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高齢化が進む東北地方を俯瞰してみた

現在、私は、宮城県仙台市を拠点に、東北6県(青森、秋田、岩手、宮城、山形、福島)の企業様に向けた組織コンサルティング(組織の生産性向上、更なる成長のお手伝い)を行っています。
この仕事をするにあたり、まずは東北地方の人口、県民所得、事業所数、従業員数について俯瞰した上で、東北地方のビジネスにおいて組織化の重要性をあらためて考えていきます。

人口から見た東北地方

東北6県の総面積は66,948㎢、日本の国土に占める割合は17.7%。
一方、人口は867万人、日本の人口に占める割合は6.9%(2019年)。

2020年4月14日日経新聞記事「東北6県、人口8.4万人減 19年人口推計」

人口は、1995年をピークに減少しており、2040年には673万人と2019年比で22.3%減り、全国比6.1%まで減少すると推計されています。

年齢 3 区分人口の 2019 年から 2040 年までの変化をみると、生産年齢人口(15 ~ 64 歳)は 161 万人減少、年少人口(0 ~ 14 歳)は 34 万人減少となる一方で、老年人口(65 歳~)は 2 万人増加と推計されています。
人口減少、高齢化が全国に先駆けて進んでいく地域と言えるでしょう。

ちなみに、
東京都の人口:1404万人(2021年8月時点)
神奈川県の人口:923万人(2021年11月時点)
埼玉県の人口:734万人(2021年11月時点9
大阪府の人口:882万人(2019年7月時点)
愛知県の人口:751万人(2021年12月時点)
福岡県の人口:512万人(2021年11月時点)

人口で見れば、東北6県は大阪府と同等規模。
宮城県230万人についても、福岡県の半分の規模と言えます。

人口動態から見た東北地方

2019 年の東北地域の出生者数は 51.7 千人で前年比 4.4 千人の減少、死亡者数は 118.0 千人で前年比 2.6千人の増加となり、自然減は前年の 59.2 千人から 66.2 千人に拡大しました。

2019 年の東北域外からの転入者は 75.6 千人で前年比 1.0 千人の減少、東北域外への転出は 105.4 千人で前年比 0.7 千人の減少となり、社会減(転入-転出)は前年の 29.4 千人から 29.8 千人に拡大しました。

東北各県からの転出者 153.3 千人を転出先別にみると、東北域内は 47.9 千人、東北域外は 105.4 千人となり、東北域外への転出が約 7 割を占めています。東北域内の転出では、宮城県への転出が多くなっています。

令和2年版 東北経済のポイント p.10より

数字を見ると、東北5県から宮城県に転入し、それ以上の人が宮城県から東京圏を中心に転出していく構造が見て取れます。

県民所得から見た東北地方

東北6県の平均県民所得は、282.9万円(平成 29 年度県民経済計算)
各県は以下の通りとなっています。

 青森県:250.9万円
 岩手県:277.6万円
 宮城県:293.6万円
 秋田県:270.3万円
 山形県:287.5万円
 福島県:294.6万円

参考までに
 全国平均:328.9万円
 東京都 :538.4万円
 愛知県 :369.5万円
 大阪府 :317.3万円
 福岡県 :287.8万円
全国に対する所得水準は 89.4となっています。

所得については、全国水準を下回っていますが、大きく下回っているとは言えない状態です。
また、東北6県の中で、突出して高い水準の県がないことも見て取れます。

事業所数/従業員数から見た東北地方

東北6県の事業所数は、414,657社
東北6県の従業員数は、3,726千人
※(平成 28 年経済センサス活動調査、2016年6月現在)

各県は以下の通りとなっています。(事業所数/従業員数)
 青森県: 59,069 / 498千人
 岩手県: 59,451 / 525千人
 宮城県:102,026 / 1,006千人 
 秋田県: 49,432 / 413千人 
 山形県: 56,551 / 475千人
 福島県: 88,128 / 806千人

参考までに 
 東京都:685,615 / 8,655千人
 愛知県:322,820 / 3,749千人
 大阪府:422,568 / 4,393千人
 福岡県:223,008 / 2,236千人

この数字を見ても、人口同様、東北6県は大阪府と同等規模かそれ以下。
宮城県についても、福岡県の半分以下の規模と言えます。

ビジネスから見た人口・所得・事業所/従業員数

東北地方を見ると、全日本の17.7%の面積を占める広大なエリアに、人も事業所も散在しており、お金持ちが固まっているエリアも見当たらない。
かつ、今後の人口減少、首都圏への転出を踏まえると、東北地方以外の地域の企業が東北地方を攻める旨味に乏しいと言えます。

逆に言えば、競合の少ない東北地方で一から力を蓄え、東北地方外へ攻めるには好立地であると言えるでしょう。

また、業態から見た成長可能性についていくつかパターンを見てみます。

東北地方での飲食店ビジネス

飲食店等、ドミナントで多店舗展開するビジネスの場合、人口が比較的集積しているエリアを繋げながら展開する必要があるため、関東圏、関西圏での多店舗展開に比べて単一業態での店舗展開数の限界が早めに来る可能性があります。
そのため組織として成長を考える際、商圏を見極めた上で、単一業態での展開よりも関連がある複数業態をドミナントで展開することが望ましいと考えます。
組織で言えば、複数業態・複数店を定量的に管理する仕組みの構築と、店長管理人材の育成が要諦となります。

東北地方での建設・建築ビジネス

将来的に見て、労働人口が減少するスピードと仕事が減少するスピード、どちらが速いか比べた場合、労働人口の減少スピードが上回り、人不足が更に顕著になることが想定されます。
そのため組織として成長を考える際、新卒採用と育成の仕組が社内に構築できるかがポイントとなります。
特に、施工管理人材だけでなく、現場の施工人材(職人)についても、自社で採用、育成し、内製化する動きを取ることが今後の事業継続のためには不可欠となるでしょう。
組織で言えば、採用担当者とその責任の明確化、育成担当者とその責任の明確化が要諦となります。

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東北地方でのIT関連ビジネス

若手人材の流れ(人口動態)を見ると、東北地方でIT関連ビジネスを実施する場合、本社もしくは支店を仙台市内に設けることが望まれます。
リモートワークでの働き方も踏まえて、採用エリアを東北全域とした上で、人材を確保し、仕事については東北地方の外も視野に入れた営業活動が避けられません。
組織として成長を考える際「なぜ東北地方でこのビジネスをやるのか」、会社の目的を明確にすることがポイントとなります。
目的が明確でない場合、組織の成長と個人の成長を考えると、優秀な人材を繋ぎとめることが困難となります。

高齢化が進む東北地方でのビジネスには組織化が不可欠

東北地方でのビジネスについて、関東圏、関西圏と比べて、他所から進出する旨味が乏しいため、競争環境は比較的緩やかだと想定されます。

しかしながら、今後の労働人口の減少が明らかなことから、この環境に順応した対応が必要不可欠です。

この環境に順応した対応とは、若手人材を採用し、育成する仕組みを作れるかどうかです。

そのためには、
・なぜ東北地方で会社を運営しているのか(企業理念)
・東北地方で事業を成長させることが出来る理由(成長戦略)
・事業成長の中で個人が成長できる理由(育成の仕組化)
・若手採用のための仕組み作り(担当者設置と具体的な通年施策の運用)
を明確にした上で、人材を惹きつけていく中長期的な施策が必要です。

これまでのように社長が個の力で営業を行い、社長の周りに集まった属人的な仲間が仕事をこなしていくことで会社が伸びていく時代は、社長と従業員の高齢化とともに終わりを迎えつつあります。

組織的に若い人材を採用し、組織的に育成し、会社と個人を成長させていく絵を社長が描けるかどうか。

これが今後の東北地方のビジネスにおいて必要不可欠な要素となるのではないでしょうか。

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