあり、上人の高徳を説き聞かして

          #1475 かすかなる眼の光りを放ち「塔を建てよ!」

          #1474 その四は、感応寺建立の経緯を説明するところから……

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 今日から「その四」に入ります。それでは早速読んでいきましょう! ということ、この続きは…… また明日、近代でお会いしましょう!

          #1474 その四は、感応寺建立の経緯を説明するところから……

          #1473 ああ心配に頭が痛む、もうやめましょ、やめましょ

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 腕は源太親方、立派なものじゃと褒められるが、鷹揚の気質ゆえに仕事も取りはぐりがちで、いい事はいつもひとに奪われ嬉しからぬ生活を送る味気無さ。膝頭を縫った股引ばかり夫に穿かせること、他人の見る眼も恥ずかしいけれど、なにもかも貧がため。ああ、考えこめば裁縫もイヤになってくる。腕の半分も夫の気心が働いてくれたならこうも貧乏はしまいに。ところが今度はまたどうしたことか感応寺に五重塔が建つと聞くや否や、急にむらむらとその

          #1473 ああ心配に頭が痛む、もうやめましょ、やめましょ

          #1472 その三は、いまだ帰ってこない旦那を心配するところから……

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 今日から「其三」に入ります。それでは早速読んでいきましょう! ということで、この続きは…… また明日、近代でお会いしましょう!

          #1472 その三は、いまだ帰ってこない旦那を心配するところから……

          #1471 これも順々競争の世のさまなり

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 女房は、こっちへ来るがよいと言って、桜湯一杯。胸にわだかまりなく、いつものようにされて、清吉は恥ずかしく魂の底の方がむずがゆくなり、茶碗を取る手もおずおずと、「すみませぬ」と二度ほど辞儀して、女房は「今頃の帰りとは、遊ぶのはいいが、母親を心配させるようでは男振りが悪いではないか。仲町の仕事が済むと、根岸の茶席へ廻されているではないか。うちのも遊ぶは好きだが、仕事をおそろかにするのは大の嫌い。今もしそなたの顔を見

          #1471 これも順々競争の世のさまなり

          #1470 二三杯かっこんで、すぐと仕事に走りやれ走りやれ!

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 今日から「其二」に入りますよ!それでは早速読んでいきましょう! ということで、この続きは…… また明日、近代でお会いしましょう!

          #1470 二三杯かっこんで、すぐと仕事に走りやれ走りやれ!

          #1469 姉御!兄貴は?なに感応寺へ?

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 縁側で長火鉢にむかって話し相手もなくただひとり、三十前後の女性が座っています。鼻筋つんとして目尻キリリとあがり、洗い髪をぐるぐる丸めて色気なしのさま。しかし渋気の抜けた顔は、年増嫌いでも褒めずにはおかれない風体。台所では下婢が器を洗う音ばかりして家の中は静か。女は長五徳を磨き、銅壺の蓋まで綺麗にして、煙草箱を煙管で引き寄せ、一服吸って煙を吐いて、思わず知らず溜息も吐きます。うちの人が手に入れるであろうが、去年使

          #1469 姉御!兄貴は?なに感応寺へ?

          #1468 煙を吐いて、溜息ついて、旦那の帰りを待つ女房

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 縁側で長火鉢にむかって話し相手もなくただひとり、三十前後の女性が座っています。鼻筋つんとして目尻キリリとあがり、洗い髪をぐるぐる丸めて色気なしのさま。しかし渋気の抜けた顔は、年増嫌いでも褒めずにはおかれない風体。 「黒文字」はクスノキ科の落葉低木のことで、アロマオイルに用いる精油がとれ、葉はお茶に使われ、枝は爪楊枝に使われます。なので、ここの黒文字とは、爪楊枝のことです。 「石尊様」は、神奈川県伊勢原市にあ

          #1468 煙を吐いて、溜息ついて、旦那の帰りを待つ女房

          #1467 いよいよ『五重塔』を読んでいくぞぉ!

          1890(明治)年、「読売新聞」の文学主任であった坪内逍遥は、尾崎紅葉と幸田露伴に小説の同時連載を依頼します。これに応えるかたちで、尾崎紅葉は『伽羅枕』を、幸田露伴は『ひげ男』を連載します。いよいよ小説は「紅露時代」へと突入するわけですが、ところが露伴は、逍遥に長文の書簡を送って、途中で連載を中断します。 そして露伴は1891(明治24)年11月から1892(明治25)年3月にかけて、新聞「国会」にて『五重塔』を連載します。今日からこの『五重塔』を読んでいきたいと思います!

          #1467 いよいよ『五重塔』を読んでいくぞぉ!

          #1466 ちょっとだけ靴の話

          幸田露伴の『風流佛』にはこんな文章があります。 西洋の靴に接した日本人にとって、最大の悩みと違和感は「かかと」の部分でした。草履・雪駄・下駄いずれも日本の履物の特徴は、「解放されたままのかかと」でしたが、これが「塞がれ固定される」時代に突入するわけです。 岩倉使節団の一員である佐佐木高行(1830-1910)の日記には、 と記されています。 1883(明治16)年に教科書『小学入門』を著した伊藤竹次郎(生没年不詳)は、1885(明治18)年に座敷で使えるジョーク集『座

          #1466 ちょっとだけ靴の話