御本拝読「’80Sガールズファッションブック」竹村真奈

生まれた頃の時代

 私が生まれたのは1987年。昭和末期。なので、バブルの風も知りませんし(むしろ両親がバブル崩壊で損こうむってる側)、物心ついた時には90年代に入ってました。
 そんな私がなんで80年代?というと、小さい頃に見てたVHSのTVの録画番組のCMがとても印象的だったからです。私は弟とともに祖母の家に預けられて育ったのですが、田舎の不便な一軒家の中で家事に立ち働く祖母も忙しく、少し前に親戚が録画して置いていったTV番組の録画のVHSを流しっぱなしにしてよく見せてくれていました。番組の内容は分からないけど、CMはどれも個性的で好きでした。
 今静かに流行ってる明治・大正・昭和レトロも素敵だし好きですが、自分が「これはいい!」と思ったものはことごとく80年代のもの。多分、私の中の美的センスが全体的に80年代に合っているのだと思います。中学生時代から、わたせせいぞうさんの漫画やイラストも好きだったのですが、今になってその理由が分かる。
 あまり残ってませんが、私の乳幼児期の写真にも、その名残がほんのりあったりして。私のノスタルジーなのかもしれません。

豊かさで伸びた物

 高度経済成長の後バブル景気、バブル崩壊。豊かさが発想の源であるとは言わないけども、経済的余裕があるから発展するものは多い。本書は、中でも女性ファッション・グッズに焦点を当てています。
 多分、本書で紹介されている洋服のお値段は、おそらく今よりも倍ほど高いかと思われます。というか、私も、小学校卒業くらいまでは街にこんなにプチプラのお店もなく、田舎だったこともあって洋服を買うって結構緊張する出来事でした。
 着るものって、食費や光熱費よりは優先度が低いもの。現に、この冬みたく光熱費がとんでもなく上がってる時など、真っ先に使わないでおこうとなるところ。80年代ファッションがかっこいいのは、あまりコスパや価格上限を考えずに、ブランドやショップが各々好きなことを貫いている。そしてそれでも売り上げがあるから続く、という明るいスパイラルがあるからかも。
 私も今のプチプラ好きですし買いますし着ますけど、着るものにお金とこだわりをかけられるこの時代の空気感も好きです。全体的にビッグシルエットなのもちょうどこの令和の流行りと重なって、個人的にはとってもエモい

身に纏うプライド

 写真で見ても一目瞭然。生地も厚いし、縫製もしっかりしていそう。本書の写真はほとんど当時の雑誌やブランドのコレクションの写真。だから、見ごたえがあるというか、ほれぼれするほどの「プロとしてのプライド」が伝わります。写真集としてうっとり見てもいます。
 モデル業でない市井のオリーブ少女たちやニューウェーブのファンたちも、きっと同じような表情をしていたはず。みんな、着るものに自分の「好き」を目いっぱい詰め込んでいる感じ。
 この頃の「好き」は、「流行りに乗ろう」「自分を魅力的に見せよう」ではなく、本当に純粋な「私はこれがいいと思う!」という爆発のようなもの。今、自分が着ているものに対するプライド。装う、ということを全身全霊で楽しむ人たちがいたから、不景気の平成になったってファッションは健在なのだと思います。

ファッション小物

 私は、化粧品や香水のパッケージデザインも大好きです。自分のブランド名を冠して液体や粉を長期間保管しておくものだから、どこも凝ったものが多い。百貨店のフロアからドラッグストアまで、きらきらとそこだけ明るく見える。
 石鹸類やシャンプーも、日常的に目に見えて日に2度3度使うものだから、分かりやすいけどそれぞれの個性のあるパッケージ。色、デザイン、大きさや形……年代の様々が出るのは、ここも同じ。
本書では、そういう小物類についてもページが割かれており、楽しいページになっております。
 また、ノベルティや、洋服ほどの値段はしないけど各ブランドのロゴ等が入ったバッグやバッジ等、かわいいチープさでキッチュファッション小物にも、その当時の「かわいい」が詰まっています

まとめ

 多分、80年代って、昭和レトロとはちょっと違う。特にファッションは、生活に密着しているものの、「どこのご家庭にも~」とか「大人たちはみんな~」とは一線を画して個人の好みが出るので面白い。たくさんある中の、どれを選ぶか。そこで個人の個性や好みが爆発してるのに、なぜかまとまりがある。
 これをかわいいと思うのもまた個人の感想。だけど、この頃の爆発的な自由さは、令和の今にはない気がします。電子機器やネットワークが進歩した分、ひょっとしたら、「自分で選ぶ」「自分の好き」が分かりにくい時代になっているのかもしれません。


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