デザインは「出口」から始まる
column vol.842
生活者視点に立つのはビジネスの基本ですが、それはデザインの世界も同じです。
その本質的な話の好事例として。
湖池屋グローバルデザイン・デジタル推進室長 近藤圭さんのデザイン論に共感したので共有させていただきます。
〈AERA.dot / 2022年11月6日〉
「入り口と出口」を大事にする
近藤さんは、同社で発売する年間60以上の新商品のデザインを決定している方。
「KOIKEYA The のり塩/The 麹塩」は、日本食糧新聞社が主催する食品ヒット大賞「優秀ヒット賞」を受賞しています。
その近藤さんが、常に大事にしていることは「入り口と出口」とのこと。
入り口とはデザイン制作のスタート。
出口とは売り場、つまり生活者とのタッチポイントです。
近藤さんは、パッケージデザイナーに新商品の発注をする時、まずは必ず自分でお金を出して自社製品を買うとのこと。
これは、パッケージデザインを選ぶ瞬間の購入者の気持ちを理解するためです。
選ばれる「顔立ち」になっているかを想像し、そこから逆算してデザイナーに説明する言葉を選んでいく。
こうすることで良き入り口に立てるということです。
見方を変えれば、近藤さんは「出口」から始めていると言えます。
その上で、実際に世に出したデザインに対して、ネガティブなコメントがSNSに上がっていたら、すぐに社内に周知し、制作過程で見落としていたことがなかったか、チームでとことん話し合っているそうです。
ここでも生活者の声、つまり「出口」に立ち、入り口を考えていらっしゃいます。
一つの商品が完成するまでには、開発やブランディングなど、多くの人々が関わります。
その中で点と点を線に繋ぎ、出口へと引っ張っていく。
商品の背景に流れるストーリーや意味、お客さまに伝えたいこと、全てがデザインだと考えているそうです。
ジョブズが語る「デザインの本質」
この出口視点のデザイン論は、スティーブ・ジョブズさんのその考え方と近しいと感じました。
〈東洋経済オンライン / 2022年11月5日〉
ジョブスさんは1996年2月、『WIRED』誌の中でこのように語っていらっしゃいます。
そう、デザインとは「機能」。
どう機能するかを考える。
そして、続けてこのように仰っています。
つまり、洗濯乾燥機に求めたい機能を、とことん突き詰める。
常にユーザー(出口)視点で人の心を掴むデザイン(機能)を考えていらっしゃった哲学の源泉に触れることができますね。
言葉にすると簡単ですが、先程の近藤さんの話に出ているように、デザイン開発はさまざまな人(会社)が介在します。
理想に近づけようとする中で、さまざまな人のさまざまな事情を目の当たりにする中、チームがブレずに進んでいくとしたら、相当高い解像度の顧客理解が必要となります。
ジョブスさんは洗濯機の「機能」について、家族と約2週間語り合いました。
どれほど出口の解像度を上げることに心を向けたか、非常に勉強させられます。
ロゴデザインのフォントの主流とは?
ということで、良いデザインは「出口」から生まれるという話をさせていただきましたが、最後のちょっとしたデザインに関するトリビアをご紹介して、本日のコラムを締め括りたいと思います。
今、世界で主流となっているロゴデザインのフォントをご存知ですか?
〈東洋経済オンライン / 2022年11月13日〉
どうやら、「サンセリフフォント」のようです。
例えば、バーバリー。
非常にシンプルです。
このようなハネや飾りのようなもののないシンプルな角ばった字体が世のトレンドとなっている理由は2つあります。
1つは、「情報過多」の時代であること。
たくさんの情報に囲まれている今の世において、いかに見過ごされないかがポイントになります。
当然、ロゴも装飾性よりも「視認性」が重要に。
また、もう1つの理由が「モバイル」主体のコミュニケーションになっていること。
小さな画面でもしっかりと認識できることが優先されるのです。
多くの企業でデザインがシンプル化する傾向に鑑みると、それだけ「届きにくい」社会であると言えるでしょう。
やはり、そうした出口(顧客)視点が大切になっていることが、ここからも窺えますね。
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