見出し画像

お題10個の短編小説を1時間で書いてみた!【前編】

 お題を10個入れて短編を書いてみたい!
 しかも1時間以内に完成させたい!

 ということでお題はコチラ!

〇お題(ランダム単語ガチャから頂きました)
1『兄』
2『かばん』
3『夏』
4『足』
5『おじいさん』
6『無視』
7『おかし』
8『頭』
9『犬』
10『家』

 それではどうぞ!


 夏休みが始まった途端、僕たちはおじいちゃん家に泊まる事になった。
 車から見える広い田んぼは、これからのつまらない日々を予感させていた。もう六年生なんだから、田舎の地味さに耐えられない。本音を言うなら友達とずっとゲームをしていたかった。
「あら健太くん、大きくなったわねぇ」
 おじいちゃん家に着くと、ほくほく笑顔のおばあちゃんが出迎えてくれた。急に抱き着いてくるのが暑苦しい。
「……やめてよ、おばあちゃん」
 僕はおばあちゃんの腕から逃れる。おばあちゃんは一瞬悲しそうな顔をしていたけれど、すぐ笑顔に戻った。
 お父さんとお母さんから「荷物運ぶの手伝って」と言われたので、自分の荷物だけを持って家に入った。
 後ろからお母さんの小言が聞こえたけれど、適当な返事だけをして居間に向かう。
 毎年見ているおじいちゃん家。全体的に和風だけど、所々に洋風な部分があって変だ。棚の上には日本人形が飾られているのに、居間には綺麗なソファーが置いてある。来る度に家が小さくなっていくように感じる。それは僕が大きくなったからだよって言われるけれど、こんなに僕がデカくなっているとは思えない。
 居間のソファーには、むすっとした顔のおじいちゃんが座っていた。僕がいるのに、構わずテレビのニュースを見続けている。
 お母さんから挨拶はしろと言われているので、一応話しかける。
「こんにちは……」
 おじいちゃんは何も言わない。
「……こんにちは!」
 投げやりに大声を出しても、おじいちゃんは見向きもしなかった。
 僕はおじいちゃんが苦手だ。ずっと無視するし、何も話さないから考えている事が分からなくて怖い。
 そして動物が大っ嫌いで、公園のハトにまで睨むからより一層近づきたくない。
「あら良い挨拶ねぇ。健太くんが元気で嬉しいわ」
 おばあちゃんも居間に入ってきて、僕に近づく。
「健太くんにちょっとお願いがあるの。今からポチの散歩に行ってくれない? 近所を少し歩くだけでいいから」
「今から? もう疲れてんだけど」
「ちょっとだけ、お願いよ~。もう私もおじいちゃんも足が弱くてね、散歩がつらいのよ。ポチももう年だから、そこまで長く散歩しなくて良いわ。帰ってきたらお菓子あげるわよ」
 僕は「お菓子くれるんだったら……」と渋々言った。
 おばあちゃんは僕に散歩用のカバンを持たせてくれたけど、そのカバンがボロボロで早くも嫌な気分になっていった。

 庭に行くと、犬小屋でペタリと地面に体を付けて寝ている柴犬がいた。この柴犬がポチで、いつも寝ているかご飯をちびちび食べているかのどっちかだ。
 僕が近付くと、ポチはゆっくりと目を開けて立ち上がった。
「ほら、散歩行くよ」
 僕はおばあちゃんからもらったリードをポチに付けて、庭を出た。ポチの散歩は昔からやらされていたから、要領は分かっている。

 いつもの散歩道を行くのもつまらないと思い、気まぐれに別の道を選んだ。距離で言えば近所に変わりないし、少しでも目新しいものを見付けたい冒険心が少しだけあった。
 だけどこんな田舎に、面白いものなんてあるはずもない。僕が溜め息を吐いていると、ポチが急に止まった。
「何? ウンチなら早くしてよね」
 だがポチは何もせずに、ただ座り込んでいる。
 僕がリードを引っ張っても全く動かずに、どこか遠くを見ていた。
「なんなんだよ、早く終わらせたいのに」
 ポチにイライラして、地団駄を踏む。引っ張っても仕方ないので、僕もポチが見ていた方を見る。
 そこには、古びた家があった。おじいちゃん家と同じような和風な家で、確かあの家にはもう誰も住んでいないそうだ。おじいちゃんの親戚だとは聞いているけれど、僕は一度も有った事がない。
 しばらく呆然として待っていると、ポチはスッと立ち上がって歩き始めた。


 後編に続く↓


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集