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「不満」を「味方」に変えるヒント

column vol.1192

リーダーシップを発揮するにあたって、メンバーからの「不満」に対峙しないといけない場合があります。

それはまぁ…大変なことなのですが…、一方でそのエネルギーを味方にすれば「心強い力」に変わるわけです。

最近、その好事例に出会えましたので、共有させていただきます。

それはまちづくりにおいて、住民のクレームを上手に取り入れたという話。

舞台は東京・世田谷区にある国家公務員宿舎跡地

本日はこちらの事例を皮切りに、不満を味方に変えるヒントを探りたいと思います。


クレーマーから「プレイヤー」へ

国家公務員宿舎跡地は、東京23区で唯一の自然渓谷・等々力渓谷玉川野毛町公園の間にある約3ヘクタールの土地

新しい公園として活用していこうと計画され、完成すれば多くの人々が集まる楽しい場となるわけです。

一方、

静穏な暮らしが侵されないか

抵抗感を抱く近隣住民の方もいる。

実際、騒音などへの不安を訴えた方もいらっしゃったそうです。

〈東京新聞 / 2024年1月9日〉

普通はこうしたクレームの声を避けるため

「まだ決まっていないので計画の詳細を公表できない」
「決定後は計画を変えられない」

住民の声をいなし、進めていってしまうことが多い…

一方、世田谷区では、そんな「行政の常識」と対極的な、住民主導の公園づくりを実践しているとのこと。

2018年6月以降、延べ1万5316人の住民計173日間にわたって、跡地を散策したり対話を重ねたりして、公園の未来を描いたのです。

フットサル場大型レストランなど、よくある意見も出たものの、さまざまな対話の機会現地見学会などで区と住民が対話を重ねた結果、

大きな建物を造るのではなく、原っぱで寝転がりたい

といった意見に収斂されていったとのこと。

なぜなら、この土地には、イチョウやケヤキなど多くの木が茂っており、豊かな自然を、このまま残したいと皆が思ったからです。

こうして、不安だった近隣住民にとっても楽しみな公園に。

一人の住民の方が

「私の脳もクレーマーから、『どうせ公園ができるなら良い場所にしよう』というプレーヤーに変化していった気がする」

東京新聞の中で語っているように、さまざまな声を集めたことで、区は多くの住民を味方に付けられたそうです。

「考え」を道具として捉える

…とはいえ、クレームを受け止めるというのは、簡単なことではありません

会社で考えてみてもそうです。

リーダーはメンバーの厳しい意見を聞くことも大切ですが、言われたら…それはそれは堪えるわけです…(汗)

そんな中、興味深い考え方があります。

それは、哲学者デューイ「道具主義」という考え方です。

〈PRESIDENT Online / 2024年1月6日〉

知識思想論理

現実の社会生活の中でぶつかった問題を解決するための手段

つまり道具であると考えます。

知識を絶対のものとは考えずに、「検証されうる仮説」であると捉えるわけです。

つまり知識や思想の価値は、その場その場で発生する問題を解決できるかどうかの検証で決まる

例えば、問題が発生した時、リーダーAという解決策を考えたところ、メンバーから「Bの方が良いのでは?」と意見されたとします。

この時、リーダーがAB「道具」と見ることができれば、どちらも平等に捉えることができるというわけです。

例えば、何かを切ろうとカッターを使っている時、他の人から「ハサミの方が切りやすいのではないですか?」と言われてカチンと来る人は少ないでしょう。

この場合、カッターハサミ比較しているに過ぎないからです。

一方、アイデア(解決策)となると自分の中から生み出しているので、分身のように可愛くなってしまいます。

それゆえ、「アイデア=自分」と捉えられ、アイデアが否定されると「自分が否定された気分」になってしまうわけです…

リーダーの役割を考える

アイデアを生業にしているクリエイティブ会社は、アイデア会議の際はなるべく “人”(誰の発案か)と  “アイデア” を引き離します

例えば、アイデアカードポストイットを使ってアイデアを無記名で並べ、フラットに見えるようにする。

…とはいえ、それでも自分が出したアイデアには愛が残ります

そこで、クリエイティブ会社ではディレクターがジャッジして決めるわけです。

(その分、ディレクターは恨まれたりもするわけですが…笑)

リーダーの役割はまさにこのディレクターなわけで、一番のミッションは「最適解を選ぶこと」

「目的を達成できる案」優先することが肝要です。

しかし、リーダーはプレイヤーであることも多く、ついついメンバーに勝とうとしてしまいます。

メンバーよりも良いアイデアを出すことが仕事ではなく、最適解を選ぶことが仕事

それが優れたリーダーの条件なのです。

クレームも1つのアイデアです。

もちろんアイデアといえど、怒りがコーティングされているので、言われれば、カチンとくるか、ヘコむわけです…

しかし、これもいかに道具に変えていくかが大切になります。

クレームも「道具」に転換する

例えば、公園で言えば「フットサル場をつくろう」と発案したのに

「騒音が出るなんて、けしからん!」

と言われれば、ついつい「けしからん!」反応してしまい

そんな考えを出した私が「けしからん!」

変換しがちになってしまいます。

しかし、一旦ここは冷静になって

けしからん=騒音

と捉え直すことが重要です。

そして

騒音の出ない公園=アイデアの種

と転換し、次に一番魅力的な「静かな公園」を考えていく。

そこで生まれたアイデアを「道具」と捉え直していくという流れです。

上手に客観視し、転換ができると、クレームも貴重な財産に変わるでしょう。

クレーム → アイデア → 道具

言うは易く〜ではあり…、なかなか冷静にはなりませんが…

メンバーの力を最大限に引き出せる求心力のリーダーとは、そういう人であると常々痛感しています…

…やはり、リーダーとは人間修行が大事ですね…😅

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