需要不足でなく供給制約が賃上げを阻む

需要不足で生産を増やしたくても増やせないから、賃金も上がらないという見方は、伝統的ケインズ経済学のドグマに侵された見方だ。完全失業率が今年5月には2.2%になったのに、賃金が上がらないのは、もっと失業率が下がらないと賃上げは起きない、という見方があるが、それは前掲の見方によるものだ。

しかし、需要不足だから賃上げが起きないのではない。(潜在)需要はあるのに、供給するための労働力が確保できず、増産できないからだ。労働力が確保でき、(潜在)需要に応じて生産を増やせれば付加価値が増え、労働(賃金)にも分配でき、賃上げ余地が生まれる。まさに、供給制約が賃上げを阻んでいる。

ただ、事はそう単純ではない。労働力を確保できても、従来と同じように生産したのでは、労働生産性は上がらず、賃金も上がらない。供給制約をどう克服して、賃上げにつなげるか。先進国共通の課題だ。


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