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心を掴む “飾らない” 企業たち

column vol.995

昨日は、インフルエンサーの尾石晴さんのお知恵を拝借しながら、「愛されるアカウント」づくりについてお話しさせていただきましたが

「ありのままの自分の価値」を探し、発信することをポイントの1つに挙げました。

そうした飾らない姿勢で情報を発信し、心を掴んでいる企業もあります。

本日はそうした企業にスポットを当て、好事例を共有させていただきます。

8分間に「本音」を詰め込む書店の挑戦

まず最初の事例は、横浜の老舗書店・有隣堂です。

同店では「有隣堂しか知らない世界」というYouTubeチャネルを運営しているのですが、基本的には「書籍を紹介しない」という点で話題になっています。

〈NEWSポストセブン / 2023年4月22日〉

2020年にチャンネルを開設して現在は登録者数が23万人(2023年4月現在)。

書籍を紹介しないという基本姿勢は、視聴者の多くは本好きではないという前提に立ち、職業作家の24時間ルーティンに密着したり、人気作家が即興で短篇小説をつくったり、製本工場に潜入したりする。

まずは本や有隣堂に興味を持つきっかけになるような誰でも楽しめる動画を制作しているとのこと。

そして、このチャンネルには有隣堂のスタッフさんが登場するのですが、建前ではなく「本音」を引き出す演出が施されています。

MCブッコローというパペット(キャラクター)が場を仕切るのですが、ちょこちょこ毒舌を吐きながらスタッフの人間性を引き出している

スタッフのありのままの姿を引き出すため収録には8分前後の動画に対して1時間もかけるそうです。

例えば、ブックカバーの達人である恵比寿店主任の大平雅代さんが出演する回でも、その技術の奥深さだけではなく、大平さんのキャラクター性が十二分に感じられる内容に。

〈YouTube / 有隣堂しか知らない世界〉

実際、台本もつくっていないそうで、MCブッコローとの掛け合いの中で面白さが生み出されています。

こうしたコンテンツづくりにより、有隣堂のスタッフさん目当てに訪れるお客さんもいるとのこと。

「ありのまま」をどう魅力的に見せていくのか。

その辺の工夫がとても学べるチャンネルですので、ぜひご覧くださいませ。

「美味しそうじゃない」でトレンドに

続いては少し前の話なのですが、老舗和菓子店・舟和本店の公式サイトについて、Twitterでバズったのはご存知でしょうか?

〈J-CASTニュース / 2023年3月25日〉

普通は商品のイメージカット(飲食の風景)を入れたりするのですが、同店のサイトでは、ただただ整然と並ぶ芋ようかんが真上から写されている

舟和本店の公式サイト

〈舟和本店の公式サイト〉

この様子に対して「美味しそうに見せる気ないんか〜い」Twitterで話題になったのです…

その反響はすさまじく3月20日「舟和の芋ようかん」がトレンド入りするまでに…

シンプル過ぎる商品紹介にTwitterユーザーからツッコミが入る一方、「味に絶対の自信があるんだろな」と勝手に推測する声も上がり出す…(笑)

舟和本店は1902年に創業し、芋ようかんを考案したことなどで知られるお店。

そうしたバックグラウンドから

「味に自信があるから見た目は無骨でも良いってことでしょうね」
「美味しい上でこの最低限過ぎる情報の感じ、めちゃくちゃセンスあって好きだわ」
「ホームページの写真がマズかろうと、舟和の芋ようかんは間違いなく美味しいのよ」

というポジティブな声が徐々に勢力を広げたのです。

いずれにせよ、発端のツイート3月24日までに4万300件を超えるリツイート15万100件を超える「いいね」が寄せられるほど大反響に。

同店としては狙ってやったわけではないですが、しかし「シンプル過ぎる」というツッコミに対しても

ご愛顧をくださるお客さまに箱の体積ぴったりの、より多くの量の芋ようかんをお届けしたいという弊社の考えもございますので、当面はこのままの形でやらせていただきたくお願いを申し上げます

ブレない姿勢を保ち続けています。

「実際の箱詰をありのまま表現すること」実直な気持ちを示し続ける老舗和菓子店の心意気。

それも根底にお客さんへの誠意があるならば、そのお店ならではのブランディングになるという好事例なのではないでしょうか。

お客さんの声でつくった「異例アニメ」

舟和本店ではTwitterにたくさんのユーザーの声が溢れましたが、ある企業ではこうした顧客の声をもとにつくったアニメがあります。

その企業とは森永乳業です。

〈J-CASTニュース / 2023年3月28日〉

まず、お時間がある方はこちらTwitterの動画をご覧くださいませ。

〈リプトン / 667通のラブレター〉※2分23秒

実はこのアニメ、昨年3月に終売したリプトンシリーズ「ミルクティー」の復活を伝える作品。

新たにリニューアル商品「ロイヤルミルクティー」が発売されていたのですが、ロイヤルではなく普通の「ミルクティー」に戻して欲しいという667件ものお客さんの声を受けて、リ・リニューアルしたのです。

今回のアニメは、その667件のご要望を「ラブレター」と同社が捉え、作品に散りばめたのでした。

台詞だけでなく主題歌の歌詞、映像内のイラストにも問い合わせ文言を入れられており、それが違和感なく表現している。

そして

リプトン、ミルクティー。愛された味に戻って「旧発売」

というメッセージでストーリーが締め括られています。

公開後はSNSを中心に大きな反響があり、特設サイトへのアクセス数は公開から3日で1万回超え…!

公式Twitterアカウントで3月20日に投稿されると、動画再生数も27日19時までに231万1000回を超える大きな反響に。

お客さんの「ありのままの声」を形にしたことで、ファンの心をさらに鷲掴みしたのでしょう。

最近では「企業も人格が求められる時代」と言われていますが、企業とはそこに務めている社員の総和

飾らない人が愛されるように、企業も飾らない姿が愛される秘訣なのかもしれませんね。

「ありのまま」でも魅力的に見える。

簡単ではないですが、追求せねばと思う本日の事例記事たちでした😊


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