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2023年2月の記事一覧

御本拝読「マカン・マラン(シリーズ)」古内一絵

体は食で作られる

 ようやく繁忙期を抜け、年度末までささやかに通常運転な日々です。しかし、少し余裕ができるといろいろと考えてしまうことも多くなる……。忙しくしてる時って、目の前のことに必死だからあんまり細かいことは気にならないのに。
 普段仲良しな人とのすれ違いや良くない微妙な空気。小さな苛立ちや報われなさ。そんな些細なメンタルの調子の悪さに、フィジカルも引きずられることが、年々増えてきました。

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御本拝読「聡乃学習」小林聡美

さとのがくしゅう

 ではないです、「サト、スナワチ、ワザヲ、ナラウ」です。
女優・小林聡美さんのエッセイ集、既刊では最新刊。2019年単行本で発行、去年文庫化されました。ちょうどコロナ禍前の、小林さんの毎日がつづられています。
 昔から小林さんのファンですが、やはり最新が一番良いと毎回思わせてくれる素敵な女優さん。不思議な清潔感というか、凛として静かなのに暗さや重さを感じさせないからっとした佇ま

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御本拝読「木戸番の番太郎」くるねこ大和

お江戸と猫の相性

 明日は猫の日ということで、ほっこし猫漫画の紹介を。かたやま和華さんの「猫の手屋繁盛記」シリーズ、田牧大和さんの「鯖猫長屋」シリーズ、主役ではないものの倉坂鬼一郎さんの「小料理のどか屋」シリーズ等、お江戸を舞台にした時代小説に猫というのは相性がいい(というか、殺伐とした話でも絶妙に和んで私は好きだ)
 時代小説に出てくる猫たちは、きゅるんと愛らしく動画映えするようなキュートさも

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御本拝読「うさぎ玉ほろほろ」西條奈加

「南星屋」の話

 ようやくゆっくり読めました、西條奈加さんの「南星屋」シリーズ最新刊。西條さんの時代小説が秀逸なのはもう周知の事実ですが、私はこの「南星屋」シリーズが今お気に入りです。
 主人公・治兵衛の孫娘・お君の縁談から始まり、治兵衛の出生の秘密へとつながる(そして、事件が実はその秘密から始まってお君の縁談の結末へとつながる)「まるまるの毬」。還暦を過ぎた治兵衛と娘母子の「南星屋」に、正式に

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御本拝読「いちのすけのまくら」春風亭一之輔

飄々なのに毒孕み

 笑点のレギュラーの発表があってから書きたかった一冊。師匠、おめでとうございます~。私、大人になってからのライト落語ファン。それこそ職場の図書館で落語のCDを借りたり、TVで観られるときは録画しておいて休日にゆっくり観ている程度ですが。一之輔師匠の小気味の良い噺、好きです。 
 師匠のご著書は何冊か出ていますが、どれも拝読済。落語入門のためのシリーズは落語の入り口として分かりや

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御本拝読「’80Sガールズファッションブック」竹村真奈

生まれた頃の時代

 私が生まれたのは1987年。昭和末期。なので、バブルの風も知りませんし(むしろ両親がバブル崩壊で損こうむってる側)、物心ついた時には90年代に入ってました。
 そんな私がなんで80年代?というと、小さい頃に見てたVHSのTVの録画番組のCMがとても印象的だったからです。私は弟とともに祖母の家に預けられて育ったのですが、田舎の不便な一軒家の中で家事に立ち働く祖母も忙しく、少し前

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御本拝読・「寒椿ゆれる」近藤史恵

熱の低い時代小説

 隣のお宅の庭の椿がきれいだったので、思い出した本。近藤史恵さんはもともと大好きで、他にも好きな本はたくさんある。「ときどき旅に出るカフェ」はまた別の機会に書きたい。ビストロ、パ・マルの「ビストロ」シリーズが一番有名でしょうか。
 最近はあまり書いておられないですし著作の中でも時代小説は多くないのですが、近藤さんの落ち着いた時代小説はとても素敵。いわゆるチャンバラのシーンやバタ

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御本拝読「雀の手帖」幸田文

時代が変わっても

 文豪・幸田露伴の次女で作家の幸田文さんの随筆集。エッセイですね。書かれたのは昭和三十四年一月から五月までの、百日間。ちょうどこの時期から始まってますので選んでみました。この本も学生時代からの愛読書で、中身が分かっていて何度読んでも面白い。
 昭和三十四年といえば、まだ戦後の色が少し残っていたかもしれません。日本も文さんご自身も、身辺のバタバタが少し落ち着いたころだったのでしょ

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