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【映画考察】「メッセージ」の凄まじさを本気で掘り下げたら未来が見えるようになった。

ご覧頂きありがとうございます。

本記事では、

・ファーストコンタクトまでの焦らしが最高
・物語全体の円環構造
・運命を受け入れること

この3点に絞って、
ストーリーを追いながら
ご紹介していきます。

先にご注意申し上げたいのですが、
今回もかなり長くなってしまいました。

本作の全体を通して
やっと浮かび上がってくる
「円環構造」を露わにしたかったので
省くポイントが見つけられず
相当な文量になっております。

なんとか退屈しないように
工夫したつもりではありますが
お時間お取りしてしまうことを
お気をつけください。

円環の始まり

©️Sony Pictures Entertainment Inc

画面は天井を映し、
ゆっくりと窓の外へ向けられていく。

映画の始まりは、
主人公ルイーズのモノローグから。

「あなたの物語はこの日が
始まりだと思ってた。」

「記憶とは、不思議なもの。
思ってもみなかった働きをする。」

「人は時の流れに縛られている。
その順序に。」

この段階では、とても抽象的な言葉で
なんのことだかよくわかりません。

しかし物語が進むにつれて
本作の重要な「答え」を
はっきり示しているとがわかります。

記憶と時間が本作の鍵となってくるのです。

このあと、主人公ルイーズの
”回想”シーンに入ります。

出産から、子育てを経て、
娘をガンで亡くすまで。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

悲しみに暮れながら、
病院の「円い」廊下を歩くところも、
何かを象徴しています。

”回想”シーンが終わり、
モノローグが流れながら、
”現在”のルイーズへ戻ります。

「運命の日というのがある。
例えば、彼らが現れた日」

言語学者である彼女が
大学で講義を始めようとするが、
欠席者が多い。

「先生、テレビのニュースを見せてもらっていいですか?」

©️Sony Pictures Entertainment Inc

いつもと違う「何か」が
起こっていることに気づく。

正体不明の物体が、
近くのモンタナ州に現れたこと。
世界各地でも起こっていること。

ここから、「彼ら」に出会うまでの
焦らし、演出がとても秀逸です。

観客は、事前の告知、ポスターやCMなどで
本作が宇宙人と出会う
ファーストコンタクトのお話で
あることは承知している。

その上で「出会った時の衝撃」を
いかに大きいものにするか、
という仕掛けがすでに始まっているのです。

それは、急にやってくる


不意に大音量でサイレンが鳴り出す。

授業は中断し、
学生もルイーズも帰宅することに。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

車に乗ろうとしたところで、
軍の戦闘機が2隻、爆音を出しながら
横切っていく。

乗車してラジオでニュースを聞きながら、
自宅へ着く。

心配する母からの電話を
適当にあしらい、
自室のテレビで再びニュースを見る。

次の日、
大学は休講のよう。

研究室にてノートパソコンで
ニュース映像を見ていると、

©️Sony Pictures Entertainment Inc

ノックもなしに不意に入って来たのが
アメリカ軍のウェバー大佐。

以前に諜報活動で
ペルシャ語の翻訳を依頼してきた人物。

大佐は、
「あなたに訳してほしいものがある」
と、ボイスレコーダーを取り出し、
再生させた。

・・・
「なぜここにきた?」
という質問の後には
とても言語とは言えない、
不気味な低音が数秒流れる音声だった。

ルイーズは、
「今のって・・・」
大佐、
「そうだ」

宇宙人というワードは使わず
仄めかしてくるあたり、うまい。

「彼らの言葉を訳してほしい」

「それは・・・どうかしら。
現場に行って、接触してみないと」

「思惑には乗らない。
現場には連れて行かない。
見学できるわけじゃない。」

「訳すのに必要なことを言っただけ」

「交渉の余地はないぞ」

無言になるルイーズ。

・・・という具合に、
この場での交渉は打ち切りに。

注意深くこの場面の会話を見てみると、
二人の会話は微妙にズレている。

以降もずっと、
ルイーズと大佐のコミュニケーションは
少しだけすれ違っていて、
宇宙人との会話と対比になって
いい具合のスパイスになっているのも
本作のポイントだと思います。

出発と出逢い


深夜、寝静まったルイーズは
ヘリコプターの騒音で叩き起こされる。

大佐「出発しよう」

ルイーズ「20分もらえます?」

大佐「10分で頼む」

大音量のプロペラ音に包まれながら、
ルイーズは現場へ出発した。

船内には、
もう一人の学者、
理論物理学の専門、イアンも乗っている。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

彼と交わされた初めての会話は
プロペラ音の爆音の中、
ヘッドフォンでのやりとり
というのも、象徴的。あとで触れます。

夜が明けてきました。

ヘリから見えるのは、
車やトラックが
大渋滞を起こしているところ。

そしてある地点で、

©️Sony Pictures Entertainment Inc

スパンと途切れている。
何か、ドえらいものがこの先にあるのがわかる。

雲の上を行くヘリ。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

視点は船内にうつり、
不安げなルイーズの表情を映す。

そして目にしたものは…


©️Sony Pictures Entertainment Inc

異様な形で宙に浮く正体不明の物体が、
そこにはありました。

お菓子の「ばかうけ」に見えますが
雰囲気が壊れるので広げないでおきましょう。

ポスターや宣伝ですでに目にしているはずなのに
これが現れた瞬間の
ドキっとする感じ。

見事な演出が功を奏して、
「なんか凄いものがそこにある」と
思わせることに、成功していると思います。

物語が本格的に走り出す瞬間を
美しい映像とともに
驚きも加えつつ表現している。
尋常ではない映像体験です。

・・・振り返ってみます。

静かな教室で流れるニュースに始まり、
構内のサイレン、
歩くルイーズ、
爆音で横切る軍用機、
車内のラジオ。
そして大佐は不意に入ってきて、
静まる寝室、
大音量のプロペラ音。

・・・
静かなところに急な騒音が鳴る。

静寂  ⇔   喧騒

という具合に、
それぞれを行ったり来たりしているのです。

観客は驚いたかと思うと
静かなところに戻って、またびっくりする。
これらを繰り返して
私たちの安堵感は
何度も揺さぶられることになる。

ある意味、少し心が混乱した状態で、
ばかうけ
正体不明の飛行物体を目にすることになるのです。

そして象徴的なのは、
この混乱の中、
ルイーズとイアンの最初の会話は、
ヘッドフォンで直通して交わされたこと。
騒音の中の密着した会話。

宇宙人と意思疎通するにあたって、
周りからの言いがかりが飛び交う中で
交わされるこの二人の会話が
鍵を握ってくることになる。

このあたりのさりげない
物語構造の伝え方が
非常にうまいと思います。


狭くて暗い通路の先

この後、
ばかうけ(もう面倒なのでこう呼びます・笑)
の中にいる宇宙人と
出会うことになるのですが、

静寂⇔喧騒
の構造は、少し形を変えて進められていきます。

狭いヘリの船内から降りて
「ばかうけ」を一瞥して
軍のテントに入って行くルイーズ。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

軍医による簡単な問診を受けたあと、
各国との通信室を通り、
消毒、滅菌された防護服を着用する。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

現場についてからは
ほとんど息をつく暇もないまま、
15分後に扉が開くことを知らされる。

18時間の間隔を空けて、
「ばかうけ」は人間が出入りできる「口」を
解放してくれるのだそう。

人間に合った気圧、酸素濃度を
整えるための時間とのこと。

「その気になれば人間を
窒息死させることもできるのか。」

どんな姿かを聞いても、

「・・・見ればわかる」と。

緊張感は高まってくる。

「なんのために地球にきたのか?
人類に危険はあるのか?」

・・・を明らかにするため
ルイーズは宇宙人と直接
コミュニケーションを取りに行く。

テントを出て、一行は
「ばかうけ」の下へ向かう。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

どんよりとした曇り空も、
緊迫感を増す。
真下に着いた。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

理論物理学者のイアンは、
手袋越しではあるが
初めて触れる地球外の物質の
感触を確かめ、微笑む。

「口」が開いた。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

サイリウムライトを上に向かって投げると
落下せずに、側面にへばりつく。

重力の方向が曲がっているのだ。

人類は重力の原理を利用するまでには
至っていない。
彼らはそれをやっている。

さらに緊張感が高まる。

軍の補佐たちは、ゴンドラから
壁に向かって「下」方向の角度を変えながら
飛び込んで行く。

ルイーズは大佐に抱えられて
なんとか「壁」に着地できた。

面白いのは、
その原理をまがいなりにも
頭で理解しているイアンが
うまく着地できず転んでしまうところ。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

すでに地球上の理屈は
通用しないことを
さりげなく表している。

今まで立っていた地上は
みるみる遠のいていき、
一行は奥に進んで行く。

部屋に出た。

たっぷり間をとって、
不安を掻き立てるような
重低音が響く。

正面のガラスらしきもの奥から、
彼らは浮かび上がってくるように
登場する。

©️Sony Pictures Entertainment Inc
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観客は、ルイーズと同様に
言葉を失うことになる。

ゾッとする。怖い。
それ以外の感情はどこかにいってしまうほど。

「宇宙人と出逢う」という
現実ではあり得ない状況が
真にリアリティをもって迫ってくる。

本作の構造

ここでやっと、
「ファーストコンタクト」を果たすのです。

ここまでじっくりと詳しく
過程をお伝えしてきたのは、
ある対比の構造が
本作で重要なものになってくると思ったからです。

先ほど示した
静寂⇔喧騒 が
現場についてからは、

狭い所 ⇔  広大な土地
になってくる。

ヘリの船内、軍用テント、ばかうけの廊下。
これらに挟み込むように、
モンタナ州の自然、
山から滑り落ちる雲のような気流、
外から見た大きなばかうけが
映されているのです。

もちろん、
映画的なお約束として
同じようなものを映していると
観客が飽きてくるからそれを避けている
という考えもあると思います。

しかし本作においては、
狭い⇔広い
の対置に呼応して、

個人⇔全世界

さらには
ルイーズ⇔大状況

という構図にまで落とし込まれていることに
意味があります。

後ほどじっくり触れますが、
ルイーズの個人的な「体験」が
世界の運命を左右することになる。

文字通り、「ルイーズの見たもの」が
世界を救うのです。

なので、映画の演出において

個人としてのルイーズ ⇔    世界の有様

をいったり来たりすることで、
大きな繋がりがあるということを
画面の中でも仄めかしてくるのです。 

この構造は、
ラスト間際までずっと続きます。

ルイーズが主人公である必要性を
画面を通して構造的に
やんわりと示してくる。

この手腕、見事としか言いようがないです。

「人間」から「ルイーズ」へ

一度目の「ばかうけ」入室は
コンタクトによる「驚き」のみで終わってしまう。

ここから、
人類の知力を結集させて
未知の宇宙人との
コミュニケーションに挑んで行くことになる。

宇宙人のことを、
ヘプタポッド(7本の脚)と
呼ぶことになった。

二度目の「ばかうけ」内での会合では、
ホワイトボードで文字を見せることを
思いつく。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

人間。
私は人間。
あなたは?

2体のヘプタポッドは一度白い霧の奥へ下がり、
1体が再び姿を現してから、

©️Sony Pictures Entertainment Inc
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見たこともない文字を示してくる。

この調子で4種類ほど
文字(らしきもの)を確認でき、
この日は引き上げることに。

軍のキャンプでは
文字の読解を総出で取り組んでいるが
答えは出ない。

3度目の会合でも
引き続き文字による
コミュニケーションを試みることに。

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ルイーズ。
私はルイーズ。

ヘプタポッドはこれに対して
また文字を出してくるが、
会話になっているのかもわからない。

進展があったという実感を持てないルイーズは
着ていた防護服を脱ぐことにする。

慌てて止めようとする軍の補佐達。

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構わず脱衣するルイーズ。

そいてヘプタポッドに近づいていき、
彼らを隔てる壁に、手を触れる。

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同じように壁に手を合わせてくれた
ヘプタポッド。

声とも似つかない
低音の連続音が響く。

ゆっくりと何かを感じ取ったように
うなづいてから
「やっと挨拶できたわね。」

表情をほころばせるルイーズ。

イアンも壁に近づいてきて、
「もう、やけだ」と言って
防護服を脱ぎ始める。

ホワイトボードに名前を書いて
イアンも自己紹介する。

2体のヘプタポッドも
それに呼応したように、
それぞれが文字を放ってきた。

根拠はないけれど、
その文字が彼らの名前であることを確信する。

読めないけれど、
「アボットとコステロってのはどうだ?」
とイアン。

ルイーズは
「いいわね。気に入った。」

これまでは
「人間」と「宇宙人」
という抽象的な関係だったのが

相手を信用し、ひと肌脱ぐことによって、

「ルイーズとイアン」が
「アボットとコステロ」という
名前を持った個人との関係へと
変化した。
大きな進歩だと言える。

ここで初めて、
ルイーズとイアンは
深い意味での笑顔となり、
地球という枠を超えて
未知の生物とコミュニケーションできたことに
心から喜んだ。


急を要する意思疎通


ここからの進展は
イアンのモノローグによって
急ぎ足に説明されていく。

画面では、
研究過程や意思疎通の様子などを
次々に挟み込まれることによって、
高度なやり取りをしているらしいことが
凝縮された情報量で示されていき、
圧倒されるし、ワクワクしてくる。

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動作を交えて
共通の語彙を増やして行く様。

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文字をものすごく細かく
分析している様も。

順調に進んでいるかに見えた
ヘプタポッドとの意思疎通は
ある事件をきっかけに、
急展開を迎える。

ここでも
ルイーズ ⇔  全世界
の構造が踏襲されています。

ヘプタポッドの画像がネットで流出し、
恐怖に怯える民衆達。
イギリスとベネズエラでは
暴徒が凶暴化して、
デモが起こっている。

その直後、
ルイーズが文字の分析を進めているときに
不意にフラッシュバックが起きる。

冒頭の”回想”シーンで見た娘が
父と母を描いた絵を見せてくるところ。

どうやら離婚が決まった直後の場面のようで、
つらい”記憶”として描かれる。

イアンの掛け声で我に帰るルイーズ。

「よくわからないの。
言葉で説明できない。」

外の空気を吸いにいく。

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ここでもまだ、
小刻みにフラッシュバックが
差し込まれ、
ルイーズの頭の中 ⇔ 広大な土地
の行き来が表される。

直後に中国とロシアは
軍を招集して、一触即発の手前まで
来ているとわかった。

時間がなくなってきた。

ルイーズ達は
ここで本来の目的である、
「何のために地球に来たのか?」を
ヘプタポッドに質問することになった。

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不完全だが
なんとか使いこなしている
ヘプタポッドの文字を使って
「なぜ地球に来たか?」と問う。

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彼らの答えは、
「武器を与える。」

人類同士を戦わせるためのものか?
「武器」と「道具」の意味を
区別していないのかも?
与えてくれ、という意味かも?

憶測が飛び交う中、
中国とロシアが
共通の回線を切断した。

直後、中国のシャン将軍が
「武器」という単語に反応して
国連を収集するように要求。

アメリカ国防総省からの命令で
こちらの回線も切断された。

このままでは攻撃が開始され、
今までの苦労が水の泡になってしまう。

ルイーズとイアンは
なんとか「武器」という言葉の意味を
確かめようと、急いで「ばかうけ」の中に戻る。

そこには、
若手のアメリカ軍人によって
C4爆弾が設置されていた。

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不安のあまり、独自の判断でクーデター的に
「ばかうけ」を攻撃しようとしたのだ。

爆弾の存在に気づかず、
「武器」の詳細について聞き出そうとする
ルイーズとイアン。

不意に、アボットは
壁に手を当てて
ルイーズに「ここへ書け」と要求している模様。

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従うルイーズ。

そしてまた”回想”が差し込まれる。
幼い娘の手を握るシーンが
フラッシュバックされながら
半ば放心状態で右手で円を描くと

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ヘプタポッドの文字を書くことができた。

この様子はとても神秘的に表されていて
言語を通じて、彼らの心と思考を
共有できたかのように
美しく描かれる。

直後に、

©️Sony Pictures Entertainment Inc

無数の文字を吐き出され、

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C4爆弾が爆発する。

アボットが直前に
重力の方向を変えて、
部屋の扉を閉めてくれたので
二人は大事には至らなかった。


武器は、時をひらく


ここまでの場面でもまた、
静寂 ⇔  喧騒
冷静なルイーズ ⇔  混乱の世界
の構造が続いていて、
今、矢印の右側に
振り子が振り切った状態になっています。

明らかな攻撃を加えた。
中国も、ついに宣戦布告した。

できることは、
アボットが最後に吐き出した、
無数の文字の解読を進めるのみ。

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考えているうちに
眠ってしまったルイーズはまた、
”回想”シーンを夢に見る。

娘と会話しているところ。

目がさめると、
イアンが読解の糸口を見つけたようだ。

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時間を表す概念を結んで見ると、
空白に意味があることがわかった。

全体のデータ量と空白を比べて
計算すると、数値は0.0833
分数にすると12分の1だった。

12個で1つのメッセージが完成するようだ。

各国とデータを共有したいが
通信が断たれているのでどうするか・・・
という議論の最中に、
ルイーズはまたフラッシュバックを起こし、
何かに突き動かされるように、
テントの外へ出て行く。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

「ばかうけ」から吐き出された
小さい「ばかうけ」。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

何も言わずに乗り込んで行くルイーズ。

©️Sony Pictures Entertainment Inc
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「極大の風景」から
「ルイーズ」の、どアップに
画面は遷移する。
(構造は矢印の左側に振れる)

©️Sony Pictures Entertainment Inc

今まで隔てていた透明の壁の
向こう側にやってきた。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

ルイーズは「どうすればいい?」

「ルイーズは武器を持っている」
と返答。
ここでは会話が可能になっている。

ルイーズ「何が目的なの?」

©️Sony Pictures Entertainment Inc

「人類を助ける。」

3000年後に人類の助けがいると。
コステロは言う。

「どうして未来がわかるの?
・・・わからない」

そしてまた、あの”回想”が
フラッシュバックする。

娘の顔が何度も頭に浮かぶ。

「・・・この娘は誰なの?」

コステロは
「ルイーズは未来を見る」
「武器は 時を開く」
・・と言い残して、
白い霧の中に去っていった。

ここまでが状況説明です。

ストーリーの順を追って
ご説明して参りましたが、
とても長くなってしまいました。

ここでやっと、本作の謎を
掘り下げる準備が整ったところです。

冒頭のモノローグを
再度書き起こします。

「記憶とは、不思議なもの。
思ってもみなかった働きをする。」

「人は時の流れに縛られている。
その順序に。」

今まで私たちが見ていた、
”回想”のシーンは、
未来のことだったことがわかりました。

つらい過去を抱えながら、
ルイーズは生きているんだと思っていたのが、
実は違っていて
未来の自分の姿を見ていた。

ルイーズがコステロに放った
「この娘は誰なの?」という一言が
その証左です。

ストーリーの要所で差し込まれる
フラッシュバックは、
すでに「武器を得た」ルイーズが
「時を開いて」いた証拠だった。

状況説明では触れませんでしたが、
中国が攻撃体制に入る前、
ルイーズとイアンは
ある仮説を援用しようとしていました。

サピアウォーフの仮説。
「母国語以外の環境にどっぷり浸かれば
脳の回路を設定しなおす事ができる。」

物の捉え方に言語が影響する
という説に基づいたもの。

ヘプタポッドの言語でものを
考えるようになっていたルイーズは、
ヘプタポッドと同じ脳の回路を得て
「時をひらく」という能力を
「武器」として与えられていたのです。

「時をひらく」とはどういうことか。

再三ですが、
「人は時の流れに縛られている。
その順序に。」

と冒頭で述べられています。

私たちは、
過去から現在、未来へと続く流れを
当然のことのように捉えています。

この流れに縛られていない
ヘプタポッドは、これ自体を
同時に捉えているということになる。

過去も現在も未来も
一つのまとまりとして扱っている。

少し例を挙げて考えてみます。

私たちがスマホで
note記事を読んでいるとします。
上から順に下へ向かってスクロールしていく。

「下」を未来だと考えると、
読み進めていくうちに
「上」が過去になっていく。

私たちは、過去から未来に向かって、
「現在」という画面を
順々に辿っていくことによって、
記事の全体を理解することができます。

ヘプタポッドが同じnote記事を読むとすると
スクロールの必要がない
超大きいスマホを持っていて、
表示されているひとつの画面を
グーグルの画像認識みたいな機能で
一気に文章全体を把握できる、
ということになります。

「順序」に縛られていないということは
「どこから」読み始めるとかではなくて、
全体を同時に認識できる、
という感じでしょうか。

抽象的な表現を許してもらえるなら、
私たちは三次元の世界に縛られていて、
時間次元である四次元をすっとばして
五次元世界にいるのが
ヘプタポッド、ということになると思います。

ヘプタポッドの文字を見てみても
イアンが「非線形の言語」と表現したように
概念が一文字で表されていて
前も後ろも上も下も、ない。

ヘプタポッドの言語を身につけ
時間の概念を超えたルイーズは
思い通りに未来を見ることが
できるようになった。

この能力を駆使して
人類の危機を救っていくことになるのです。

頼りは未来の自分


中国が宣戦布告している。
攻撃開始まであとわずか。

人類同士が戦争をする危険もあるし
「ばかうけ」が未知の報復を起こすかもしれない。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

各地のばかうけが縦から横になっていく。

中国ではミサイルを積んだ戦闘機が
ばかうけ向かって発進されている。

シャン将軍を説得しなければならない。

ルイーズは、
軍のキャンプに戻り、
コステロが示した無数の文字の読解を試みる。

同時に未来を見る。

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自分が出版する
「ヘプタポッドの言語」という本を
手に取り、開いていく。

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ハンナとは、未来の娘の名前。

見事なのは
「To Hannah」という文字で
カメラのピントがカチっと合ってから
その後のページも
しっかり読めるようになっていくところ。

ハンナへフォーカスすることで
未来がクリアに見えていく。

場面は軍のキャンプに戻り、
無数の文字の意味が理解できた。

「武器とは彼らの言語だった」
「身につければ、未来をわかるようになる」

大佐に話すが、意味をわかってくれない。

ルイーズは再び未来を見る。

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国際的なイベントで
おそらくノーベル賞授賞式の模様。

ここでシャン将軍と会話する。

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「あなたに直接会いに来た。
1年半前驚くべきことをした。
私の考えを変え、世界を一つに。あなたの功績だ。
私の携帯に電話をくれたのだから。」

「いえ、あなたの携帯番号を
知らないので」

シャン将軍は自分の携帯に番号を表示させ、
ルイーズに見せる。

「・・・これで知った」

「私が電話した?」

場面は軍のキャンプに戻る。
モバイルの国際電話を持ち出し、
未来で見たシャン将軍の携帯番号を
打ち込む。

追ってくる軍の関係者。
「誰だ中国に電話しているのは!?」

ルイーズは消毒室に逃げ込む。

「シャン将軍になんて言えばいい・・・」

また未来を見る。

シャン将軍は
「妻が今際のきわに、残した言葉だった」

©️Sony Pictures Entertainment Inc

未来で聞いた言葉を
現在のルイーズはシャン将軍に話す。

・・・中国は軍を撤退させた。

運命を受け入れる


「ばかうけ」が、消えてゆく。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

人類に言語を与えるという目的の達成を
見届けたかのように。

この消え方も絶妙だと思います。

光速移動でもなく、ワープでもなく、
存在がなくなっていく。
「位置する」必要がなくなった、
という感じでしょうか。

そして
冒頭にもあった
天井からのショットが映されます。

©️Sony Pictures Entertainment Inc

ここに、この映画自体の円環構造が示される。

ルイーズのモノローグ。
「ハンナ。あなたの物語はここから始まるの。
彼らが地球を去った日から。
この先に待っているものが、
わかっていても、私は受け入れる。
全ての瞬間を大事にする。」

運命を受け入れる。

この決意が、本作の威厳を
ぐっと強めていると思います。

映画の観客が期待しがちなのは
運命に逆らって、
本当の自分を取り戻し
求める人生を手に入れる、
というようなストーリーだと思います。

わかっている未来を
そのままトレースするような物語は
面白いとは感じにくい。

本作はそのあたりの固定観念を揺さぶります。

知っている未来であっても
一瞬一瞬を味わい、愛でることが
素晴らしい人生なのではないか、と。

ルイーズはこの先
イアンと結婚し、娘を生み、離婚し、
ガンでハンナを亡くすことを知っている。

つらい未来を見た。

でも、それを受け入れなければ
愛するハンナをこの手で抱くことができない。

消えゆく
「ばかうけ」を見送ったイアンは
ルイーズに
「一番の驚きは、君との出会いだ。」

©️Sony Pictures Entertainment Inc

未来の夫からの告白。

二人は抱き合い、

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ルイーズは決意の表情を見せる。

未来のイアンは言う。
「子供を作ろう。」

ルイーズは、未来と現在で
夫を抱きしめながら
噛みしめるように言う。

「ええ、そうね。」



まとめ

最後までお読み頂きありがとうございました。

今回の記事は、

こちらにコメントをくださった、
ゆきさんのお言葉がきっかけで
書き始めたものでした。

私も大好きな映画だったので
つい本腰を入れてしまい
ものすごい文量になってしまいました。

お時間取らせてしまって、すいません。

ゆきさんの見た未来と
相違はあったでしょうか?(笑

おかげさまで、
好きな映画を好きなだけ書く、
という楽しさを再認識できた気がします。

この場を借りて感謝申し上げます。

ありがとうございました。

この記事が参加している募集

ここまでお読み頂きありがとうございました。 こちらで頂いたお気持ちは、もっと広く深く楽しく、モノ学びができるように、本の購入などに役立たせて頂いております。 あなたへ素敵なご縁が巡るよう願います。