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明日晴れたら (1/10)

父親が星を見る仕事をしていた影響で
私は幼い頃から宇宙に憧れを抱いていた

父は毎晩寝る前に私の枕元で
想像すら出来ないような宇宙の話を沢山してくれて
まだ解明されない謎を想像しては追いかけていた

そんな最愛の父が未知の病気に侵されて
この世から旅立ったのは私が中学に入った頃

運命は私よりも母の方を父に選んだ
私が生まれると同時に亡くなった
顔も知らない母の方を

都会から田舎の祖父母の元へと引き取られた私は
その環境の変化に馴染むことが出来ずに
いつも一人で行動をしては空を見て
親友と呼べるほどの友達も作らずに
ぽっかりと開いた心の穴は埋まる事の無いままで

それでも祖父母には心配はかけないようにと
常に明るく振舞ってはそれなりの普通の子を演じる

そんな私の性格を見透かしていたんだろう
いや、心配でたまらなかったんだろう
父は亡くなる数日前に、ある物を私にくれた

仕事場のデスクの引き出しにある箱を
持って来るようにと頼まれて
目の前でそれを私に開けさせた

大人になった今でも大事に保管しているそれを
たまに開けては胸に当てて星を見上げる
父は別れ際にひとつの希望を私に託した

どうしても孤独に耐えられなくなった時
寂しさに押し潰れそうになった時
この世界が安っぽく薄っぺらく感じた時
謎だらけのこの世界の答えが知りたくなった時に

たった一度だけ使える宇宙へのチケット

それは片道切符で
出発をすれば地球に戻る事はもう出来ない

「お父さんも行きたかったな」
箱を開けた時にそう言われたっけ

本物か偽物かもわからない
いや普通なら信じないだろう

でもそれを手にした時から私の心は決まっていた
いつか、遠く宇宙の果てまで行くのだと
それが私に定められた運命なのだと思った

高校を卒業してすぐ
上京して就職をして、三年ほどが過ぎた今
私は仕事と今の生活に一区切りをつけることにした

ふと、今しかないと思った
このまま平凡な時間の波に乗り、社会に流されて
後戻り出来なくなるのが怖かった

だから決めたんだ
少し色褪せた、でもあの頃のままの箱を開け
チケットを手に取りひとつ呟いた

「明日晴れたら、宇宙に行こう」


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