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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2024年4月の記事一覧

『説教ワークブック:豊かな説教のための15講』

『説教ワークブック:豊かな説教のための15講』

(トマス・H・トロウガー;レオノラ・タブス・ティスデール・吉村和雄訳・日本キリスト教団出版局)
 
私にとって3000円+税とは高価な本だ。だが、気になっていた。キリスト教の礼拝説教というものに執着のある私だから、テーマが気になる、というのも事実だ。だが、この共著の一人が、トロウガーであるという点が、どうしても見逃せなかった。『豊かな説教へ 想像力の働き』を読んだからだ。日本の説教塾でも、説教と想

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『「死にたい」と言われたら』(末木新・ちくまプリマー新書)

『「死にたい」と言われたら』(末木新・ちくまプリマー新書)

これは、テーマが重い。サブタイトルが「自殺の心理学」である。いまは「自死」という言い方が広まっており、すでに「自殺」という語が刺激の強すぎる語だと認定されつつある。だが、中高生にこの言葉を突きつけることになる。ちくまプリマー新書は、本来そこをターゲットに据えているからである。恐らく出版社側でも議論があったことだろう。だが、出した。その気概と向き合いたい。
 
著者はもちろん心理学畑の人である。まだ

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『説教の神学』(D.リッチュル・関田寛雄訳・日本基督教団出版局)

『説教の神学』(D.リッチュル・関田寛雄訳・日本基督教団出版局)

原書は1960年であるというが、実はその少し後から、翻訳の話があったのだという。だが、訳者が、青山学院大学の神学科廃止の問題に巻き込まれ、翻訳へ力を注ぐことができないまま、20年が経つ。そこでようやく日の目を見るようになった。私たちに、説教に対する力強い思想がもたらされた。
 
リッチュルは、1929年にスイスのバーゼルで生まれた。と聞くと、やはりカール・バルトとの関係がどうか、というところが気に

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『道徳的人間と非道徳的社会』(ラインホールド・ニーバー:千葉眞訳・岩波文庫)

『道徳的人間と非道徳的社会』(ラインホールド・ニーバー:千葉眞訳・岩波文庫)

岩波文庫から、ニーバーの著作が出る。そのニュースだけで、すぐに注文した。ニーバーといえば、キリスト教の世界でその祈りを知らない人はいないであろう。本書でも、訳者解説の最後の頁で紹介されている。
 
  O God, Give us
  Serenity to accept what cannot be changed,
  Courage to change what should be chan

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『神学でこんなにわかる「村上春樹」』(佐藤優・新潮社)

『神学でこんなにわかる「村上春樹」』(佐藤優・新潮社)

書館でこの本を見つけて、これは読むしかない、とすぐに借りた。佐藤優の本は沢山読んだとは言えないが、その人の経歴やよく言っていることについては、それなりに知るところがある。また、村上春樹は、その多くの作品を読んでいる。このタッグは読まねばならない。そう思って家に帰って開いたら、本書は『騎士団長殺し』のコメンタリーだった。
 
私はそれをまだ読んでいなかった。読む機会がないわけではなかった。読みたがっ

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