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詩創作

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掴めない世界
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2023年6月の記事一覧

木漏れ日を躱し裾は振れる

木漏れ日を躱し裾は振れる

何かにつけて言葉にしたがっていた。

思い出す。

「言わぬが花」といえども私は、
その花すらどんな花であったのかを言葉にしたがっていた。

花も、言の葉も同じ水を飲んで育ってるんだからいいと思う、と私はあなたに話した。

するとあなたは、

微笑みながら共感した様子で、
土を一度ほぐしてあげるといいわよ、
と教えてくれた。

それはまるで雨水のごとき私の言葉をぜんぶ吸ってくれるあなたが、
あな

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轆轤で奏でるミュージック

轆轤で奏でるミュージック

あなたの指はカートリッジだった。

体温が伝わった柔らかな土がまわり始める。

潤いを与えながら、
あなたの手が回り始めたターンテーブルへ落ちる。

なり始めた音楽は自在な音に聞こえた。
どんな音にもなれるような音が聞こえた。

何かを、誰かを想う手がそれを鳴らしていた。

すぼめたり、広げたり、膨らませたり、
波を打たせたり、リズムをつけたり、ひねったり。

器のかたち、模様が決まる。

抱きし

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僕の声を教えてください。

僕の声を教えてください。

僕は歩く。
ずっと歩く。走ることもない。

足を止めることもない。
同じ歩幅で、同じリズムで。

曲がることも知らない。
一言も発することをせず、
ただ、何もない道に足跡がつく。

この足跡は雨が降ったらどうなる。
いままで僕が歩いてきた道は雨に染まる。

やっと自由だ。

やっとの想い、雨の中で叫ぶ。
雨が降ったら、歌う。歌う。歌う。

歌う目的はひとつだけでいい。
歌う。歌う。

さて、僕の声

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時にかわる人

時にかわる人

寒い日と暑い日と、
代わる代わる。変わる変わる。

おとなしくすわっていようと、
木陰のベンチに想いを馳せる。

ありもしないよ木陰なんて、
あったのは閑寂さだった。

人々の服の摺れる音に耳を澄ませて目を閉じる。

動いている人がいる。

意志を持った人々は、
まじわった川。わかれた川。

長る流る。
しまいには海。

頭の痛み忘れるほど、
きれいな雨が降っていた。

せき止められない、扉こじ開

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視界

視界

今日僕の目には空がある。

優しい色をしていたから、
目に映る角ばったものは全部とっぱらってしまいたかった。

そういえば、この視界は丸いのか。

丸いと分かるのは視界の中に円形を捉えるからで、
この視界が丸いのかどうかはどうやったら分かるのか。

僕は、薄く目を細めてみる。

すると瞼が降りてくるのがわかった。

今僕が見ている(正確には、見えていない場が見えている場との境界線となって映している

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声には。

声には。

あなたは声を出す時、慎重だ。

まるであなたが聞き手側であるかのごとく、
耳を澄まして声を出しているのがわかる。

声の奥行きは、声の平たさは、息の音は、
声に意図する“必死さ”が表せているか。

音の幅が狭くないか。

心地よい音高か。

あなたは自分の声を聞きすぎた。

骨伝導な音よりも、
空気を振動させて伝う音にこだわった。

それはあなた自身が聞くことができない分、
もどかしさみたいなもの

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