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ハレモノ 【ショートストーリー】
ハレモノ
暗闇の中で眼ン球のおれを置き去ってゆきまして、身体は何処に向かえばいいか、わからずに気が赴くまんま、ひたりひたりと湿った地面に足を乗せているようでした。
一方、眼ン球のおれは眼窩から離れてしまったので、寒々とした風を全身に浴びて縮こまっていました。
暗い中でも不思議と明瞭に見えている身体は男にしては小さい部類でしょう。段々に遠のいてゆく面皰だらけの背中は、丸まってよたよた歩くもん
ショートストーリー|狼と少女
狼と少女は互いにつらい恋をしていた。
少女が森で果実をもいで食べている所へ狼はやって来た。
「僕は肉ばかり食ってきたがその果実はそんなに旨いのか?」
「私はお肉よりもこの果実が好きよ」
狼は果実を一つ食べてみたが口に合わなかった。
「あなたは私を食べたほうがきっと美味しい筈よ」
「僕は君だけは食べたくない」
「ほら、この果実と私とを一緒に食べてしまえばいいわ」
狼は必死に我慢するが少女は彼にどうし