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テニス上達メモ107.行き交うボールは諸行無常。「生老病死」を観察する


▶ワンショットの中に「生老病死」がある

 
ボールは(も)諸行無常です。
 
打たれたばかりのショットには、勢いがあります。
 
空気抵抗を押しのけて突き進み、ストロークなら重力に逆らって上昇するエネルギーが乗っています。
 
それがブレーキングポイントを迎えると降下へ向かい、コートに着弾
 
今度はバウンドする反発エネルギーをサーフェスより得て再び上昇し、トップを迎え、落ち際へ至ります。
 
勢いを保っているのか、失いつつあるのか。
 
よく「加速」とはいうけれど、ショットは初速が最速で、よほどの追い風にでも乗らなければ加速はないから、そのように感じる場合はボールの見方が誤っていると疑われます。
 
ボールは速度を落としながらこちら側へ向かって来ます。
 
このワンショットの中に、ボールの「生老病死」が見て取れます

▶森羅万象、使わなければ衰える


言わば、ショットが生まれてから死ぬまで。
 
その過程を「生老病死」にたとえます。
 
その様子をよく観察すると、今後、どう変化するかが見て取れ、そのためにプレーヤーはどう動けばいいか、打てばいいかが、感覚的に分かるようになります
 
心身の様子を観察していれば、どんな具合に変化していくかが見て取れ、今は働くべきか休むべきかが、感覚的に分かるのと同じです。
 
ところが忙しい現代人は、自分の心身と向き合う余裕もなかなかありません。
 
暑いといって冷房に頼りすぎると、汗をかいた気化熱で体温が下がる変化を感じられず、寒いといって暖房で暖めすぎると、体内で熱を生む機能も衰えます。
 
身体機能・身体感覚も、バランスよく使わなければ衰えるのは、足腰と同様
 
いくら点滴で栄養を補っても、寝たきりの患者だと足腰の筋肉は衰えて、骨ももろくなります。
 
サポーターに頼りすぎると自前の筋肉で支える筋力も失ってしまいかねません。
 
集中力も使わなければ、衰えます
 
心は疲弊していたら、休まなければなりません
 
そういう諸行無常の変化と向き合うのです。

▶物性的にも「絶対無二の一球」

 
ボールに関する「生老病死」。
 
それは、弾道が上昇したり下降したり、勢いが減衰したりといったショットについてだけではなくて、物質としてのボールそのものも諸行無常であり、やはり「生老病死」があります。
 
開缶したてのフレッシュな生まれたばかりの状態と比べて、数ゲーム経過後、ボールはどれくらい内圧が下がっているのか。
 
当初滑らかだったフェルトは、どれくらい毛羽立ってきているのか。
 
クレーコートなら特に、土埃にまみれるかもしれません。
 
メーカー名やモデル名の印字も薄くなります。
 
一打一打でボールのコンディションは、刻一刻と変化しています
 
そういう意味でも、「この一球は絶対無二の一球なり」
 

▶ボールに対する興味・関心を強める

 
見た目も、硬さも、手触りも諸行無常。
 
激しく打ち合った直後のボールは、を持っていたりします。
 
そういった物質としてのボールそのものの変化に観察が及ぶと、興味・関心が強まって集中しやすくなるのです。
 

▶ジョコビッチ、「匂い」を嗅ぐ


また集中というと、テニスのプレーではボールを目で見る眼識がメインですが、一方では鼻で嗅ぐのももちろん集中です。
 
特に香りは五感の中で唯一、本能や感情を司る大脳辺縁系(古い脳)へ直接届きます。
 
そのほかの4つの感覚は理性的な思考を司る大脳新皮質(新しい脳)を経由。
 
そのため嗅覚は、より感覚的な営みを活性化するといわれます。
 
ですからアロマテラピーは、ストレスを軽減したり自律神経の調子を整えたりするのに有効なのでしょう。
 
開缶したてのボールは、ゴムのかぐわしい匂いがします。

▶ボールは、生きている

 
ボールはまるで「生き物」です。
 
こちらでも述べたとおり、毛羽の抜けないボールは技術的には開発可能だけど、そうするとボールサイズは打つたびにどんどん膨れ上がり、ソフトボール大にもなる。
 
直径6.54~6.86センチメートルの規格を維持するために、ボールは文字どおり身を削ってそのサイズをとどめ、有機的に「老」いるのです。
 
また膨れ上がると弾まなくなって、254±0.3センチメートルの高さから強固な平面に落下させた場合、ボールの下端が135センチメートル以上147センチメートル以下にバウンドが収まらなければならない規格にも抵触するでしょう。
 
ですからボールは毛羽を散らせて変化する「必要」があるのです。
 
ボールの傷み具合の観察は、いわば「病」を診ていると言えます。
  

▶ニューボールが飛びすぎる「本当の理由」

 
そして規格を維持できなくなったとき、ボールは「死」を迎えます。
 
ボールに延命は、必要ありません。
 
内圧を保てなくなったいわゆる「ペコ球」で練習していては、上手くなるどころか「現実に対するイメージのズレ」を作って、むしろ練習すればするほどテニスが下手になってしまいます
 
試合になってニューボールが飛びすぎるのは、「まだ硬い」からではありません。
 
「現実に対するイメージのズレ」があって、それが打球タイミングを誤らせる結果、飛びすぎるのです。
 

▶ボールコンディションに気を配れば、集中力は上がる


ボールなんて「いつも」「どれも」一緒ではありません。
 
1球1球が「いつも」「どれも」違うのです。
 
選手はサーブを打つ前に、よくボールを選びますよね。
 
数球を手にしてコンディションを確認し、使わないボールはボールパーソンに返したりします。
 
一般プレーヤーの場合は2球でローテーションする回し方が多いでしょうから、ボールセレクトはできないとしても、そうやって手元にあるボールの状態を気にかけることはできます。
 
それが、ボールに対する集中につながります。
 
こちらのWOWOWに寄稿した杉山愛のコラムが参考になります。
 
「ボールに集中しよう」と大脳新皮質で考えたら、それはもはや集中ではないのです。

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(テニスゼロ)
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