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クリエイティブは「共通性」がカギ

column vol.1053

実は先月、全国的に有名なある商業施設のデザインコンペがありました。

6社コンペということで、私も当社の提案チームに参加し、6月の1ヵ月間は、まるで恋をするぐらいその商業施設のことを考えまくっていました

そして昨夜、ついに先方から結果のお電話があったのですが…

何と「受注」させていただくことになりました…!

一緒にがんばってくれた仲間に感謝です!!

一方…、昨夜にアドレナリンを放出し過ぎて、今日は抜け殻のような一日になってしまいました…(今日が休日で良かった…)

とはいえ、noteはnote(笑)

気を取り直して、今回はせっかくなので「クリエイティブ」について語ろうかと思います。

良いクリエイティブとはクライアントやその先にいらっしゃるお客さま「共感」「共鳴」してくださるコミュニケーションデザイン・メッセージをつくること。

ではでは、そうした感情を呼び覚ますためには、一体何をすれば良いのでしょうか?

最近、とても参考になる記事だと思ったのが、プレジデントオンライン【「そうだ 京都、行こう。」の世界観はなぜブレないのか…コピーライターが設定している"明確な対象者"】です。

〈PRESIDENT Online / 2023年7月1日〉

こちらは『伝え方——伝えたいことを、伝えてはいけない。』の著者で、編集家の松永光弘さんの記事。

松永さんは「共通性」がキーポイントだと指摘されております。

「共通点」とは「誰に伝えるのか?」

共通性とは何か?

松永さんは「白いコピー用紙」を使って分かりやすく解説されております。

まず、白いコピー用紙と聞いて、何に使うものだと思いますか?

そりゃ…、「コピー用紙」って言ってんだから印刷するためのものだろ?

恐らく、そのような解答が多いのではないでしょうか?

しかし、次の写真を見た時、どのように感じますでしょうか?

出典=『伝え方 伝えたいことを、伝えてはいけない。』(クロスメディア・パブリッシング)

コピー用紙の隣にはペンがあります。

そうすると…、メモ書きのための紙に見えてきませんか?

では、次の写真を見てみてください。

出典=『伝え方 伝えたいことを、伝えてはいけない。』(クロスメディア・パブリッシング)

今度は、のりハサミが置いてありますよ。

恐らく「何か工作でもするのかな?」と思ったのではないでしょうか?

つまり、置いてあるものによって、イメージする用途が変わるというわけです。

「コピー用紙とかけてのり・はさみと解きます〜」ではないですが、受け手は自ずと2つの間にある共通性を考えてくれます

これはターゲッティングに対して、非常に有効なのです。

「誰に届けるのか」を明確化する

例えば、2枚目の写真にこんなコピーをつけたら、いかがでしょう?

きっと「小学生の夏休みの宿題」をイメージした方が多いのではないでしょうか?

つまり、小学生その親御さんに反応してもらいたい広告(デザイン・メッセージ)となります。

使ってもらいたい形を明らかにすることで、「誰」とは言わず、ターゲットをセグメントし、需要を喚起するということです。

この「誰に向けて」ということはSNS発信においても非常に重要になってきます。

例えば、あめんぼぷらすというYouTuberをご存知でしょうか?

〈modelpress / 2023年4月20日〉

あめんぼぷらすは、おまつさんしょーたさんの男性二人組。

主に「野球部あるある」「野球部員のルーティン」など野球部を舞台にしたコメディドラマを投稿しています。

YouTubeのチャンネル登録者数は157万人(2023年7月現在)。

「ダル」「溜めて解放」などといったバズワードを生み出しております。

実際に彼らの動画を見ていただけると分かりますが、非常にニッチです。

〈YouTube / あめんぼぷらす【日常コメディ】〉

それもそのはず、あめんぼぷらすは「野球部出身・野球愛好者」に刺さるように動画を制作しているからです。

SNSの世界では最近、「狭く深く」が常識になりつつありますが、まずはコアターゲットを設定することが大切。

その上で周辺の人たちを取り込んでいくというステップが望ましいのです。

「マーケットイン」か「プロダクトイン」か

そしてもう1つ、興味深い事例があります。

人気雑誌『ポパイ』についてのインタビュー記事です。

〈東洋経済オンライン / 2023年7月2日〉

『ポパイ』といえば創刊50周年

「らしさ」満開の雑誌の1つですが、『POPEYE Web』のリーダーである宮本賢さんターゲッティング(誰に伝えるか)について、このように語っていらっしゃいます。

「ポパイとは何か」といった問いに対する答えを僕自身が持ち合わせていないので、この手の取材は今まで遠慮してきたのです(笑)

…つまり、明確なターゲットを設定して、その人たちの嗜好を分析し、求めるであろうコンテンツを組んでいくといった手法をとっていないということです…

…おいおい、池ちゃんよ…、話が違うじゃねーか…

…という声が聞こえてきそうですが…、実は宮本さんには明確な基準が別にあります。

「これはイケる、イケない」という感覚

企画段階で「ファンがついてきてくれるか」ということは意識しているというわけです。

同じく雑誌『ポパイ』編集長の町田雄二さんも、就任当初は「当たる、当たらない」の波があったそうですが、最近は読者に刺さるものが「少しずつ分かってきた」と仰っている。

そして、何よりも町田さんが大事にしているのが

どうしたら『ポパイ』らしくて面白い場が作れるか

ということ。

つまり、まずは「自分たちが面白いと思うもの」「つくっていて楽しいもの」先にある

その上で、その面白いこと、楽しいことに共感するファンを感覚的に捉えているわけです。

冒頭の松永さんとの話との差を整理すると、「マーケットイン」「プロダクトイン」かの違いがあります。

マーケットインとは、顧客ニーズを起点に製品やサービスを開発すること。

プロダクトインとは、自社の技術や方針など優先して製品を開発することになります。

つまり、顧客軸で考えるか、自(社)分軸で考えるかの違いですね。

私の仕事はマーケティングコンサルタントなので、仕事ではバリバリのマーケットイン思考ですが、noteは完全にプロダクトイン思考です。

プロダクトインの思考の重要なターゲットは自分自身です。

まず、自分に対して「面白い」「楽しい」と思わせることができているのか?

自分自身がめちゃくちゃ評価できるものであれば、他にも共感する人はいるだろうということで形づくられるのがプロダクトインです。

どちらも正しい方法で、結果、最終的には顧客・ファンを掴めるかが成果となることは変わりません。

「共通性」とは顧客・ファンを想像すること

ですから、ポパイウェブの宮本さんも当たり前ですが

「売れる、売れない」は、結構気にしている

と仰っています。

松永さんのように顧客を論理的に捉えるのか、ポパイのお二人のように感覚的に捉えるのかの違いはあるにせよ、いずれにせよ常に「届け先の相手」を意識することが重要なのです。

しかし、意外と広告を見ても、雑誌を見ても、SNSを見ても、この相手先が読んでいて見えない場合もあります。

それはきっと「誰にでもウケたい」「もっといろいろな人たちに支持されたい」という欲が生まれることで、届けたい相手がほやけてしまうことが要因でしょう。

コアターゲットは誰なのか?
●欲を出したとしても、ちゃんとコアターゲットに刺さっているものなのか?

ということは常に意識したいところですね😊

ちなみにですが、共通性はターゲット設定のみならず、導きたい結論への誘導にも活用されます。

あめんぼぷらすの動画を例に挙げると

冒頭の松永さんの記事につなげると「マーケットイン」にも見えますし、ポパイのお二人の記事につなげると「プロダクトイン」にも見えます。

野球部出身・野球愛好者が多いことを狙って始めたのであれば「マーケットイン」

自分たちが野球が大好きで始めたのならば「プロダクトイン」ですね。

さて、どちらのでしょうか?

ではでは、もう1つ情報を加えてみます。

当チャンネルのブレーンであるおまつさんの高校時代の部活はテニス部

そう聞くと、マーケットイン、プロダクトイン、どちらに感じますでしょうか?

きっと、ある一方に皆さんの結論が集中していることかと思います。

はっきりと結論づけなくても、共通性を提示することで受け手が自ずと、導きたい答えに向かって想像する。

とはいえ、計算し過ぎると逆効果になりますので…、その辺を考慮していただきながら、今後の創作活動のヒントにぜひしていただけたらと思います😊


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