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リーダーは「聞く」じゃなく「聴く」

column vol.1138

昨夜、久しぶりにFacebookのアプリを開いたら、当社OBの興味深い投稿を見つけました。

そのOBは私と同世代なのですが、若い頃、ウチの会社の仕事で元NHK会長の福地茂雄さんを取材する機会があったそうです…(驚)

福地さんといえば、アサヒビールNHKで経営者として手腕を発揮し、旭日重光章受章まで受章された方。

特にNHKでは、当時さまざまな不祥事が顕在化される中、火中の栗を拾っていらっしゃった姿が頭に浮かびます。

先月、残念ながらお亡くなりになりましたが、名リーダーの福地さんと当社に接点があったことに興奮を覚えました。

ちなみに、投稿を上げたOBがこのようなコメントをしておりました。

(名経営者として名を馳せているのにも関わらず)こちらの拙いインタビューにもしっかりお答えいただきました
(中略)
その後、私が(当社を退職して)池袋(現職)で仕事するようになってから度々お目にかかることがあった私のことを覚えててくれてました。凄い方だなあと思った。若者にも気を遣っていただいた。こちらは恐縮する一方でした。

まさにメディアを通してお見かけする福地さんのイメージです。

分け隔てなく相手と向き合い、話を「聴く」。

最近、私が読んだ読売新聞の記事の中でも、福地さんの次のお言葉に感銘を受けました。

「自分の好きな部下を使うのはアホでもできる。自分と文化の違う部下をきっちり使うのが本当の管理職」

〈読売新聞 / 2024年2月10日〉

「自分と文化の違う部下をきっちり使うのが本当の管理職」、…なかなか難しいことではありますが…、仰る通りです…!

そのためにカギとなるのが、まさに「聴く力」なのです。


「withoutジャッジメント」がカギ!

福地さんと聞いて最初に頭に浮かぶのが「現場主義」です。

そのお考えを象徴する話が、アサヒビール時代の「発泡酒」への参入についてです。

それは2001年のこと。

当初、参入に反対していた福地さんでしたが、市場参入を決断

その時のお気持ちをこのようにお話しされています。

「満足のいく試作品ができたし、『気楽に飲みたい』と消費者が発泡酒に求めるものも変わってきた。以前、自分が『出さない』と言ったから出さないというのは、経営者のエゴですよ。

判断の決め手となったのは、顧客視点

当時、参入か否かで二分する仲間の声に耳を傾け、最後は顧客の声を聴く

そして、その声に素直に従い、前言を撤回できる勇気が素敵です。

この「聴く力」のヒントとなるのが、『まず、ちゃんと聴く。コミュニケーションの質が変わる「聴く」と「伝える」の黄金比』の著者で、エール株式会社 代表取締役の櫻井将さんが語る

「聞く」と「聴く」の違い

です。

〈PHP online / 2024年2月9日〉

櫻井さんは

●聞く=withジャッジメント
●聴く=withoutジャッジメント

という風に考え方を整理しております。

「withoutジャッジメント」とは、「自分の解釈を入れることなく、意識的に耳を傾ける行為」

会社上の役割(職位)に違いがあっても、人と人がフラットな関係を生み出すというわけです。 

このフラットな関係こそが、組織の力を最大化させます。

優秀なリーダーほどハマる沼

組織のメンバーのモチベージョンパフォーマンス最大限引き出すためには「内的報酬(内発的動機づけ)」が重要なのは有名な話ですね。

〈日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年2月9日〉

●外的報酬…給与や地位など外から与えられる報酬
●内的報酬…仕事で大きな成果をあげた際の達成感や充実感といった内面から湧き出る報酬

モチベーション理論における「内発的動機づけ」の研究を長年続けていた心理学者エドワード・L・デシさんは、1969年に「ソマ・パズル」(立体パズル)を使い、「外的・内的報酬」に関する心理実験を行っています。

この実験では、被験者を2つのグループに分けました。

(1)パズルを解くと金銭的報酬(1ドル)を受け取れる
(2)パズルを解いても金銭的報酬(1ドル)は受け取れない

その上で、パズルに取り組んでから30分経つと、監視員が退室し、自由時間を与えられるという環境を用意。

つまり、「パズルを勝手にやめてもいい」という条件をつくったのです。

その結果…

(1)のグループ…パズルに取り組む時間が「短く」なった
(2)のグループ…パズルに取り組む時間が「長く」なった

のです。

なぜ(2)のグループの取り組む時間が長くなったかというと、金銭的な報酬がない分、「パズル自体に面白さややりがいを見い出した」から。

「何も貰えないけど、どうせやるなら楽しもう〜〜」

と、パズルに取り組む上でのメリットを自発的に探してくれたというわけです。

よく「トップダウン型」はダメで、「ボトムアップ型(自律型組織)」が良いと言われる理由が分かりますね😊

優秀なリーダーほど、

「あぁ…もっとこうすれば良いのに…」
「いやいや…そうじゃないんだって…!」

と、「あーせー」「こーせー」と言いたくなると思いますが、人は「やらされている感」の中ではモチベーション、パフォーマンスは上がらないので、結局はリーダーの期待に応えられなくなってしまう

このことにより、怒ったリーダーさらにコントロールしようとして、悪循環の沼にハマっていくのです…(汗)

「集合知」は「内発的動機」が生む

それに、コントロールしようとすればするほど、指示待ち人財にさせてしまうので、…当然ながら、こちらが言ったことしかやらなくなります

逆に、内発的動機を高め、主体的にメンバーが動き出すと、こちらが予想もしなかったような成果を生み出してくれることもあるのです。

そうして、さまざまなタイプの人間が力を発揮することで、さまざまな価値が生まれていく

物事を判断するにあたっても、そうしたメンバーの多様性が重要です。

有名な話としては、ジャーナリストのジェームズ・スロウィッキーさんが書いた『群衆の智慧』(The Wisdom of Crowds)ですかね。

これは

多様な集団が到達する結論は一人の専門家の意見よりも常に優る

という説。

「みんなの意見」は結構正しいのです。

日本では「集合知」という言葉がよく知られていますよね。

ちなみに最近、『教養としての発酵』という本に書かれている話が、非常に面白かったので共有させていただきます。

以前、味噌メーカーの方が、「人間は、麹と、水と、塩を混ぜることしかできない、混ぜたものを味噌に変えるのは微生物にしかできない」と仰っていたことがあります。多くの醸造メーカーの方は、「酵母など微生物が、活動しやすい環境を整える」という表現をします。

〈lifehacker / 2024年2月9日〉

つまり、この話から理想のリーダーシップとは「あーだ」「こーだ」言うことではなく、メンバーが「活動しやすい環境を整える」ことにあると気付かされます。

そして、さらに発酵が「メンバーを信じること」をさらに後押ししてくれます。

微生物たちの勝手な活動が、実は、自然と環境のコントロールになっていたり、それぞれに栄養を補給する関係になっていたりします。まるで、チームワークがそこにあらかじめ存在していたかのような動きをします。

環境を整えることで、それぞれの強みと役割を持ったメンバーたちの助け合いが生まれる。

あとは、リーダーはそっと、その様子をニコやかに見守るだけ

そんなリーダーにだったら、自分は一生付いていきたい!

…ただ……、

…なかなか自分自身はそういうリーダーになれないのが、今の私の現在地です…(涙)

…まぁ、そんなに簡単ではないからこそ…、福地さんは伝説の経営者になったのでしょう…

…非常に耳の痛い話ではありますが…、「聴く力」を磨いていきたいと思っております…!

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