明日晴れたら (3/10)
もともと物が少ない部屋だから
荷物をまとめるのは簡単だった
でも何が必要で何が必要じゃないのかがわからない
宇宙向けの旅行案内でもあれば参考に出来るのに
なんて思いながらスーツケースに詰め込むと
意外と持っていく物は少なくガラガラで
少し大きめのリュックへと入れ替えた
傘は必要だろうか？宇宙でも雨は降るのだろうか？
名も無い星で振る雨は水だとは限らない
差した傘もすぐに溶けてしまうかもしれない
でもあるに越したことは無いと
お気に入りの折りたたみ傘を隅っこに忍ばせた
部屋は今月で引き払う事になっている
特に誰にも告げる事も無く
そっと消えるように私はこの星から旅立つんだ
浅く狭く生きて来たおかげで
私一人いなくなった所で誰も騒ぎやしないだろう
行方不明者なんて年間に何万人もいるんだ
もしかしたらその中には私と同じように
宇宙に行った人も含まれているのかもしれない
改めてチケットを確認した
紙では無いプラスティックのような
アルミホイルのような変な素材で出来ていて
端っこに切り取り線が付けられていた
パキッと折れるようになっていた
裏面には記号のような見知らぬ文字が細かく並び
でも私には何故かそれを読むことが出来た
そこにはこのチケットの使い方が
宇宙への行き方が書かれていた
「雲の無い晴れた日に、広く高い場所で
空に向けてこの端を折ったなら
その音に共鳴をして、お迎えに参ります」
天気予報はずっと、曇りか雨マークが並んでいた
次の晴れの日に、私は旅立とうと決めた
その日までに宇宙への準備を
この星でやり残した事を片付けよう
心の中を全て整理して
綺麗さっぱりしてから出発しよう
カフェで書いたりもするのでコーヒー代とかネタ探しのお散歩費用にさせていただきますね。