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「パーパス」を浸透させるために

column vol.981

最近、「パーパス(企業の存在意義)が大事」という言葉は耳にタコができるほど聞かされていると思いますが、ちょっと興味深い記事に出会ったので共有させていただきます。

何と20代の優秀なエンジニアGAFAではなく「Airbnb」を就職先に選ぶ人が増えているそうなのです。

〈幻冬舎 GOLD ONLINE / 2023年4月10日〉

条件だけではGoogleなどのビッグテック企業に勝つことは難しい

しかし、「旅が好きで、旅が自分のライフスタイルになっている優秀なエンジニア」にとっては、「入社すれば、どこにでも働く場所がある」というのは大いなる魅力になるはずです。

実際、そうした人たちにパーソナライズドした採用マーケティングを仕掛けることで、条件では劣るGAFAに太刀打ちできているとのこと。

こういうニュースを聞くと「やはり、パーパスって大事」と再認識しますね。

一方、パーパスを掲げたとしても浸透することって難しい…と感じる経営幹部は多いのではないでしょうか?

そこで、参考になるのがTHE21【有名企業が掲げる“パーパス経営”に消極的な社員を変えたマネジャーの一言】という記事です。

〈THE21 / 2023年2月15日〉

一橋大学ビジネススクール客員教授の名和高司さんの知恵をお借りしたいと思います。

「キレイごと」を話そう

会社の存在意義を明確化したとしても、組織で働く人たちは社内の全部の仕事にタッチしているわけではありません

大企業ほど、分業されているわけです。

例えば、「自社製品で地球環境を改善する」というパーパスがあったとして、経理の人からすると、どうしても自分事にはなりづらい

そこで、名和さんは味の素川崎工場での取り組みを例に挙げて説明されています。

同社のパーパスは「食と健康の課題解決」

名和さんが工場内の物流を担う方々に行ったパーパスを浸透させるためのワークショップでも、最初はメンバーの皆さんピンと来なかったそうです。

それもそのはず、この部門が担当していたのは工場内での原材料の運搬作業であり、商品そのものを運ぶわけでもなければ、顧客の顔を直接見ることもない仕事。

当然、パーパスと自分の仕事を結びつけるのは難しいでしょう…

しかし、とある社員の一言で場の空気が変わります。

我々は命の素をA地点からB地点へ運んでいる。我々が運ばないと最終的にお客さんのもとに届かない。これは駅伝のようなもので、我々はその重要な一区間を任されている。そう考えればとても重要な仕事ではないか?

確かに!

この言葉により、この部署の社員は自分たちが果たす使命が明確になったわけです。

このパーパス浸透ワークショップでは、自分たちのコアバリュー(核となる強さ)をまず軸に置き、「顧客・顧客の顧客にとって」「社員にとって」「社会(コミュニティ)、地球(未来のこどもたち)にとって」という3つのテーマに沿って考えていきます。

その際には、あらゆる制約を取り払って本当にやりたいこと・なりたい姿を考える必要があるとのこと。

また、その上で「キレイごと」を言ってもらうことも重要なのです。

マイパーパスの見つけた

ビジネスにおいてキレイごとは敬遠されがちですが、人生においてときめく瞬間って実はキレイごとが着火点だったりすることが多い。

偉人のサクセスストーリーも、感動の映画作品美しくまとめるからこそときめくわけです。

ただでさえ、痺れるような現実を目の当たりにするのがビジネスなので、私は時に理想を語ることって重要だと思っています。

それは社員個人にとってのマイパーパスでも言えると思っています。

時に自分の理想をキレイごとで言ってみる

それで今の仕事にときめけば、モチベーションも上がるわけです。

そして、会社の理想と自分の理想を重ねていく

それができたら、とても前向きに仕事ができるはずです。

名和さんは、損保大手の損害保険ジャパンなどを傘下に置くSOMPOホールディングス「パーパスワンオンワン」について触れています。

SOMPOホールディングスといえば、社員の99.2%「MYパーパスを持ちたい」と思っている企業として注目を集めました。

〈alterna / 2023年3月22日〉

そんな同グループで使われているのが、マイパーパスに導く3つの項目です。

WANT(心が動く瞬間)
CAN(運命が与えた能力)
MUST(解決すべき社会課題)

この3つの項目の重なったところが自分のパーパスになるわけです。

ワンオンワンを行っている企業は多いですが、パーパスのみで行っている企業は珍しい。

それほど、マイパーパスを重要視している姿勢が伺えますね。

会社のパーパスと個人のパーパスを重ねる

しかも、同グループの櫻田謙悟社長の徹底ぶりは半端ありません。

櫻田社長は社員に対して

「自分の目的のためにSOMPOホールディングスというブランドを思いっきり使い倒してほしい」
「逆に言えば、SOMPOホールディングスに使われてはダメだ」

と語っていらっしゃいます。

ただ、マイパーパスのために会社を使い倒すには、それだけ自社のパーパスを理解していないとできないはず。

結局のところ、櫻田社長のように考えることで、社員が自ずと会社のパーパスをより理解し、マイパーパスの接点をつくるようになる。

会社と自分それぞれのパーパスを自律的に結びつけるほど、経営者の理想はありません。

櫻田社長は良い意味で下手に出つつ、一番企業にとって良い形につなげていらっしゃると思います。

こうしたさまざまな知恵は、私も会社経営をする上で非常に参考になります。

当社の経営理念は「生活者を主人公にした社会の実現」

その使命は「社会・企業の課題解決をデザインすること」にあります。

こういった考えをより浸透していくことが、会社の求心力になりますし、社員それぞれのマイパーパスに発掘して、つなげていくことで、皆の働きがいを高めていくことになると思っています。

ちなみに、名和さんの記事はGoogleでも活用されている「GROWモデル」など、他にも非常に参考になるメソッドを紹介しておりますので、ぜひご覧いただけると幸いです。

本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

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