「想像力」は人生を楽しみに変える
column vol.1102
この問いに劇作家・演出家の鴻上尚史さんは、「それは分からない」と素直に答えながらも、「人間とは何か?」ということに対する追究は必要でしょう、と語っていらっしゃいます。
〈AERA.dot / 2023年8月22日〉
では早速、「人間ならでは」を考えていきたいのですが、さまざまな賢者から集まってくる共通項として「想像力」が挙げられます。
確かに「創造力」については、生成AIの台頭によって代替されていく可能性をヒシヒシと感じますが…、あれやこれやと想像するということは人間ならではなのかもしれません。
「プロセス」を楽しめるのが人間
一橋大学大学院国際企業戦略研究家(ICS)教授の楠木建さんは、週刊現代の記事の中で
と指摘していらっしゃいます。
〈週刊現代 / 2023年8月16日〉
センスとは「プロセスを楽しむ能力」と楠木さんは定義しております。
例えば、洋服を選ぶという行為。
ファッションが好きな人からすれば、その日の予定や、気分に合わせて服を決めるというのは喜びです。
旅好きな人は「あれやこれや」行きたい場所や食べたいグルメを想像するのが楽しいでしょうし、ミステリー好きの人は犯人を推理しながらワクワクしながら読み進めていくでしょう。
この喜びは、人間ならではですし、それを共感し合えるというのも幸福の1つの形と言えます。
自分のこだわり、好きなことであれば、たとえ他の人が面倒だと思う過程であっても、プロセスそのものが楽しい。
人間ならではの良質でオリジナリティのある営みが、ここにあるというわけです。
仕事においても、「HOW」(どうやるのか)はAIが代替してくれます。
人間が担うべきは「WHAT」と「WHY」(なにをなぜするのか)ということになります。
これこそ、その人のセンスが問われるというわけですね。
「タテ」と「ヨコ」の想像力を発揮する
ジャーナリストの池上彰さんも「想像力」の持つ価値について現代ビジネスで語っていらっしゃいます。
〈現代ビジネス / 2023年8月23日〉
それは、AIが優秀な「クールヘッド」なら、人間の強みこそが「ウォームハート」であり、その根底には「想像力」があるということです。
そして、想像の糸を「タテ」と「ヨコ」に伸ばしていく。
「タテ」は時間軸。
過去の歴史に思いを巡らせ、そこで得られた知見を活かして未来を想像する。
そして、「ヨコ」は空間軸。
同じ時代を生きる人々に対して国境を超えて想像していく。
例えば、難民についてです。
池上さんは難民キャンプを取材した際、支援だけではなく「自立」が必要であると痛感したとのこと。
キャンプに2回目の取材で訪れると、以前は支援を受けていただけの難民たちが露店を出したりと自活していたそうです。
人は支援を受け続けるだけでは心が満たされず、自分の足で立って、自分の手で稼いでいるという実感が欠かせないということを池上さんは2回の取材で学んだそうです。
こうして、自分の日常における対岸の世界に意識を向けられるのも人間ですし、そこから得られるものもある。
私はこの「自活欲」がある限り、AIがどれほど発展しようと、人間は人間ならではの仕事、自分ならではの役割を追究していけるのではないかと希望を持ったからです。
これから評価されるのは「のび太」型?
最後はお医者さんの知見をお借りして締め括りたいと思います。
『前頭葉バカ社会』の著者で、精神科医・臨床心理士の和田秀樹さんは、これからの社会は「のび太」型人財が活躍すると仰っています…(汗)
〈PRESIDENT Online / 2023年9月4日〉
…なるほど、確かにそう側面もありますね…
先ほどの楠木さんの話ではないですが、「How」はAIが今後どんどん担っていくことが想像されます。
一方で、のび太くんのように「こんなこといいな できたらいいな あんなゆめ こんなゆめ いっぱいあるけど〜」と、願望を持つのは人間ならではです。
自分を軸に、自分の周りにいる人たちも含め「こんなこといいな」を想像しまくる。
池上さんの「想像力が世界を救う」という言葉のように、その想像する輪が広ければ広いほど、世界に幸福をもたらせる人になれるというわけです。
そうなると、和田先生が『前頭葉バカ社会』で指摘されているように、前頭葉を磨くことが重要になってくるでしょう。
前頭葉は脳の中でも「好奇心」「やる気」「自発性」が湧き出る部位だからです。
今後、人は世界を救うための「想像力」を磨くため、さまさまな経験、対話(交流)、学習(教養)に時間を割いていくが望ましいでしょう。
今までは形にするための実行部隊も人間だったので、スキルやノウハウを身につける時間が大幅に必要でしたが、その部分はAIにお任せできれば、時間の使い方も随分変わっていくと思うのです。
学校の学習も変わるかもしれません。
今は知識獲得に偏重が見られますが、今後は1〜2時限目は「探検」、5時限目は「ディベート」みたいな学校も増えていくような気がします。
きっと、アートや音楽などの比重も大きくなるでしょう。
そうして、「想像力」を育む社会、活かせる社会になっていくことが想像できます。
こんな風に未来を明るく想像するのも、プロセスとして楽しいのではないでしょうか?
個人的には「想像を楽しむ」ということを改めて大切にしたいと思いました😊
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?