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映画ラブ

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素人の映画感想文的な何かです。
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2022年11月の記事一覧

映画『蜘蛛の巣を払う女』

映画『蜘蛛の巣を払う女』

 幼少の頃の家庭環境が人に与える影響が大きいことは誰しも分かっている。特に虐待は成長を阻害するどころか、人間としての人格や尊厳を奪い、将来に渡ってまともな社会生活をする権利までをも奪う可能性がある。
 運良く虐待から逃げることが出来て、実の親ではなくとも愛情を持って育てられたとすれば普通の社会に溶け込むことが出来る程にまではなるかも知れないが、過去の記憶はスマホのデータを消去するように簡単には消し

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ストーリーを追うか、流れに身を任せるか

ストーリーを追うか、流れに身を任せるか

 映画の見方に正解は無い。
 人それぞれで良い。
 鑑賞というのはそういうものだ。

 私の場合、ストーリーを追い掛けるというよりも、シーンやストーリーの中に没入して流れに身を任せる。その過程で沸き起こる感情に浸る。そういう見方をするタイプだと思っている。

 言い換えれば、ストーリーの行間から湧き上がってくる何かをそっと掬い上げるようにして集め、それを材料にしてそこでの自分の感情という人形を造る

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映画『SHAME』

映画『SHAME』

 雨の埠頭で立ち尽くし泣き崩れる主人公。その背景には過日の情事を思い出させるホテルがそびえている。高層階のあの窓から見下される場所で背中を見せて、行き場を失い見上げることも叶わなくなった主人公の進もうとする先にはただ漆黒の海が広がるだけだ。

 パパとしての家庭を持つ上司。その上司や同僚からの信頼も厚い主人公は、女性で言えばすれ違いざまに声をかけられるような美男。仕事場のあるマンハッタンから地下鉄

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映画『15時17分、パリ行き』

映画『15時17分、パリ行き』

 どんな人でも社会のために役立つ時が来る。
 どうやってその時がやって来るのか、それは誰にも分からない。
 恐らく多くの人は一生分からないままに生きるのだろう。
 そうだとしても、生きていることで誰かの何かの役に立っている。

 社会が細分化され、分断されて、生きづらさを感じることに遭遇することも多いだろう。世界がグローバル化する中で、自分の行いが影響する範囲を見渡すことはより一層難しくなった。

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