加藤大志 (服部天神宮神職)

足の神様 服部天神宮神職|G20宗教サミット日本代表|ロンドン大学東洋アフリカ研究学院…

加藤大志 (服部天神宮神職)

足の神様 服部天神宮神職|G20宗教サミット日本代表|ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程卒 |書籍「Shinto Moments」「The Covid Pandemic and the World’s Religions」

マガジン

  • 神社の未来研究

    人口減少と過疎化、景気の悪化など、神社を取り巻く環境は厳しさを増すばかりです。氏子の神社離れ、祭典参列者の減少など、神社の将来も不安が多くなってきております。未来における神社という場と空間の可能性について探求していきます。

最近の記事

【足祭り】 新しいお祭りを神社で始める。

2023年9月足の神様をお祀りする服部天神宮で新しいお祭りが立ち上がった。コロナ、人口減少、過疎化によって、あらゆる行事やお祭りが縮小していく中で、新しいお祭りを始まる取り組みを進めた。 神社という空間では、数千年の歴史のなかでたくさんの移り変わりがあるが、お祭りというのはその中心にすえられてきており、時代が変われども、続いたきた伝統文化である。そのお祭りも形を変えながら、継承されてきて現代まで伝わってきている。 神社のお祭りの中心にあるのは神様。そしてその神様に対して最

    • 神道とランニング

      走ることは自然の一部になること地球温暖化や気候変動の中、環境問題は人類の生存をかけた切実な課題になってきております。しかし、日本は環境問題以前に自然と共生する在り方を心得ていたといえます。日本最古の歴史書である古事記では、人間を青人草と表現しています。 青人草とは、「青草のように繁茂し生きている人々」という意味を表しています。この言葉を見ると、人間も自然の一部であり、人間と自然は共生してきたことを感じさせられます。人間は自然の恵みによって、生かされていたのです。古来より、自

      • 足の神様とランニングコミュニティ

        神社と文化神社という場と空間では、人々の想いによって生活文化が創造されてきた。例えば、学問の神様 菅原道真公。学問の神様を慕う人々から天神講という文化が創造されていきました。 「寺子屋」は、江戸時代の庶民の間から生まれた教育機関です。寺子屋とはいっても、必ずしも僧侶に限らず、武士や庄屋など学のあるさまざまな身分の人々が師匠を務めました。 この寺子屋と菅原道真との間には、深いつながりがあります。江戸時代には、道真は学問の神さまとして広く信仰されており、2月25日の道真の命日

        • 掃除とコミュニケーション

          神社には樟(くすのき)というご神木がそびえ立っています。神主の毎朝の日課は、赤く染まる落ち葉を掃除すること。神主として大切にされている行が、掃除です。神様が住まう場である境内を清らかな空間として保つためにも、日課としてやるべきことであります。 おそらく、経済合理性を考えると、樟があることによって、掃除という「作業」が発生し、人件費が発生するという考えに行き着きますが、木を切り倒すことによって、人間の仕事を省力化することにつながります。 もちろん、ご神木を見れば、神様が宿る

        【足祭り】 新しいお祭りを神社で始める。

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        • 神社の未来研究
          5本

        記事

          生活習慣を布教する

          神道は、日本人の暮らしの中から生まれた信仰といえます。遠い昔、私たちの祖先は、稲作をはじめとした農耕や漁業などを通じて、自然との関わりの中で生活を営んできました。そんな日本人の生活と密接に関わっていた神道。生活文化の集合体のようなものである神道も宗教というカテゴリーに区分されます。 では、宗教について考えてみましょう。宗教団体、つまり神道の場合はそれぞれの神社の目的を、宗教法人の定義から引用すると、 宗教法人は,教義をひろめ,儀式行事を行い,及び信者を教化育成することを主

          一本歯下駄(GETTA)×足の神様

          神社のストーリー(由緒)をベースに、戦後、〇〇の神様とコミュニケーションを図ってきた神社は、時代の変遷とともに個人の願いに歩み寄ってきたのだと思います。 一方で、氏子といわれる神社を支える地域の人々は神社から足が遠のき、地域コミュニティの中心であった神社を取り巻く環境は大変厳しくなってきております。 コロナ禍で感じたことは、やっぱり神社は地域の人々の心の拠り所として、機能すべきなのではないだろうか?心の拠り所として機能するには、人々の生活に接点が必要であります。 ただ、

          一本歯下駄(GETTA)×足の神様

          非日常の神社を日常へ

          6月30日に夏越の大祓があり、茅の輪という大きな輪をくぐる神事がありました。清々しい青空のもと、半年間のつもりに積もった悪いものが祓われ、令和3年残り半年間を健やかに過ごせそうです。 さて、こちらの神事では、いつも神社には足を運ばれない方も、ご参列いただいたようで、神社との接点をつくるきっかけというのは本当に大事だと改めて身に染みた思いです。 さて、神社という空間ですが、どうしても非日常性が強調されるのはなぜでしょうか?初詣、人生儀礼(お宮参り、七五三、厄除け)、お祭り。

          神社のストーリーから公共性をデザインする

          神社とは人々が集い、祈りを捧げる場所が本質的な機能であると前回の投稿記事で述べました。 この神社という場の機能は「宗教性」と「公共性」という軸、「個人」と「集団」に分類することができそうです。この分類を神社の本質的機能である「祈りを捧げる」と「人々が集う」に分解して考えてみたいと思う。 「祈りを捧げる」とは、場の役割として「宗教性」を有し、「個人」を対象とした意味が、現代の神社ではより強いと考えられます。 例えば、「安産」などのご祈願。お子様が無事にお生まれするよう願う

          神社のストーリーから公共性をデザインする

          これからの神社の役割

          神社の歴史的役割神社とは、人間ではなく神様が住まう空間。日本人は、清浄な山や岩、木や滝といった自然物に神様が宿ると信じていました。その神宿る空間をしめ縄で囲い、聖なる空間としたわけです。 祭りの日には、聖なる空間に地域の人々が集います。春には豊作を、夏には風雨の害が少ないことを祈り、秋には収穫を感謝するなど、地域をあげて行われます。つまり、神社とは個人ではなく、地域共同体、集団が集い、祈りを捧げる空間というのが本質的な機能であると考えられます。 全国8万社以上ある神社がそ

          これからの神社の役割

          【インタヴュー】英国へ留学した神主の想いと今後の展望

          これまでの英国留学時代の経験の振り返りと、これからの神職としての想いについて述べました。よかったら読んでください。 ー日本の大学で学ばれ、さらに神職の資格を取得された後、ロンドン大学のSOAS(東洋アフリカ研究学院)へ留学されたそうですが、その目的はどのようなことだったのでしょうか? 自分が培ってきた神道観を日本という土地ではなく、普遍的な文脈で再構築する必要があると思ったからです。 神道は思想的なバックグランドが弱く、日本という土地で、日本人の感性によって無意識的に共

          【インタヴュー】英国へ留学した神主の想いと今後の展望

          【日本文化の世界発信、英語書籍出版】 Shinto Moments

          神道に関する英語書籍「Shinto Moments」を出版しました。この書籍化は、国境を越えたご縁によって、実現しました。書籍化実現までのストーリーについてお話ししたいと思います。 ロンドン留学神職の資格を取得後、私は神道を海外からの視点で見ることで、新しい発見や魅力が見えてくると思い、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院へ留学を決めました。 大学の修士課程では、神道を学ぶために、日本宗教学を専攻。 アメリカ、イギリス、イタリア、中国、韓国と多国籍な約20名の学生ともに、神道

          【日本文化の世界発信、英語書籍出版】 Shinto Moments

          【神主さんに学ぶ】第一回オンライン神道講座

          神主として、ホトカミ さんのご協力のもと、オンラインで神主さんに学ぶ神道講座というテーマでzoomを使ってお話ししました。 神職は、神道を言挙げせずと表現します。 言挙げせず、つまり言葉で特別に取り立てて述べることをしない。神道では、歴史的に言葉で語ることよりも、言語化できない感じる力を大事にしてきました。 実際に、講座後の質問にも、「僧侶と比べて、神職の方はオンラインイベントで、お話される機会が少ない」とあったように、言葉で語ることが少ないことが現状です。 背中で語

          【神主さんに学ぶ】第一回オンライン神道講座

          祖父のよみがえり

          神道では、人は亡くなると家のまもり神になると信じられています。 一家を見守ってくれている心強い存在です。私も亡くなった祖父に見守られていると日々感じます。 私は、大阪府豊中市に鎮座する服部天神宮を実家とし、生まれた当時は祖父が宮司として神社を守っていました。 祖父は厳格な人で、あまり関わりもありませんでした。 しかし、そんな祖父も当時野球で活躍する従兄弟のことを褒めていた事がありました。従兄弟と比較されることが凄く悔しく、私もいつか祖父から褒めらたいと思っていました。

          【神主の神社自慢】かみさまにお祈りする心の準備

          インターネットで「神社」と検索すると、かみさまがお鎮りになるご本殿の写真が出てきます。 一方で、英語で「Shinto Shrine」や「Jinja」と検索すると、ご本殿と鳥居の写真が表示されます。 外国人にとって、鳥居は神社を示すシンボルなのかもしれません。鳥居は神社の入り口、また神社の神聖さを象徴する建造物ともいえます。 鳥居は聖界と俗界を分ける境に立てられ、鳥居の内側は神様がお鎮まりになるご神域として尊ばれます。 神話では、天岩戸に隠れた天照大御神(伊勢の神宮に祀

          【神主の神社自慢】かみさまにお祈りする心の準備

          半人前神主の神社自慢。

          「実家が神社なのですか?」 「神主です」と自己紹介すると、よく聞かれる質問です。 私の実家は、大阪府豊中市に鎮座する、足の神様として崇敬を集める服部天神宮(はっとりてんじんぐう) 代々神職として神社に奉仕してきた家系に生まれました。 神社が創建され700年以上経ち、初代から数えると私で22代目です。 先祖代々、神職として神社に奉仕する家系に生まれた、跡継ぎ神主です。 でも普通の高校と大学を卒業し過ごしてきたので、友人には神職だけでなくサラリーマンや主婦などもたくさ

          半人前神主の神社自慢。

          第10回世界宗教者平和会議に参加して

          宗教の世界における役割遡りますが、8/20-8/23まで、第10回WCRP(世界宗教者平和会議)世界大会がドイツ・リンダウで開催されました。 この世界大会は、5-7年毎に、現代社会の課題に対する道徳的合意の構築、諸宗教による積極的課題への取り組み促進を目的として、諸宗教の枠を超えて、開催されます。 WCRPは、1970年に京都で創設された世界の宗教の代表者による平和を指向する国際団体であり、国連経済社会理事会の諮問を受けるNGOであります。 WCRP国際ネットワークは、

          第10回世界宗教者平和会議に参加して