レジリエンスの正体
ストレスに対する抵抗力として、「レジリエンス」という言葉を聞いたことはありますか?
ひとことで言えば、「困難から回復する力」のことです。
もっと専門的に言うと、
「困難な状態にさらされることで心理的不健康の状態に陥っても、それを乗り越えて適応する能力」と定義されます。
このレジリエンス、
誰もが少なからず持っているし、高めることも出来るとされています。
今回はレジリエンスについて、
前回までの記事で紹介したクロニンジャー理論に絡めて説明していきます。
レジリエンスの種類
レジリエンスにはいくつかの種類があるので、例を出しながら考えてみます。
たとえば、
仕事で上司から無茶振りされた時のことを想定してみましょう。
上手いこと立ち回って周りからサポートしてもらいながら課題をクリアする人もいれば、
黙々と粘り強く必要なことをやる人もいますよね。
今度は、部活動で意見が対立して友人二人の板挟みになってしまった場合を想定してみます。
「うちら3人ならきっと何とかなる!」と開き直るかのように明るく振る舞った結果、いつの間にか問題が解決してしまう。
あるいは、自分と友人それぞれの性格を考えた上で、
誰に何を言えば穏便に解決できるかを計算して行動する人もいるでしょう。
このように、レジリエンスといっても色々な種類があります。
そして自分がどのタイプのレジリエンスを持っているかどうかは、性格分析によってある程度導き出すことができるんです。
その際に利用する性格分析が、前回まで紹介していたクロニンジャー理論です。
クロニンジャー理論では、
人の性格を「生まれつき持っているもの」と「後天的に手に入れるもの」の二つに分けて考えました。
レジリエンスも同じです。
資質的レジリエンスは「生まれつき持っているもの」。
獲得的レジリエンスは「後天的に手に入れるもの」。
では順番に見ていきましょう。
資質的レジリエンス
①楽観性
将来に対して肯定的な考えを持っているため、困難に直面しても目標に向けて努力することができる。
◆クロニンジャー理論との関係
「損害回避」と負の相関
※損害回避:将来に対する不安や恐怖、行動の抑制と中止に関する遺伝的な傾向。
②統御力
日常生活において不安が少なく、ネガティブな感情や体調に振り回されずにコントロールすることができる。
◆クロニンジャー理論との関係
「損害回避」と負の相関
③社交性
見ず知らずの他人に対する不安が少なく、人付き合いを好み、積極的にコミュニケーションが取れる。
◆クロニンジャー理論との関係
「損害回避」と負の相関
「報酬依存」と相関
※報酬依存:他人からの賞賛への依存のような、承認欲求や情に関わる遺伝的な傾向。
④行動力
忍耐力が高く、目標に向かって努力することができる。
◆クロニンジャー理論との関係
「持続」と相関
※持続:忍耐強くひとつの行動を行うような、努力に関わる遺伝的傾向。
続いて、獲得的レジリエンスです。
獲得的レジリエンス
❶問題解決志向
状況を改善するために、問題を積極的に解決しようとする意志を持ち、解決方法を学ぼうとする力。
◆クロニンジャー理論との関係
「自己超越性」と相関
「自己志向」と相関
※自己超越性:現実生活を超えた自然や宇宙への関心に関係
※自己志向:自己決定力や、選択に対して行動を調整する能力
❷自己理解
自分の考えや自分自身について理解し、自分に合った目標設定や行動をすることができる。
◆クロニンジャー理論との関係
「自己志向」と相関
❸他者心理の理解
他人の心理を共感的に理解し、受容することができる。
◆クロニンジャー理論との関係
「協調性」と相関
※協調性:他人に共感し、相手を受け入れる能力
まとめ
いかがでしょう?
資質的レジリエンスを持っているに越したことはありません。
一方で、
よりストレス耐性を高めようと思ったら、獲得レジリエンスを高める方が良さそうです。
問題解決志向を高めるためには、
上記にある質問票の項目をそのまま実行するのが良いでしょう。
自己理解を高めるためには、
ビッグファイブの性格分析などを利用して自分の性格を客観的に分析することが第一歩になりそうです。
他者心理の理解のためには、
クロニンジャー理論の性格分析の項目を、相手に当てはめて考えてみるのもいいかもしれません。
前回も書きましたが、
自分の持っていないものに目を向けるよりも、得意なものや努力によって手に入れられることに注目した方がいいんです。
ネガティブを減らすよりもポジティブを増やすように、意識してみるのが良いでしょう。
【参考文献】
レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み.平野真里.日本パーソナリティ心理学会2010
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