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研究

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潜水法、ダイビングの利活用に関して、これまで携わってきました研究活動の振り返りと今後の展望を綴ります。
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高水温の影響

高水温の影響

 昨年に増して今年は水温の上昇と最高到達点が早く、かつ高いように感じております
昨日(8/14)の時点で、水深23m付近の水温が28度に達し、安全停止エリアの水温は29度を超えました
過去にこの高い水温が記録されていない訳ではありませんが、この状態は継続することによって、明らかに亜熱帯からの生物が優位になり易い状況を作り出しています
 表紙の画像は、先端部に欠損がみられ、徐々に弱っている状態のトゲ

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ベトナム備忘録

ベトナム備忘録

 3月に2週間ほど、ベトナムに調査研究で行ってきました
1年と4ヶ月ぶりの現地でしたが、以前行った時と季節が違っていたので、空気感の違いや改めてベトナムってこんなところ的な体験ができました

2回とも私的な旅行ではなく、ベトナムにおけるチャウタン船の海事考古学研究のお手伝いで行っております
前回は、台風の影響で全工程の内、3日しか潜水調査をすることができませんでした
台風以外にも悪しき慣習による妨

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初潜り

初潜り

 もぉ少し、華やかな画像をとも思いましたが、私が常日頃からフィールドワークをしている三保真崎は、稀少生物の宝庫なので、もちろん季節来遊魚や無効分散種も取り扱いますが、基本路線は他のダイビングポイントでは、あまり出てこない生物が中心となります(ちなみに、スベスベオトヒメエビとシュンカンハゼです)。
 ご挨拶が後回しになってしまいました。
 明けまして、おめでとうございます。

 例年ですと12月にな

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沈める効果に関する考察

沈める効果に関する考察

 3年ほど前から海にお酒を沈めて、変化を観察する研究に着手しました。昨年、第一段階の結果が出て、官能評価試験及び定性試験を行い、味や香りの変化に関する考察をまとめました。既に研究助成をいただいた企業様にはご報告申し上げておりますが、この成果をどのように還元してゆくか、あるいは研究としてどのように展開するかを模索しております。一連の研究に対する評価や反応は良好で、お酒にとどまらず、その他の飲料や食品

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高画質の動画撮影 奮闘記

高画質の動画撮影 奮闘記

 昨年、意を決して動画の撮影できる機材を一新して、全て4K以上の高解像度の撮影ができるようにしました。α6400、TG-6、GoPro10、(全て水中用のハウジングも)と買い揃え、その前にはEOSkissM、EOS90Dも購入していたました。しかしながら、4Kのクオリティで紹介する機会がないので、撮影した動画はダウンコンバートして編集して公開するという、何か目的と違う遠回りをしているようなフラスト

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新たな領域の開拓

新たな領域の開拓

 久しぶりに飛行機に乗って調査してきました。計画当初は、現地の制限が解除予定である翌日からに設定しておりましたが、出発の時点では躊躇するような状況になっていたため、受診した上で出かけました。
 その島には30年ほど前に行って以来でしたので、懐かしいというよりも何も覚えていませんでした。しかも、調査海域は島の人でもあまり足を運ばないような場所(だと思います)なので、この島の北部と南部しか潜った経験の

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東日本大震災の備忘録

東日本大震災の備忘録

 今日は、件の震災から10年経った日なので、多くの震災関連の情報が上がっています。節目とか風化しないというよりも、自分自身の記録として残しておきたいと考えます。
 私は、その日その瞬間、三保の海の中に潜っていました。丁度、サビハゼの卵がハッチアウトするタイミングだったのでその記録をするために潜っていました。サビハゼの親が激しく動き回り、そろそろ孵化のタイミングだなぁ〜と思っていたその瞬間、普段のダ

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研究の一端

研究の一端

現在、大まかに分けると2つの研究課題に沿って「潜水法」の研究を進めています。今回は、1つ目の研究に関するこれまでの経緯と今後の展望に関する内容になります。

私が在籍する東海大学海洋学部には、日本のみならず海外からも注目される海事考古学のホープがおります。彼との出会いが、これまでの混迷していた私の研究の方向を示してくれました。それまでは、潜水手法を用いて撮影した画像や動画の利用法として主に初等教育

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研究の一端 海事考古学2

研究の一端 海事考古学2

 次は千葉県の御宿での海事考古学調査の事例を振り返ります。振り返ると言ってもこの調査は継続中なので、調査をやっても良さそうな世の中の雰囲気を感じながら再開したいと考えております。それでは、この調査の概要をお話ししましょう。

 文末にこの研究の論文を添付しますので、詳細はそちらをご覧頂きたいと思いますが、この研究は今から約400年前に御宿沖で沈んだガレオン船サン・フランシスコ号の遺物を捜す調査を主

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千葉の調査のつづき

千葉の調査のつづき

 そのエリアから更に沖に外れた場所に「隠れ根」がありました。海岸から6kmほど沖合で、本船航路上に位置しています。つまり数千から数万トンクラスの船が航行する真っただ中な訳です。しかも外洋の潮流というよりも海流が当たる場所なので、考えられないような潮の流れ方をします。潜水の経験がある程度あって、仕事で潜ったことのある職業潜水士であれば、絶対に潜らない選択しかしないような場所です。私も、初めてその現場

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真潮根は魔性の根

真潮根は魔性の根

 結果的に初回の調査を除いて、その後はこの隠れ根にトライし続けました。あまりウェイティングが長くなると全く潜らないのも何なので、浅い所へ移動して調査をするのですが、そんな時は大体同じような感じで浅場も潮流が尋常じゃないほど早くて、調査が進みません。また海が時化て船が出せないときは、海岸線で金属探知機を使った調査や文献資料を探しに大多喜城に行ったり、関連する場所を訪れたりしていました。チームリーダー

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日本で初めてが2つある潜水調査

日本で初めてが2つある潜水調査

 2018年9月に和歌山県の友ヶ島で海事考古学調査を行いました。この調査には2つの日本初がありました。1つは、この場所における潜水調査は初めてであること、2つ目は日本の海事考古学史上初となるTrimixガスを用いた潜水となったことです。両方とも、どちらかと言えば「ふぅ〜ん、そうなんだぁ」レベルの日本初ですが、これまで誰もトライしなかったのはそれなりに理由があるからなのです。地元の漁業者やダイバーに

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研究のきせき2

研究のきせき2

 前回、何故あのような前置きをしたかと言うと、私が携わっている潜水に関する研究は、独りで行うことが可能なものもありますが、大半の場合は共同研究者がいて、複数人で違うアプローチの研究をしている場合が多いのです。外部に調査や作業に行く場合は、必ず現地に協力者やダイビングサービスがなければ潜ることが出来ません。また、現地までの交通費や宿泊代、ボンベ代、ガス代、用船費用など少なくない経費が掛かりますので、

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研究のきせき

研究のきせき

 スクーバダイビングをやっていたことから潜水を用いた、あるいは潜水を必要とする研究に携わることが、これまでもこれからもあります。研究を通じて取得した情報や画像は、写真や映像のコンペのように過去に出品の記録があると採用されない場合があるので、その研究が段階(学会における発表や論文、報告などの過程)を経るまでは門外不出の守秘になることがあります。そのような意味において、公開し難い画像を沢山所持しており

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