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「右に倣うな」

column vol.1158

昨夜、BSテレ東『日経ニュース プラス9』を観ていたら、noteプロデューサーの徳力基彦さんが出演されていました。

〈徳力基彦さん / noteアカウント〉

〈BSテレ東 / 日経ニュース プラス9〉

AI時代の到来により、さまざまな仕事が代替されるかもしれないという不安が押し寄せる今日

そうした新しい社会を生きるためのヒントを徳力さんがアドバイスするというコーナーだったのですが

番組では伊藤園が手がけた日本初のAIモデル広告の事例が紹介されるなど、AIの進化についての驚異が語られていました。

伊藤園

私が専門とする小売業でも、パルコクリスマスビジュアルAIモデルを起用しましたが、世の中に大きなインパクトを与えたと思います。

PARCO / 「HAPPY HOLIDAYSキャンペーン」

番組のコーナーを進行するタレントのトラウデン直美さんも、「私たちの職業がなくなるかもしれませんね…」AIの脅威について語っていらっしゃいましたが、徳力さんはその言葉を受けて次のように仰っていました。


「普通のレベルの仕事はなくなる。でも…」

「確かに、誰か分からないモデル(無名のモデル)の仕事はなくなるかもしれません。しかし、ファンの多いモデル、タレントは違う。ファンに望まれてCMに出演していますので」

徳力さんの言葉を正確には再現できてはいないかもしれませんが、普通のレベル(誰でも行えるレベル)の仕事はなくなるが、一方で唯一無二の個性や、職人技は残るというお考えでした。

確かに、これまでもテクノロジーの進化・変化により、失われた仕事はたくさんあったわけで、仕事を奪うのはAIに限ったことではありません

いつの時代も、人間の持つ独自性や熱意などは、掛け替えのない価値として必要とされてきました。

そして、このお話を聞いて、堀江貴文さんの次の言葉を思い出しました。

どれだけ技術が進歩しても人間の創造性がなくなるわけではない。

〈東洋経済オンライン / 2023年11月9日〉

「独自性のある創造性」といった方が、より分かりやすいかもしれません。

誰でも思いつくもの、誰もが好きそうなものはAIが今後どんどん生み出してくれるような気がします。

一方で、たった一人の人間の偏愛から生まれるものが新しい価値をつくることが、これまで以上に多くなると予想しています。

そうなのです、この「価値」こそ人間にとっての希望の光になるはずです。

「価値」を決めるのが人間

先日、登壇した日本小売業協会「生活者の新ライフスタイルを考えるフォーラム2023」にて、ゲストスピーカーの落合陽一さんが、このように仰っていました。

人間に残る最後の仕事が「選ぶ」こと。つまり、「審美眼」を磨くことが何よりも重要。

今後、クリエイティブもプロダクトも、全てのものはAIから生み出されると落合さんは予見しています。

一方、人間はその生み出されたものに対して「目利き」「価値づけ」することが役割になる。

確かに、世の中を見渡すと全ての価値は人間が決めている

アートの価値も、アイドルの人気も、ポケモンカードの付加価値も、科学的に価値を評価しているわけではなく、人間の知性と感性で判断されています。

ですから、以前【「発見」があなたを幸せにする】でも語りましたが

未開拓の価値を見つけることや、無価値だと思われていたものに対して

「いや、実はこれって、コレコレこういう理由で考えると価値があるものなんじゃない?」

提案していくことが人間の役割として残っていくというのは理解できます。

もちろん、AIが価値判断もできるようになるかもしれません。

一方で、「AIが決めたものだけじゃ味気ないよな〜?」と思う人は100年先も、1000年先変わらずいるでしょうから、ゼロになることはないはずなのです。

人が人を求める限り、人は必要

そして、何よりも忘れてはならないのですが、ビジネスとはお金を稼ぐことで、お金を稼ぐことというのはどういうことかというと

人に喜んでもらった対価である

ということです。

つまり、今のところお金を求めているのはAIでもなく動物でもなく人間なので、人間が人間を求め続けているという本質がある限りは、仕事の中から人間の存在がなくなることはないはず。

以前、オランダのスーパー「Jumbo」の話をしましたが

無人レジなど、これだけレジに効率化を求めている時代において、店員との「おしゃべり専用レジ」がお客さんから支持されているというのは、まさにそのことを象徴していると思うのです。

人間は合理性、効率性だけを求めない。

そんな部分も希望の光だと感じます。

そうした考えは「人の価値」を信じる小売業の現場ではスタンダードになってきており、最近ますますデジタル化が進む中でも、スタッフの接客力を磨く研鑽は相も変わらず続いています。

〈ツギノジダイ / 2023年11月17日〉

セブン-イレブン・ジャパン社長の永松文彦さんは、このように仰っています。

「世の中がIT化であるとか、DXであるとか、いろいろと進化して省人化にもつながっていますが、人にしかできない仕事があり、それはまさに皆さんが普段からされている接客であり、そこにお客様の感動が生まれるのです」

永松さんのメッセージに大変共感いたします。

人に寄り添う心、感受性、そうしたもの普通ではないレベルまで磨いていくことも、人が必要とされ続けるための「答え」となってくれるでしょう。

仕事は奪われた分だけ「仕事が増える」

ちなみに、堀江さんの話に戻りますと、こんな考えも東洋経済オンラインの記事の中で触れられていました。

新しいテクノロジーが出現するたび、なぜ人は「自分の仕事がなくなるのではないか」と不安になるのか理解できない。
時代を遡れば分かるように、私たち人類の労働負荷は下がり続けている。
例えば、今から200年以上前のアメリカでは人口の約7~8割が農業に従事していた。それが今では、数%となっている。
日本だって同じだ。江戸時代は、ほとんどの人口が農業従事者として田植えをしていた。近年農業人口は減少の一途をたどっているし、機械化のおかげで重労働は減ってきている。つまり、人類はテクノロジーのおかげで重労働から解放され続けているのだ。きつい仕事がなくなり楽になっているのは事実なのだから、素直にその恩恵を認めて喜ぶべきだ。

さらには、AIの出現によって新しい仕事が生まれ、労働者がそちらに移っていくとも指摘されており

「100年後の未来人からすれば、デスクワークに勤しんでいる現代人は、私たちから見た昔の農民と同じ姿になるだろう」

と予見しています。

ちなみに、【「仕事」が増える未来】という記事で、新しい仕事の候補を紹介しておりますので、まだ読んでいらっしゃらない方は、ぜひこちらの記事も一読いただけると幸いです。

ということで、AI時代でも人間が活躍している未来が想像できますね。

しかし、徳力さんが指摘されているように「普通レベル」を脱する意識は必要です。

それは「高みを極める」ことももちろんそうですが、独自性、つまり「オリジナリティ」を築き上げていくという方向性もあるかと思います。

No.1にならなくてもいい
もともと特別なonly one

この名曲の名フレーズの体現こそが、AI時代のキーポイントになるでしょう。

まずは、前例主義からの卒業が大切。

まさに、「右に倣うな」です。

倣ったとしても、そのままにせず、どのように自分だけのものに昇華させていくことが大事になるでしょう😊

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