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「圧倒的な当事者意識」のつくり方

column vol.919

多くの経営者が社員に「当事者意識」を持って欲しいと思っているはずですが、なかなかそうならないのが現実です…

もちろん、当事者意識を育むさまざまなハウツーが世の中には溢れておりますが、逆に言えば、そんなに簡単には解決できないからこそ、本や記事がたくさん生まれているのかもしれません。

そして、経営者が直視しないといけないのが、変われないのは社員側の問題ではなく、経営者側の問題が大きい……(汗)

それは、自分の副社長としての経験がそう思わせますし…

最近出会った幻冬舎ゴールドオンラインの記事を読んでいてもそう思います。

〈幻冬舎 GOLD ONLINE / 2023年2月6日〉

こちらは、最先端のレーザーを輸入・販売する商社「日本レーザー」近藤宣之会長のお話。

近藤会長といえば、自分が社長として引き継いだ時は債務超過状態であったのにも関わらず、1年で黒字化

その後、28年連続の黒字経営を達成した方です。

記事を通して、素晴らしい成果を上げられた裏に「熱き社員への想い」を感じることができました。

「人員削減をしないこと」を誓って黒字へ

近藤会長は、親会社の日本電子労働組合の委員長をしていた時、大規模なリストラに直面

数百人と面接しつつも、労組委員長として大規模な人員削減を食い止めることはできませんでした。

その後、アメリカに赴任し、今度は自らが幹部としてリストラをすることになります。

何と…米ニュージャージーの支店では現地社員を全員解雇されています。

人員削減をする苦しみや悲しみを散々味わった結果、帰国後、子会社の日本レーザーの社長に就任した時、人員整理は一切しないと決意したのです。

人員削減をしてきた近藤会長は、人員削減をしない経営者になると誓ったわけです。

人こそ全て

そう痛感した近藤会長はこのようなお考えを持っていらっしゃいます。

自分の会社や自分が所属するチームや上司に共感を覚えない、あるいは自分がつくる製品や自分が提供するサービスに確信を持てなくて、どうしてお客さんに喜んでもらえるのか。そこがないから偽造問題が起こったり、クレーム隠しが起こったりする。まず、社員自身が確信を持って満足して働いているという状態になって初めてお客さんを喜ばせることができる。これがグローバルスタンダードになると思います。

では、いかに近藤会長は社員が主役の会社をつくり上げていったのでしょうか?

モノサシを1本にしない

年功序列制度はダメ。多様な評価が必要なので社員の数だけ雇用契約がある。

近藤さんは人事評価について、使うモノサシを1本にせず、社員の数だけモノサシを用意しているそうです。

女性管理職はすでに3割

国籍、学歴に関係なく処遇。

60歳の定年後も再雇用制度で、20年前から希望者は65歳以上まで働くことができるようにしています。

能力もあって健康で意欲もある人たちを年齢だけで切るというのは非常にもったいない

実際、同社では65歳を超えても、会社が必要とするシニア社員は70歳まで再々雇用制度で働いています。

現在、70歳以上の社員も4人いらっしゃるそうですが、皆さん、健康が許せば80歳まで現役として働きたいと仰っているとのこと。

社員が多ければ多いほど、ルールは一元化したいのが経営者の心理。

その方が楽だからです。

モノサシの数を増やしてしまえば、その分、各社員の納得値をつくり出すことに膨大な労力が必要となります。

しかし、そこに怯まず社員一人一人に向き合って、さまざまな雇用契約を生み出していく。

近藤さんの経営者としての覚悟をヒシヒシと感じてしまいます…

MEBOにより「私の会社」であることを浸透

とはいえ、人事だけではなく経営全てにおいて、単に社員個別のニーズを汲んでいくというだけでは難しいでしょう。

社員が自分のためだけに物事を考えていてはバラバラになるだけです。

重要なのは「仲間のために」という思いが前提にあってこそ。

その上で個性を発揮してもらわないといけません。

よく「経営者の視点に立って」という言葉を聞きますが、なかなかそれは難しい…

私も副社長になって感じたこと、学んだことはとても多いと思っています。

であれば、社員みんなを「経営者の立場」に立たせてしまう方が実感してもらえるわけです。

そこで、近藤さんはMEBO(Management Employee Buyout)を採用し、社員全員が株主になるような仕組みをつくっています。

(ちなみに、親会社から株式を買い取って独立しています)

会社の経営陣と従業員が一緒になって、企業の経営権を掌握する。

MEBOに参加した社員は、積極的に経営戦略に関わっていくことになるので、「私の会社」という思いが芽生えやすい。

実際、経営の自由度が高まり社員のモチベーションが上がったそうです。

社員の方々からは

どんな立場の人でもいろんな意見が言えるし、それを聞いてもらえる

という実感があるそうで、MEBOにまで踏み込んで自分ごと化してもらう近藤会長の判断を見れば、「我が社のトップは会社を自分のものにせず、みんなのものにしようとしている」と思う人も増えるでしょう。

私の妻が勤めている会社も「メンバー」と呼ばれる社員は全員株を持っており、社員の自分ごと化は非常に強いと聞きます。

一方で、社長は全て民主主義的に決めていかなければなりません

そこで、理想を貫ける人と、単なるポピュリズムに陥ってしまう人の差があるそうで、制度を上手く活用できるか否かも、結局はトップの覚悟と熱意次第であると言えるでしょう。

絶対に他責にしない

そうなのです。

いくら素晴らしいハウツーや制度があっても、それを活かせるか否かは自分の心次第……

根本に社員を想う熱意と覚悟がないと成り立たないと感じます。

そのことを特に感じるのが、近藤会長の次の一言です。

経営の環境がどうあったって絶対に他責にしない

…こんなお言葉を聞いてしまうと…、同じ経営を司る人間としては、自分ごと化できない社員がいるということは、自分に問題があるのだなと思わざるを得ません…

そして、近藤さんは28年連続の黒字経営の本質をこのように仰っています。

圧倒的な当事者意識。健全な危機意識。共に生きていく仲間意識。この3つの意識を持った社員を抱えた企業は絶対につぶれませんね。発展します

このことを肝に銘じて、日々精進したいと思います……!(汗)

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