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挿絵付き小説サードアイ

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#サードアイ覚醒

サードアイ ep 11 初任務

サードアイ ep 11 初任務

 体調が戻ってからというもの、俺は毎日のようにヒノエによる訓練という名の調教に駆り出されることとなった。
 基礎体力をつけるために、午前中はハードなトレーニングメニューをこなす。ヒノエは筋肉の使い方が上手いのか、あんなに細いのに結構な重量を軽々と持ち上げる。戦闘能力も並大抵のもんじゃなく、相手の動きの何手も先を読んでいる上に、モーションが矢のように早い。そのうえ、打撃が半端なく強いのだ。俺は何度も

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サードアイ ep 15 王位奪還計画

サードアイ ep 15 王位奪還計画

 体調が戻ってくると、多くの人々が入れ替わり立ち替わり見舞いにやってきた。彼らの話から様々な真実がわかってきた。
 ここが本当に四次元の世界であって、長年にわたって人類の次元上昇の準備をしているということ。三次元の人々の魂のレベルを上げて、高次の意識改革をする大規模な計画があること。各国トップの平和への意思決定を促すために、この星の特殊部隊が暗躍していること、などである。
 そして、私は次元上昇後

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サードアイ ep17 去り行く理由

サードアイ ep17 去り行く理由

 ゴードン王子とその母との別れを見守って、急いでヒノエを連れて帰還した。ヒノエは集中治療室に入ったままのようだ。翌日、俺はブルーノの所に行った。
「これはこれはオウエン殿、遠征お疲れ様でやんした」
「ヒノエは無事か?」
「意識は戻りやした。まぁ、彼女は自家発電機みたいなもんだから、じきに良くなるでやんすよ」
「魂が消えかかってたぞ。普段はあんなことないのに、今回はどうしちまったんだ」
「エネルギー

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サードアイ ep 18 北海の太陽

サードアイ ep 18 北海の太陽

 ブルーノに案内されて向かった先はラボの最上階に位置する司令塔で、壁一面に画面があって、各部屋の様子が映し出されているモニタールームだった。紹介されたのは、ラボの上級役員で、ショートカットのキリッとした年配の女性だった。ヒノエのような燃える赤い目をしている。
 ブルーノは彼女を見ると、子犬のように近づいていき、
「マミー!元気でっか?」と、嬉しそうに話しかけた。
「ブルーノちゃん、久しぶりね。なか

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サードアイ ep19  他者への祈り

サードアイ ep19 他者への祈り

 王位奪還計画が無事成功して、四次元世界は大きな転換期を迎えていた。異次元上昇計画の最終ステージといったところだ。
 軍内部の大幅な組織変更とそれに伴う人事異動があり、俺はファイアーレッドアイの特殊能力と今回の活躍が認められて、軍の中枢部に配属されることとなった。
 ヒノエが回復して初めての軍法会議が行われた。彼女は変わらずに眩しさを放ちながら、きびきびと指令を出していく。頭の中にはすでに異次元上

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サードアイ ep16 絆という名の束縛

サードアイ ep16 絆という名の束縛

 ヒノエとの訓練は日に日に過酷さを増していった。俺ができるだけ多く三次元に移動できるようにと、とにかく基礎体力作りに余念がなかった。男の俺でも音を上げるほどのトレーニングにヒノエは毎回付き合ってくれた。あいつは化け物かもしれないと本気で思う。
 俺の場合、特殊任務の帰還に関しては、魂ひとつで空を飛んで帰れば済む話なのだが、行きは肉体と魂の分離をする例のマシーンを使わざるをえず、あれが非常に厄介だっ

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サードアイ ep 13 予知夢

サードアイ ep 13 予知夢

 わたくしは生まれもって我欲が少ないほうだと思う。愛し愛されるという安住の生活に普通に憧れもしたけれど、一人の時間に慣れ親しむにつれ、それはそれ、これはこれという、割り切りにも似た諦めに、安らぎさえ覚えるようで。
 例えばそれは、幸福感ということを考えるとき、自分と他人との境目がぼんやりとしていて、時折、自分が利することよりも、他人が喜ぶことのほうに幸せを感じられもして、うっかりすると、そのささや

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サードアイ ep 6 特殊任務

サードアイ ep 6 特殊任務

 人々が平和で安寧に暮らせる世界を私は心から望んでいる。春のうららかな太陽が寒さに凍える命を温めるように、人々の不安を溶かして活力を与えたい。そして、全ての人が夢に向かって輝いていけるのなら、火花を散らして突然落ちる線香花火がごとく、我が命を燃やし尽くしても構わないとも本気で思っている。
 しかし、多くの人は夢を語るどころか、うだうだと文句をいい、できない理由を並べ立て、あげくに邪念に惑ったりする

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サードアイ ep 5 額の封印

サードアイ ep 5 額の封印

 俺は元いたベッドの上に座らされ、五人に取り囲まれた。見回すと全員、風変わりなやつらばかりだった。三つ子なのか、全く同じ顔をしたモデルみたいな背の高い女たちが、同じポーズでにらみをきかせている。ちょっとでも下手な動きをしようものなら一瞬で封じられそうなオーラに、さすがにこっちも気圧される。
 その後ろには、ひらひらとした服でなよなよとしたやつが、女どもの影にかくれるようにして様子を見ていやがる。繊

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サードアイ ep4 額の手術

サードアイ ep4 額の手術

 気が付くと俺は硬いベッドの上だった。ウィーンという微かな機械音がする。ここはどこだ。起き上がろうとするも、身体が思うように動かない。向こうから話し声が聞こえる。二、三人くらいか。しばらく様子をみることにした。
「よくもまあ、こんな大物を一人で引き揚げてきやんしたね。ステファンにしては上出来、でさぁ」
「だって、レッドアイの持ち主だよ。野放しにしておくわけにはいかないよ」
「正確 には ファイヤー

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サードアイ ep2 額の引力

サードアイ ep2 額の引力

 ある日の休日。ボクはいつものように左足から靴を履き、玄関を右足から出て公園まで歩いていく。ここからはマイルールを発動させない。外界ではいろいろと邪魔が入ってしまい、思うように動けなくなるからだ。案の定、自転車が猛スピードで向かってきて、道の端に避けることとなった。やれやれ、今日が雨でなくてよかった。さてと、気を取り直して、右足から行くとするか。お次は左でと。
 どすっと、何か堅いものにぶつかった

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サードアイ ep1 額に傷

サードアイ ep1 額に傷

 俺の額はいびつだ。眉毛から上に向かって丘のように盛り上がっている。何かでぶつけたとか、変な病気だとかではなく、生まれながらにいびつな形だったそうだ。赤ん坊の俺の頭はそりゃあ重かったんだと母ちゃんが言っていた。だからなのか、子供のころにあまり抱きあげられた記憶がない。
 学校ではクラスの奴らにデコ、デコといじられてきた。ある日、頭にきて頭突きを喰らわせてやったらイチコロで、やつら、泣いて謝っていた

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