それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。
腕は源太親方、立派なものじゃと褒められるが、鷹揚の気質ゆえに仕事も取りはぐりがちで、いい事はいつもひとに奪われ嬉しからぬ生活を送る味気無さ。膝頭を縫った股引ばかり夫に穿かせること、他人の見る眼も恥ずかしいけれど、なにもかも貧がため。ああ、考えこめば裁縫もイヤになってくる。腕の半分も夫の気心が働いてくれたならこうも貧乏はしまいに。ところが今度はまたどうしたことか感応寺に五重塔が建つと聞くや否や、急にむらむらとその仕事を是非する気になって、ちと偉すぎる私でさえ思うものを、ひとはなんと噂するであろう。
というところで、「その三」が終了します。
さっそく「その四」を読んでいきたいと思うのですが……
それはまた明日、近代でお会いしましょう!