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「ドラッグストア」戦国時代

column vol.1049

「マツキヨ(マツモトキヨシ)」が初めてアパレルに進出

90周年を記念して、「パトリック」「ニューエラ」「インフォ ビューティ&ユース」「サーモマグ」の4ブランドとコラボレーションし、6月30日に一部のマツモトキヨシ店舗と公式オンラインストアで発売しました。

〈FASHIONSNAP.COM / 2023年6月28日〉

「マツキヨ」と聞くと私は10代の頃を思い出します。

圧倒的なCM攻勢で認知度を上げ、90年代に台頭。

かつては業界トップに君臨していました。

しかし、今は1位はウエルシア

2位がツルハと続いています。

マツキヨはココカラファインと経営統合して3位の位置から再びトップの座に返り咲こうとしています。

一昨年に統合してから今の現在地はどのようになっているのでしょうか?

トップ企業の動きも含めてお話しさせていただきます。

「繁華街」の利点を活かすマツキヨココカラ

5月に発表されたマツキヨココカラとしての通年業績(2023年3月期)を見ると、売上規模では3位レベルながら、実質的な業界トップを奪還したと言われています。

〈東洋経済オンライン / 2023年7月2日〉

上位2社に比べてもマツキヨココカラの売上高経常利益率は他社と比べてかなり高いからです。

東洋経済オンライン

これは、医薬品、化粧品を主力商品としているドラッグストアとして「正統派」だから、というのが背景であるのです。

商品別の粗利率を見ると、医薬品、化粧品の粗利率が高く食品の粗利率は低いという状況。

この粗利率は同業他社も同じですが、マツキヨココカラは医薬品、化粧品の売り上げでは業界のトップシェアを誇っています。

これはマツキヨココカラが大都市の駅前や繁華街に出店していることが大きいのです。

なぜなら、粗利率の低い食品を置くのは客寄せパンダ的な戦略だからです。

例えば、郊外のロードサイド店ならば、車での移動が前提なので、コスメのためにちょっと寄ろうという動機が生まれにくい

そこで、より高頻度でお買い物する食品で店舗に誘引するのです。

一方、人通りの多い駅前や繁華街ならば、その分、食品目当てのお客さんを抑えられるというわけです。

大都市メリットを武器に再び攻勢に出ようとするマツキヨココカラの今後の動きにますます注目ですね。

「食品」で全国制覇を目指すコスモス薬品

一方、粗利率の食品を軸に勢力を拡大しているのが4位の「コスモス薬品」です。

「フード&ドラッグ」というスタイルを確立したのも同社と言えるでしょう。

実際、食品売上比率は6割程度だそうですよ。

このため、この業界では当たり前のM&Aをせずとも、自前出店だけで業界4位まで成長したのです。

そしてこのコスモス薬品こそ業界の台風の目と評されており、出店力、成長力で競合他社を圧倒

九州から発祥して、中四国、近畿、中部と物流網を整えながらドミナント(優勢)をひたすらに東に広げていく同社は、一度上陸するとそのエリアシェアを確実に増やし続けてきたのです。

お客さんに対しては安売り食品で惹きつけ、バックヤードではチェーンストア理論の教科書のような効率性を図る。

その結晶とも呼べる損益分岐点の低さから快進撃を続けているのです。

ちなみに、地方勢力の雄といえば北海道、東北に本拠地を持つ2位のツルハでしょう。

コスモス薬品との直接対決も最終局面まで待てますし、その間にハーティーウォンツ、レディ、杏林堂など西の同盟社を支援することで対抗できます。

そして、コスモス薬品対策といえば、業界1位のウェルシアの動きにも注目が集まっています。

同社がグループのスーパー運営企業イオン九州と組んで、スーパー並みの生鮮、総菜を含めたフード&ドラッグを九州に投入し、今後大量出店していくことを公表。

この目的は、コスモス薬品の本拠地である九州エリアにおいて、同社にはない生鮮、惣菜の品揃えを持ったフード&ドラッグをぶつけることで、収益基盤である九州を切り崩すことを狙ったもの。

この新業態の成否コスモス薬品にとって将来を大きく左右する一手かもしれません。

今後の展開に目が離せません。

業界1位のウェルシアの戦略

ウェルシアとしては3位のマツキヨココカラ対策として、大都市部へは可能な限り出店し、さらにはM&Aによって店舗網を強化しながら、地方におけるシェアアップで激しい競争を展開していくという戦略をとらざるを得ない状況です。

そのM&Aを図る上で重要な旗印となるのが、ASEANナンバーワン目指すという目標です。

〈DIAMOND Chain Store / 2023年4月11日〉

同社は2030年に売上高3兆円の達成を掲げた長期目標を明らかにしています。

30年のありたい姿を「地域No.1の健康ステーション」と定義し、未病・予防・治療・介護のプロとして信頼される存在を目指しているのです。

そして、東南アジアでの出店を積極的に進め、ASEAN地域でナンバーワンとなる目標も示しています。

これに合わせて、26年2月期を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画も発表。

23年2月期に1兆1442億円だった連結売上高は1兆5000億円、4.6%だった経常利益率は5.0%に引き上げる予定です。

そして、新たな中期経営計画における重点的な取り組みとして

「既存事業の進化と深化」
「M&Aの推進とグループシナジーの追求」
「デジタル化への対応」
「海外事業の拡大」
「組織・経営管理の高度化」

の5つを挙げています。

海外では、23年2月期末時点でシンガポールに12店を展開していますが、マレーシアやベトナム、インドネシアにも進出

日本からの直輸入品の取り扱いを強化した日本版ドラッグストアを拡大していっています。

大きな目標を立てながら内部のモチベーションと結束力を促していく

M&Aを主な戦略とするウェルシアならではの考え方ですね。

ちなみに「地域No.1の健康ステーション」と打ち出すのはウェルシアらしいと思います。

元々、同社は地域貢献に対して意欲的です。

過疎地などの「買い物弱者」の解消に力を入れおり、移動販売車を派遣することで暮らしに必要な品々を自宅近くで買えるようにしてあげています。

さらには、何か欲しいものを「ご用聞き」して、次の時に持っていく。

病院へいけない高齢者を、市街地の医療機関につなぐ。

業界1位の挑戦は留まることを知りません。

とうことで、業界上位の企業のさまざまな取り組みを見ていただきましたが、いかがだったでしょうか?

コスメ業界は今後非常に流動的になることは必至です。

この後、どのように覇権争いを各社演じていくのでしょうか?

非常に興味深い業界であることは間違いないでしょう。


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