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【われはロボット】ロボットは哲学だ

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆☆

〜ロボットSFの名作〜

本作は「ロボットSFの古典的名作」と呼ばれており、ロボットを語る上でよく見かける「ロボット三原則」(①人間に危害を与えてはならない②人間に与えられた命令に服従しなければならない③ ①②に反しない限り自己を守らなければならない)を示した作品である。

このロボット三原則は実際のロボット工学の現場でも用いられる概念であり、SF界だけでなく現実世界にも多大な影響を与えた作品である。

短編集ではあるが、作中においてロボット制作のトップを走るUSロボット社の主任ロボ心理学者スーザン・キャルヴィンの回顧録という形になっており、一冊が一つの大きな物語となっている。

刊行されたのは1950年だが、内容は全く古臭さを感じさせない。むしろ、chatGPTなどに見るように、AIの発展が目覚ましい現代でこそ、より身近な物語になっているのではないかと思う。


〜ロボットを通して見る倫理観、人間性、存在論〜

本書を読み終えた直後の感想は、
「ロボットは哲学だ」
であった。

いずれもロボット三原則にそぐわない行動をとるロボットたちの謎にせまるミステリー形式の物語であり、論理的に物語が展開していくのだが、その奥に見えてくるのはロボットを通して見えてくる「倫理」と「人間らしさ」に対する問いだ。

人間を守るためにロボットはどのような行動をとるのか?
三原則に縛られたロボットが嘘をついたり命令を無視したりする理由は何なのか?
人間とロボットに明確な違いはあるのか?
ロボットは人間のために存在すべきなのか?

人間よりも高い思考力と判断力を持ち言葉を話すロボットを通して、人間そのものの姿を考えさせられる。
この作品の好きなところは「ロボットが心を持つ」なんていう安易な設定はなく、論理的にこの問いを浮き上がらせているところだ。

人間、という答えの見えないものに、客観的・理性的に追求する。
これこそ人間に対する哲学と言えるだろう。


〜色褪せることのない名作〜

ここ最近読んだ小説の中では、抜群に熱中した作品だ。30代半ばで文字通り寝食を忘れて夢中になる小説に出会えたことに驚きを隠せない。

もちろん、SF物語としても十分面白いので、ある程度小説を読めるようになれば、自分の子どもにもすすめたい。

古典的名作、と名のつくものは、正直色褪せて退屈な作品が多いが、本作は間違いなく時代を越えて現代でも未来でもその魅力が消えない傑作、だと僕は言い切ってしまいたい。

個人的なオールタイムベストに入るであろう素晴らしい作品だった。

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