真夜中のASMR-5

真夜中のASMR｜へびのあしあと｜note

こんばんは、お久しぶりです
元気にしていましたか？

何だかバタバタと頭の中の記憶が混沌としていて
整理するのに時間がかかっていたんです

今夜はぐっすりと眠っているみたいですね
口を大きく開けていびきまでかいて
心の荷が下りたような顔をしていますね

私がこの部屋に来た事がある理由も
なぜあなたと繋がったのかも
私の服や私物がここにあるのも
全部思い出して納得をして

だから今日は、お礼を言いに来たんです

私はてっきり、もしかしたら
あなたが犯人なんじゃないかって疑っていて
危うく呪いかけたんですよ

全くもう、紛らわしいことするから

あの時、山の中で私を見つけた時
すぐにシートをかけたのは
雨で濡れてしまうからだったんですね
変わり果てた酷い姿に耐えられなくて
見たくないと思ったのかもしれません

生気の無い、真っ白な、人形みたいな
知っている人がそんな姿になっていたら
現実から目を背けてしまうのも仕方ないですよね

あなたはその場で崩れ堕ちて
言葉も発せられずに打ちひしがれて

でも寂しくならないようにと
他の人が来るまで一緒に傍で待っていてくれました

だから、ありがとうって言いたかったの

やっと気づいたんです、思い出したの
私はあなたの妹で、あなたは兄で、家族だって
何で思い出せなかったんだろう

週末とか学校を休んだ日とか親と喧嘩した時とか
ここによく無理やり押しかけたよね
嫌々ながらも泊まらせてくれたよね

歳が離れていたのもあって
私の事を一番に思ってくれていて
そりゃ喧嘩もよくしたけれど
いつもお菓子は大きい方を譲ってくれたし

いや、いつもじゃないか、たまに、でもない、ん？
あれ？譲ってくれた事あったっけ？
まさか、泊まるのも本気で嫌がってたとか？

…まぁ、それも良い想い出です

こんな形でお別れするとは思わなかったけど
私はあなたの妹で幸せだったよ

クリスマスにくれたペンダントあったでしょ
奮発したと言ってたけど
300均で同じの見つけて引きちぎりたくなって
でももらったのが嬉しくて毎日つけてたんだからね

あの時の衝突音は車とぶつかってたんだね
一瞬だったから痛くなかったのが救いかな

犯人も無事に捕まったみたいだし
こんちくしょー！と思ってくれてるかもだけど
でもね、その相手を呪うのはやめる事にしました

だって自分に返って来そうでしょ？
人を呪わば穴だらけ、違うな
穴がいくつか、二つか三つか

私に返ってこなくても家族に返って来たりして
そしたら逆に呪われてまた呪い返して
呪い合戦が始まっちゃうもの

いろいろとわかってすっきりしたら
天井にね、上の方に明るい光が広がったんだ
きっとあそこに行けと言う意味なんだと思うの

あれ…？幽霊も涙って出るんだね
おしっこは出ないのにね
全く不思議な世界だよこっちは

だからもう、これからは
邪魔はしないからゆっくり眠ってね
そして私の分まで生きてください
やり残した事を代わりにしてください

アニメの続きが気になるけど
せっかくコンサートのチケットも当たったのに
食べたい限定スイーツもあったのにな

あと、もうひとつ思い出した事があって
書きかけのメールがあったなって

「これからそっちに行くから泊めてね」
って言うやつ

さっき送信しておいたけど届いたかな？

死人からのメールだよ、びっくりだよね
話しのネタにでもなればいいなって

だからまた、お盆にでも帰って来たら
ここに寄るからその時は泊めてよね
断られても居座るからね
ナスかキュウリに乗って現れるからさ

あれ？聞こえてるのかな？起きてるのかな？
涙が流れてるよ？
泣いてる所初めて見たかも

そんなに泣き虫だったっけ？
それとも
私の前ではいつも強がってくれていたのかな？

あ、そうだ
一度言って見たかったセリフがあったんだ
今にぴったりだから言うね

ふふ

「泣いたって生き返ってあげないんだからねっ！」

妹らしくツンデレってみたよ
最初で最後のツンデレだよ
言われたかったんでしょ？ほれほれ

あ、そろそろ行かないといけないみたい
あっちの世界にもせっかちな人がいるっぽいね

だから私はこの辺で
また会いたいけど、会うのは当分先だからね
すぐに来ても追い返しちゃうから

さよならなんて言わないよ
だって私は幽霊だから

せっかくだしこの言葉で消えようと思うんだ

ドロン！