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テニス上達メモ051.テニスは「天然さん」だと上手くいく!

 「天然」という言葉について辞書を紐解くと、「人力が加わっていない自然のままの状態」とあります。
 
たとえば錦織圭や大坂なおみ、「自然体」ですよね
 
いい意味の天然キャラです。
 
錦織はジュニア時代、「飛び跳ねて打つな!」みたいな指導を、当時のコーチから受けたけれど、そんなの無視して(スルー力)ピョンピョン跳ねながら打っていたのが、「エアK」の起源という話を聞きかじったことがあります(聞きかじりですから出典は不明)。
 
テニスに限らずイチローも、中学の野球部入部にあたって「フォームはイジらない」条件を父親が監督と交渉し、チーム加入に至りました。
 
それが、将来的な「振り子打法」に通じたのです。

一軍打撃コーチはイチローがファームにいた頃にもイチローの父親へ打撃改造を相談して断られている(鈴木宣之著『イチローとわが家ほんとうの話』

Wikipedia

まさにフォームについて、「人力が加わっていない自然のままの状態」
 
一方、フォーム矯正から入る今の常識的なテニス指導は、言ってみれば「不自然体」です。
 
テニス雑誌や実用書などの本から情報を得ようとする、スポーツを頭で学習するタイプ
 
運動なのですから、頭ではなく、体で覚えるのが「自然」なはずなのに……。
 
そういったタイプについて、ここでは「天然さん」に対する「人工さん」と名付けます。
 
人工さんは頭で理解しようとするから、つい考えてしまう
 
机上の空論や理屈が先行し、現実のスポーツ現場に、そぐいにくいのです。
 
※この先も、「天然さん」「人工さん」とそれぞれを呼称しますが、蔑視する意図ではなく、単にタイプの区別をイメージしやすいようにした表現上の工夫です。
 
※また記事の後半では、「天然さん」「人工さん」、そしていわゆる「いい人」についての自己肯定感に関する相関についても考察を加えます。

天然さんの意見はこうです。
 
たとえば私がいくら、ウイルソン『プロスタッフ』のセントヴィンセント製と中国製の違いを論じてみても、奥さんに言わせれば「使ってみてイイほうがイイ」という。
 
「いやいや、何が違うって、ピート・サンプラスは『フィールが違う』って言ったんだ」。
 
こう説明すると、「あんたはサンプラスか」とツッコミもすげない……。
 
まぁ、今どきセントヴィンセントを、コレクションする需要はあるとしても、実用する人はめったにいないと思いますけれども。
 
技術論にしても同様で、「キネティックチェーンによるパワー伝達がバイメカ的には有効で、下半身で得たスイングの原動力が腰の回転を始動させると……」などと人工さんは理屈を語る
 
天然さんに言わせれば、「いい球打てたら、それでええやん」という話のようなのです。
 
錦織のジャックナイフについて、次のような解説がなされます。
 
「(右利きの場合)右足で踏み切ってジャンプし、空中では左足を後方へ蹴る。そうすればキックする反動を利用して、前方へ腕を振り出すスイングエネルギーを得ることができる」などと……。
 
「このときのグリップは、右手はフォアイースタン、左手はセミウエスタン程度の厚さである」などと……。
 
だけどやっている天然さんの錦織自身は、右足で踏み切るとか、左足を後方へ蹴るとか、その反動を利用して腕をスイングするとか、そんなこと、まったく「意識」していませんからね。
 
自分の握っているグリップ名なんかも、錦織自身は、「知りもしない」のです。
 
それは、大坂なおみも同様に。
 

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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero