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大手企業からスタートアップへ転職するためのマインドセット方法~キャリアの後半を考える大手企業管理職45歳の悩み②~

こんにちは。株式会社シンシア・ハートで代表取締役をしている堀内猛志(takenoko1220)です。
前回のnoteでは、「40代半ばからのスタートアップへの挑戦は無謀なのか?~キャリアの後半を考える大手企業管理職45歳の悩み①~」について書きました。

どんな人をペルソナとしているかは上記のnoteからご確認ください。今回のnoteは今回のモデルである晃はなぜスタートアップへの転職活動がうまくいかないのか、どうすべきか、ということについての解説編です。


大手企業の部長とスタートアップの部長の「違い」

「●●という企業で部長職を務めています」
このような自己紹介をされる方は要注意です。なぜなら役職は社会に提供できる価値やスキル基準ではなく、所属する組織における役割でしかないからです。つまり、会社が違えば、役職に求められるミッションがそれぞれ異なるため、横比較ができないのです。

当たり前と言えば当たり前なのですが、案外ココに気づけていないものです。なぜなら、人の自尊心は仕事の成果や役職によって醸成されているからです。つまり、役職はその人の勲章であり、自分で自分のことを誇りに思う武器になっているということです。ゆえに、人は無意識に自己紹介の中で役職を使い、自己T-UPを行うわけですね。しかし、転職では全く役職は使えないので止めましょう。役職ではなく、担っていた機能を説明するようにしてください。

機能は会社をまたいで比較が可能です。自分が担っていた機能、及び、成果と、新しい組織で求められる役割機能を比較するうえで重要なのが以下の3つの違いです。

①リソースの違い

わかりやすく言うと、ヒト、モノ、カネですね。「使える総量の違い」は想像に容易いと思いますが、「使い方」が違うことに目を向けている人はあまりいません。「使い方」の観点は以下の通りです。

■いかにロスさせないか
■いかにレバレッジをきかせるか

■いかにロスさせないか
ロスをさせないという観点も企業の大小問わず当たり前なのですが、損失に対する危機感度が圧倒的に大手とスタートアップでは違います。この観点の違いは、コーゼーションエフェクチュエーションという考え方の違いによって説明できます。

コーゼーションとエフェクチュエーションの違い ※やさしいビジネススクールより引用

エフェクチュエーションは、成功したベンチャー起業家のもつ行動パターンを体系化した考え方です。彼らの行動は、大企業の経営者や管理職の行動パターンとは真逆とも言えるほど異なっています。エフェクチュエーションは、先の予測が難しい産業や、何かを始めたい時に役立つ考えであり、スタートアップの責任者は無意識にこのような思考を活用しています。

■いかにレバレッジをきかせるか
大手企業の場合、数百億円、数千億円というとてつもなく大きな規模を動かします。よって、年間の成長率が1%だったとしても数億円、数十億円という規模の拡大になります。この規模の原理が働くため、成長率の目標が二桁である場合は少なく、三桁の成長目標など追ったことはないでしょう。

逆にスタートアップはGoogleの10Xの考え方に代表されるように、少なくとも2倍以上の成長率が求められるケースがほとんどです。少ないリソースを投資し、レバレッジをきかせて大きなリターンを得られるように戦略を練るという思考は、リソースの潤沢な大手企業の社内ベンチャーで少し経験したところで養えるものではありません。リソースを溶かすことへの危機感を持っていない人に経営者は責任者を任せるわけにはいきませんからね。

②時間軸の違い

「スタートアップ企業は早い」ということくらいは誰でもわかることですが、このスピードに対する意識の差は、行動にダイレクトに影響します。

例えば定例会議を想像してください。大手企業では、議論の中で生まれた課題に対する宿題は、ほとんどが次回の会議を期限としてアウトプットを期待されます。しかし、スタートアップで求められるのは「今すぐ」です。1週間に1度しか確認とフィードバックのチャンスがないのであれば月に4回しかPDCAを回せません。しかし、会議中でもSlackなどのコミュニケーションツールで関係者に確認すればその場で決議をとれるものもあるでしょうし、24時間稼働の経営者に遠慮せずにいつでも確認すればいいでしょう。

経営者に決議をもらわないと進まないプロジェクトの決断依頼を、プライベートの時間だからと断る経営者がいるのであれば見限りましょう。それはスタートアップの経営者にふさわしくありません。

スピードをあげるために社内資料を丁寧に作る必要もありません。スタートアップにブルシットジョブを許容するキャパは1ミリたりともありません。1割、3割、5割、8割の確認をSlackで行い、ステークホルダーが多いタスクでも中1日くらいでアウトプットを出しましょう。このスピード感がないと、経営者は依頼したことすら忘れるくらい未来に思考が進んでいることがあります。

③役割権限の違い

スタートアップは組織規模が小さい場合が多いので、いちいち細かな役割権限表を作っていません。大手企業では逆に権限表がないと組織がカオス状態になるため、細かく決められています。この差がスピードだけではなく、決断するという主体性を責任者から奪っています

スタートアップで働く人たちはエゴイストなくらい主体的です。よって、自分の役割権限など知ったことではありません。ミッションビジョンに対して必要なことを進めます。②のような時間軸でカジュアルに確認しながら進めるので、役職者や関係各所の承認がないから進まない、ということはありません。むしろ、そういう言い訳をする人がいれば、なぜ、その決裁者に強引に承認をとりにいかないのかを問われるでしょう。

全員が主体的であればルールはいりません。受動的な人が増えるからルールが増えるのです。ミッションビジョン以外は方法論です。「これは私が勝手に決めてもいいんですか?」「社長の承認を得ずにここまで進めていいんですか?」と聞くような人は役割権限表のフレームに収まり過ぎていると思ってください。

「年収2000万円」が出せるスタートアップとは?

①シード企業を狙うなら金銭報酬は期待してはいけない

そもそもスタートアップは不合理で不条理です。それでもロマンを追い求めてスタートアップは走り続けています。世の中にないビジネスを創ろうとする以上、PMF(Product Market Fit)が達成することは稀です。

それでもロマンを追い求めることに報酬を感じない人は、そもそもスタートアップは向いていないでしょう。報酬には、金銭報酬と非金銭報酬があります。

▼非金銭報酬
ゴール達成、経験・感情・人脈・スキル・成長 etc

真の起業家であれば、ゴール達成のみが報酬であるべきですが、従業員として参画する場合でも、せめて非金銭報酬を金銭報酬以上に魅力を感じる人じゃなければスタートアップには向いていないと思って方がいいでしょう。

②年収2000万円を狙いたいならシリーズB以上の企業

①で厳しい言い方はしたものの「ビジョンはあってもキャパもある」というのが一般的な人の考え方だと思います。確かに、Vision達成の際に多額のリターンがある経営者と違い、ストックオプションすらない一般社員に同じ意識と働き方を強要するのは経営者のエゴとも言えます。

大企業から新興へ転職者7倍 縮む年収差が追い風 ※日経新聞22年3月6日より引用

実際のところ、スタートアップへの転職が増えているのは、スタートアップの給与水準が上がっていることが主たる要因です。年収2000万円が出るのかはあなたが持つスキルと経験によりますが、シリーズB以上で調達を完了し、事業単体で黒字が出ている企業であれば出せなくはないでしょう。

夢だけでは生きていけないがスタートアップに挑戦はしたい、という人は上記のような企業を狙ってみると良いでしょう。

③そもそも年収をキープすることが前提ならスタートアップは狙わない方がいい

年収が高いかどうかは「本人の頑張り」だけではどうしようもないのです。年収は以下の4つのファクターによって決まります。

①業界:利益率の高い業界か?

②職種:希少性が高い職種か?

③所属企業の人事制度:天井知らずに上がり続けるのか?

④本人の頑張り:上記のゲームルールの中でいかに成果を出すか?

見てわかるとおり逆はありません。「自分次第」というのは美しい考え方ではありますが、そもそも選ぶゲームを間違えると、自分次第ではどうにもならないことを覚えておきましょう。

スタートアップは①~③が決まっていない場合があります。せめて①②は決まっていたとしても、金銭報酬と非金銭報酬を比較して、金銭報酬の方が優先順位が高い人は、冷静に①を見て、意中のスタートアップに入社するべきかをきちんと検討した方がいいでしょう。

スタートアップに入る切符は若さよりも「若々しさ」

スタートアップに限らず転職する人のほとんどは自身の年齢を気にしています。転職先は年齢を気にしているというよりも、年齢にふさわしい能力を持ち合わせているか、を見ているのであって、年齢のみを気にする必要はありません。そもそも20代でも能力がない人は採用されませんからね。

その中でスタートアップに求められるのは「若々しさ」です。実年齢よりもマインドがいかに若くて瑞々しいかということを確認されます。ポイントは以下の通りです。

①成長への渇望感が衰えていないか?

何よりも重要なのが「成長への渇望感」です。成長意欲は転職しようとするほとんどの人が持ち合わせていると思いますが、必要なのは「渇望感」というとてつもない渇きです。

成長確度は年齢とともに衰えていくのが常です。年率1%でも成長したいという想いがあれば、それは成長意欲という言葉に置き換えられるでしょう。しかし、その程度の成長意欲では20代だらけのスタートアップでの成長スピードには耐えられません。一般道から高速道路へ入る分岐点をイメージしてください。必要なのは「飛び込む勇気」「時速40キロから時速100キロ以上に変更する意思」です。

②思考の俊敏性が衰えていないか?

思考には以下の3つがあります。

・思考の深さ(思考深度)
・思考の長さ(思考持続性)
・思考の速さ(思考俊敏性)

年齢と共に、思考深度は深まりますが、持続性と俊敏性は落ちることがほとんどです。特に俊敏性は20代の人でも大手企業の中で衰えていることが多いです。DAY1からトップスピードにギアを上げられるか、変化に合わせてギアを切り替えられるか、大失敗のどん底からV字回復できるか、この思考の俊敏性を持ち合わせているなら心配はいりません。

③手足の運動量が衰えていないか?

スタートアップに役割権限はないと前述しました。また、人的リソースも潤沢にありません。よって、責任者として入社しても戦略を立てる、人を動かす、だけではなく、自ら手足を動かすということも必要になります。当然、責任者がいつまでも手足を動かしているわけにはいかないのですが、リソースがないときに自ら手足を動かさないのは愚の骨頂です。

もし責任者として自分は動くべきではないという強い信念がある場合は、動く人を自ら採用しチームをつくることがセットで求められます。これはスタートアップというよりも大手企業でも同じだと思います。例えば、有事の戦い方で責任者の器量がわかります。平時では人的リソースをうまく動かすことができる人でも、有事には現場に降りて共に戦う意志がない人に部下はついてこないでしょう。

大手企業の責任者をしている人は①②は問題なくても長年③をやっていない人は多いと思います。その場合、入社前から業務委託としてジョインすることを志願し、早めに動くように感覚を取り戻すとよいでしょう。

スタートアップの経営者に選んでもらうには?

上記観点を全て理解し、マインドを持ち合わせていたとしても、大手企業での経験、そして年齢に対してバイアスがかかり、不安を持たれてしまうこともあるでしょう。その場合には、以下の申し出をしましょう。

①一般の年収から始める

「マジで?」と思った方は真の意味でスタートアップで成功する自信がないと言わざるを得ません。新卒のマインドで入社し、責任者としてのこれまでの経験を活かすのであれば、1年以内に元の報酬に戻せるのではないでしょうか。前述の通り、スタートアップにはルールがないのでキャップなしで1年で大幅に年収アップできる企業はたくさんあります。

この提案ができる人は本当に自信がある人だと経営者は知っています。逆に、スタートアップを選ぶのに大手企業の年収を維持しようとする人は、その自信がない証拠だと思われても仕方ありません。年収2000万円ある人なら貯蓄は3000万円くらいはあるでしょうし、それもない人は自身の資産運用方法を見直すところから始めた方がいいでしょう。

本当にスタートアップに行きたいのに、自分の年齢と経験が邪魔をして内定がでない、と嘆く人は是非使ってみてください。

②パートナーマネジメント力を発揮する

大手企業からスタートアップ企業への転職の最大の壁がパートナーである人は少なくありません。家計を気にしているパートナーであれば、現職への引き留め、転職を認めても年収を落とさないコトが条件になるでしょう。

最終的にパートナーの反対で現職遺留をする人は多いのですが、そういう人はそれが正解です。だって、一番身近な人に自分のビジョンを伝える力がない人なのですから、もっと大きなチームや事業を動かせるはずがありません。

スタートアップはロマンです。そのロマンを一番身近なパートナーに伝え、応援してもらうくらいのマネジメント力を発揮してください。このnoteで色々伝えてきたことよりも、最初の一歩としてまずはパートナーと向き合うことが重要な人は多いのではないでしょうか。


晃は結局スタートアップでの内定が決まらず、前職の子会社に戻ることになります。それもまた個人の選択であり、正解や不正解を他人が決めることではありません。どういうキャリアを選ぶのか、また自分の希望するキャリアを選択できるだけのリテラシー、マインド、能力を持ち合わせるのは自分次第です。このnoteがスタートアップへの転職を希望する人の参考になれば幸いです。

晃のストーリーを読んで他人ごとではないと思った人は下記よりご連絡ください。

それでは今日も素敵な一日を!

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