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“攻め”の商品開発

column vol.1250

おいしい生活

1982年、コピーライターの糸井重里さんが生み出した西武百貨店キャッチコピー

広告業界の方ならお馴染みの名作コピーの1つですが、実はクライアントに提案した際は “賛否両論” が巻き起こったそうです。

『おいしい』食べ物に使う言葉であって、生活に掛ける言葉ではない

…というような感じで、批判の声が挙がったそうです…

しかし、そうしたご意見に対し、糸井さん

「ヒットするものには、必ず賛否両論がある」

と説得。

こうして、ヒットコピーは誕生したわけです。

これは私が若い頃、宣伝会議のコピーライター養成講座の講師から聞いた話なのですが

新しい価値観には必ず批判がつきものという分かりやすい例でしょう。

だからこそ

批判を恐れずに挑戦する

ことが大切。

…ということなのでしょうが、…とはいえ“言うは易く行うは難し”

大抵の人は批判を恐れて思い切った挑戦ができないというのも事実でしょう…

そこで今回は商品企画をテーマに、「この商品企画、攻めてるな〜〜」と思う事例をご紹介したいと思います。

そこには、今後のAI時代へのヒントも詰まっていると感じるのです😊


「飲むフリスク」に賛否両論

まず最近見た商品の中で、個人的に一番「攻めてるな〜〜」と思ったのが、ダイドードリンコが発売した新感覚の炭酸飲料「FRISK SPARKLING(フリスク スパークリング)」です。

〈日経 X TREND / 2024年6月26日〉

こちらは「FRISK」と名前にあるように、ダイドーFRISKコラボした商品。

まさに「飲むフリスク」です。

ダイドードリンコ / FRISK SPARKLING

えぇぇ…! の、のむフリスクっ??

…と驚かれた方もいらっしゃると思いますが…、そうなのです…

早速、SNSでは賛否両論が巻き起こっています…(汗)

…いや、むしろ「まずい」X(旧Twitter)でユーザーが投稿したことで両論が勃発したので、…メーカーとしては辛かったことでしょう…

しかし、ダイドーのマーケティング部・部長、坂本大介さん

冷涼感や刺激を求める人にはぴったりな飲料だと自負しているが、求めていない人の間では好みが分かれるのは当然だろう」

冷静に分析

さらに、今回のように賛否両論が起こることで話題になり、結果として

「FRISK SPARKLINGを求めている人に届く可能性が広がる

前向きな姿勢を見せております。

実はこの商品、決して冗談半分で生み出したわけではないのです。

むしろ、大マジメ

コロナ感染に対する不安や行動制限によるストレスなどが原因で、メンタルの不調を訴える人が続出していた2021年、

少しでも「心の健康」を取り戻したいと開発されたものなのです。

そこで、リフレッシュに直接的・体感的につながるミント系をセレクト

一方、このミントの強さおいしさのバランス最も苦労したそうです。

そして苦労に苦労を重ね、ようやく開発チームの納得いくものに。

しかし、この未だかつてない味を消費者に伝えるのが難しいと判断し、味がとても似ているFRISKとコラボすることで「伝わりやすさ」を手にしたのです。

普通にリリースしていたら失敗していただろう新商品をギリギリまで消費者に受け入れてもらおうと考え、努力したダイドー

そして、失敗すれば自分たちのブランドに余計な傷がつくのに、ダイドーの挑戦を受け入れたFRISK

私はこの2社を非常にカッコ良いと思っています。

AI時代に求められる「偏愛価値」

そして同時に、AI時代に求められる「人間らしい創造性」のエッセンスを感じるのです。

先日、【“いい加減“の時代へ】でもお話しした通り

人類叡智総和の10倍とも言われているAGI(汎用人工知能)3年後には登場するという説もあり、さらには人類の叡智を1万倍上回ると言われるASI(人工超知能)がこの10年前後以内で実現すると予想されている昨今。

過去のデータベースをもとに誰もが好む最適な商品を生み出すことについては、今後人間はAIに勝てないのではないかと思うのです。

だからこそ、偏愛・熱情を種にしたプロダクトアウト的な商品・サービスの開発が必要であると話しましたが、まさに「FRISK SPARKLING」にはその考えに通じるものがあると感じます。

開発者の「心の健康を叶えたい」という熱い気持ちと、それを実現するための弛まぬ努力

何より失敗を恐れない強い気持ちに心が奮えます。

そして、こうした「想い」とともに大切な視点だと思うのが「共創」への意識です。

つまり、お客さん(ファン)と一緒に商品を世の中に広げていくという考え方。

ダイドーの坂本部長は、SNSで賛否両論が巻き起こったからこそ、たくさんの人が知り、求めている人に伝わったと仰っています。

そもそも、新商品は「否」が起こらなくても興味を持たれなければ「スルー」されてしまいます。

もともと「好みが分かれるのは当然だろう」と思って世に出した商品。

話題になったことで、その分、多くの「賛」成者に届けることができたという風に考えれば、大成功と言えるのではないでしょうか😊

ファンの「応援投稿」を活かす

SNS時代は、ファンが企業や商品を応援しやすい時代とも言えます。

例えば、カルディが販売している「瀬戸内レモンオリーブオイルつゆ」もそうです。

〈cookpad news / 2024年7月5日〉

こちらは、この季節に欠かせない「めんつゆ」商品なのですが、かつおぶしが王道である中、「レモン×オリーブオイル」という攻めた一品

当然、賛否両論が巻き起こっているのです…

一方、面白いのがこの商品を気に入った方の中には、

「豚しゃぶやサラダにかけてもさっぱりしておいしく食べられます」
「マリネに使える」
「野菜の焼き浸しの味付けに使うとおいしい」

など、めんつゆとは違う調味料としての活用方法SNSで発信する方がいらっしゃるのです。

つまり、ファンが「より消費者に受け入れやすくなる」よう工夫してくれている。

好きな人からすれば、不評により売り場から撤退されるのはでしょう。

これは最近デンマークでも、そんなムーブメントが起きています。

同国では激辛で有名な韓国のインスタントラーメン「ブルダック麺」を輸入したのですが、あまりにも辛過ぎるリコールの対象に挙がったのです…

〈TABI LABO / 2024年7月18日〉

もともとデンマークは非常に薄味文化とのこと。

そうした中、やってきた「激辛」

こりゃ危ないと、デンマークの食品局が該当製品を購入した人に対して、廃棄するか購入店に返品することを促したのです。

これに対し、一部のファン

「リコールなんてそんなバカな。パッケージには辛いかもしれないという明確な注意書きがあるじゃないか」

と反論。

そして、瀬戸内レモンオリーブオイルつゆ同様、ブルダック麺のファンを増やすためのアレンジレシピSNSで溢れるようになったのです。

その中には、マヨコーンと合わせたり、乾麺を牛乳で茹でてカルボナーラ風にするなど、辛くない食べ方も紹介されています。

このようにブルダック麺はファンの力により、デンマークでも受け入れられるよう導かれているのです。

〜というように、賛否両論「賛」の力いかに頼りになるか、感じていただけたでしょうか?

これぞ共創マーケティング

今後のマーケティング戦略での重要な視点になっていくでしょう。

AIマス商品(みんなが好きな商品)の開発がますます得意になっていく。

でも、必ずそんな世界は物足りなくなる

予定調和の世界なので)

だからこそ、偏愛共創に意識を向ける方が良さそうです。

今はその過渡期。

今回の話が全てではありませんが、新しい発想が求められるでしょう😊

本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!

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