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サードアイ ep 18 北海の太陽
ブルーノに案内されて向かった先はラボの最上階に位置する司令塔で、壁一面に画面があって、各部屋の様子が映し出されているモニタールームだった。紹介されたのは、ラボの上級役員で、ショートカットのキリッとした年配の女性だった。ヒノエのような燃える赤い目をしている。
ブルーノは彼女を見ると、子犬のように近づいていき、
「マミー!元気でっか?」と、嬉しそうに話しかけた。
「ブルーノちゃん、久しぶりね。なか
小説「サードアイ・オープニング」全12話を書いてみて
今まで、たくさんの物語を読んできて、自分でも言葉を紡いできましたが、「大切なことは言葉にできない」と大好きな物語の中でも言われています。無尽蔵に溢れくる大河の全体に、柄杓を入れて汲み取るようなもので、言葉にしたとたん、全体の大半を取りこぼしてしまう上に、さらに全体から遠ざかってしまうようです。
人の心の揺れも川の流れと同様、いや、それ以上に留めおけないもので、人との関係性をテーマに書くとなると
「サードアイ・オープニング」第12話(#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門)
第12話:信じる力
音楽祭が終わると、次は百名ほどの要人たちの食事会となった。ここにはブルーノやステファンたちの一般研究員たちの姿はなく、俺は特別ゲストとして招待されたようだった。
国王は数名の貴族たちに囲まれて一段高い奥まったテーブルに座っている。その近くでは、ゆるやかにピアノの演奏が行われていた。これもまた、素人の俺が聞いても心に響く音色だった。こんな中で食事ができるとはなんという幸運だ
「サードアイ・オープニング」第11話(#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門)
第11話:宙への祈り
王位奪還計画が無事成功して、四次元世界は大きな転換期を迎えていた。異次元上昇計画の最終ステージといったところだ。
軍内部の大幅な組織変更とそれに伴う人事異動があり、俺はファイアーレッドアイの特殊能力と今回の活躍が認められて、軍の中枢部に配属されることとなった。
ヒノエが回復して初めての軍法会議が行われた。彼女は変わらずに眩しさを放ちながら、きびきびと指令を出していく。
「サードアイ・オープニング」第10話(#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門)
第10話:わが命を賭しても
ゴードン王子とその母の壮絶な別れを見守って、急いでヒノエを連れて帰還した。ヒノエはそのまま集中治療室に入ったようだ。翌日、俺はブルーノの所に行った。
「これはこれはオウエン殿、遠征お疲れ様でやんした」
「ヒノエは無事か?」
「意識は戻りやした。まぁ、彼女は自家発電機みたいなもんだから、じきに良くなるでやんすよ」
「魂が消えかかってたぞ。普段はあんなことないのに、今回
「サードアイ・オープニング」第9話(#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門)
第9話:絆という名の依存
ヒノエとの訓練は日に日に過酷さを増していった。俺ができるだけ多く三次元に移動できるようにと、とにかく基礎体力作りに余念がなかった。男の俺でも音を上げるほどのトレーニングにヒノエは毎回付き合ってくれた。あいつは化け物かもしれないと本気で思う。
俺の場合、特殊任務の帰還に関しては、魂ひとつで空を飛んで帰れば済む話なのだが、行きは肉体と魂の分離をする例のマシーンを使わざる
「サードアイ・オープニング」第8話(#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門)
第8話:帝王の矜持
私は生まれた時から王位継承者として育てられてきた。幼い頃から両親は常に公務で忙しく家を空けがちで、私たち兄弟の世話は乳母と家庭教師に任されていた。
乳母はとことん私たち兄弟に甘く、どんなわがままでも優しくきいてくれて、教師たちは子供たちの気がそがれぬように工夫をこらして学問を教えてくれた。一方で、大人の目の届かぬところでは、兄弟で悪さやいたずらを散々したものだった。
長
「サードアイ・オープニング」第7話(#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門)
第7話:歌姫の夢の中
初任務が終わってほどなくして、ヒノエから呼び出しがかかった。向かった先は軍司令塔の会議室で、そこにはヒノエと十数人の恰幅のいい男たちがすでに集まっていた。
「体調はいかがかしら?ミスター・オーエン」
ヒノエはにっこりと微笑んで俺に問いかけた。その笑顔の真意を探るべく、じっと彼女のオレンジ色の瞳を見る。特に他意はなさそうだったが、上官としての尊厳を無視された憤りからか、眼