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蔵出し映画レビュー『PLAN75』

うっかりオムニバス映画版のオリジナルを見てはいなかったが、SFと倍賞千恵子の異様な食い合わせに期待が膨らんだ早川千絵監督・脚本の『PLAN75』。冷淡な近未来社会派かと思いきや、思いっきりくたびれた感じの倍賞千恵子で包み込んだヒューマンドラマで、不器用な群像劇と淡白なSFであっさりしすぎた印象である。

てっきり、倍賞千恵子が演じる主人公と磯村勇斗が演じる「PLAN75」の職員がチグハグな感じで絡むのかと思いきや、磯村勇斗のエピソードと倍賞千恵子のエピソードは基本的には別々の群像劇で展開。倍賞千恵子が演じる角谷ミチの清掃夫の仕事の様子は哀愁と高齢化社会の辛みがじんわりとあり、ぶっちゃけこれだけを思いっきり引き伸ばしてやっても良かった。

しかし、そこに「PLAN75」という妙なシステムがあり、個人的にはとことんディヒューマナイザーさバリバリなものを望んだが、中途半端な温かさも見せたりする。その中途半端さがある意味生々しく、リアリティさがあるんだろうけど、どうしても突き抜けたものにならない。そのぬるさが味なんだろうけど、フワッとした印象しか残らない。

それでも見ているだけで味があるくたびれた倍賞千恵子のおかげで見ていられる映画ではある。妙な近未来を見せるならもっともっと脚本を練り込んでほしかった。

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