今時の高校生は「スマホ・リッチ」
column vol.926
最近、私の妻が友人と会った時の話。
友人の旦那さんがアメリカ出張に行った際、高校1年生の娘さんとの強烈なジェネレーションギャップを感じたそうです。
出張続きだった旦那さんが、家族にご奉仕しようと空港から「お土産、何でも買ってあげるよ」と電話をしたら、娘さんが「じゃあ、ロエベの〜」とアイテムの “品番” まで言ってきたそうなのです…(汗)
夫婦揃って、高校1年生の娘からハイブランドの品番までスラスラ出てきたことに驚愕したらしいのですが…、ちょうどこの話にドンピシャの記事があったので併せて共有させていただきます。
それは、マネーポストWEBの【スタバで勉強、手にはブランド品… 今の高校生が「お金を持っている」ように見えるワケ】という記事です。
〈マネーポストWEB / 2023年2月10日〉
確かに言われてみると、街を見渡すとスタバで友人と過ごす高校生はもちろんのこと、ハイブランドを身につけた子もいるような気がします。
今時の高校生の金銭事情は一体どうなっているのでしょうか?
今時の高校生な金銭事情はいかに?
我々が高校生の頃(30年前)を思い浮かべると、なかなかお金持ちの子でもハイブランドをさらっと着こなす人はいなかったような気がします。
もしも身につけていたら、逆にいじられちゃっていたと思うのです…
じゃあ、世の中全体で高校生がリッチになっているかというと、そうは思えません。
なぜなら日本は失われた30年を過ごしてきたからです…(涙)
実際、金融中央広報員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和4年)」によると、2022年の高校生のお小遣いは6630円で、高校生のお小遣いは1990年代以降、ほぼ5000~6000円台で推移しています。
つまり、リッチになっているわけではない。
しかし、マネーポストWEBの記事を読み進めていくとなるほど納得いたします。
お金を使わなくなった高校生たち
高校生がハイブランドを身につける原因、それは「スマホ」にあると言います。
スマホがあればタダで楽しめるものが多くなるからです。
エンタメもそうで、その代表選手がYouTubeやInstagramでしょう。
それに、サブスクサービスを家庭で利用していたら、親のお金でそれも利用できるわけです。
一方我々の時代は、CDや雑誌、マンガなどなど、さまざまなことにお金がかかっていました。
それに、我々と違い、今の親子は「友達親子」と言われるほど仲が良い(個人差はあると思いますが…)
趣味も共通点が多くなっています。
例えば、我々の子どもの頃は少年誌を読んでいる大人は少なかったですが、今の時代、ワンピースを読んでいる中高年がいても普通なこととして受け止められます。
最近でいえば「スラムダンク」の映画化もそうでしょう。
かつて少年ジャンプで連載していた作品を私と同じ世代の同僚が話題に出し、盛り上がっています。
そう考えると、昔に比べると世代感のギャップを少なくなっている。
親の財力で友達同士のように楽しむことができ、そのことによって高校生の支出は減るわけです。
そんなマネーポストWEBの指摘になるほど納得させられました。
スマホで情報リッチな高校生たち
いや、「スタバは良いとしてハイブランドは買えんだろ」と思ってしまいますが、もう1つ我々世代にない現代高校生の魔法の杖があります。
それがメルカリです。
ハイブランドとしては面白くない存在だと思いますが…、正規の値段ではなく手に入れられることができるので、この差は大きいわけです。
他にもスマホには大きな利点があります。
それは情報リッチになれるということです。
我々の時代はファッション誌でしか情報収集する手段がありませんし、有料なので部活の仲間と回し読みしたことを思い出します。
一方で今の子たちは、タダの情報が溢れていますし、Instagramなどで大人と同じように情報収集できるわけです。
冒頭の高校1年生の女の子もバイトはしていないからお金はないのですが、スマホのおかげで情報はリッチに持っている。
それに加え、周りの友達がちょこちょこハイブランドを持ち始めたことで、親の脛をかじる機会を虎視眈々と狙っていたわけです(笑)
キーワードは「興味格差」
スマホのおかげで自分のかけたいものにお金を集中的に使え、リッチに情報を得ることができるようになった高校生たち。
この「スマホ・リッチ」な状態は、考えてみると現代の生活者そのものなのではないでしょうか。
スマホにより、使うところにお金がかけられ、得たい分野の情報収集に集中できる。
ここで重要なキーワードとなるのが「興味格差」です。
現代の生活者は興味のあるものに消費と情報収集を集中できるのです。
例えば音楽でいえば、興味がある人は旅行までして欲しいものを手に入れます。
最近、日本のシティポップが世界で大流行していますが、コロナによる行動制限が薄くなった今、世界中から70〜80年代のレコードを買い求めて人がやってきます。
わざわざ1枚のレコードを求めて日本の中古レコードショップを調べ、来たいと思うわけです。
一方、音楽にそこまで興味がない人はスポティファイなどの無料プランで楽しんでいる。
同じ音楽でも旅費までかける人とタダで楽しもうとする人がいるというのが興味格差です。
こうなってくると、まずはカテゴリー競合を意識したいところです。
例えば私の友人の1人は、以前はファッションにお金をかけていたのですが、推しのアイドルと出会ってからは、ファッションはリセールやファストファッションで支出を抑え、その分、消費を推し活に集中させるようになりました。
この場合、ファッションとアイドルは消費のライバル関係になるわけです。
友人は未だファッションに興味は持っていますが、それ以上に興味あるアイドルにお金を集中投下しているのです。
他にもお酒vs車など、分野ごとの競合は至る所で見られるでしょう。
分散消費から「集中消費」へ
昔はさまざまな分野に満遍なくお金を使う「分散消費」でしたが、今は「かけるものにはかけ、かけないものにはかけない」ことができるようになったので、興味あるものにお金を集中投下する「集中消費」に様変わりしています。
アイドル、スポーツ(筋トレ)、グルメなどなど、まずは分野ごとに選ばれる必要があるので、それぞれの分野での協力関係も意識していかなければ、テリトリーはシュリンクしていってしまいます。
まずはカテゴリーとして選ばれて、その中で競争をしていく。
この辺の感覚がこの時代の消費活動の重要な視点になるかと思います。
高校生の消費の変容は、長いターム(今回で言えば30年前)で見ることによって、その変化を感じることができました。
でも意外と、小売の現場を見ても、店頭に並んでいる商品は30年前と比べてそんなに変わっていなかったりします。
それはどの分野でも同じことが言えるのかもしれず、改めて今回の事例が変化の大きさを再確認するきっかけになりました。
そんなところを踏まえながら、今後もマーケティング活動を続けていきたいと思います。
ちなみに、高校1年生の娘さんは狙い通り、お父さんから欲しいアイテムをゲットできたそうです。
お母さんは、ちょっとお冠ではありますが……(汗)
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