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【日本文化の世界発信、英語書籍出版】 Shinto Moments

神道に関する英語書籍「Shinto Moments」を出版しました。この書籍化は、国境を越えたご縁によって、実現しました。書籍化実現までのストーリーについてお話ししたいと思います。

ロンドン留学

神職の資格を取得後、私は神道を海外からの視点で見ることで、新しい発見や魅力が見えてくると思い、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院へ留学を決めました。

大学の修士課程では、神道を学ぶために、日本宗教学を専攻。
アメリカ、イギリス、イタリア、中国、韓国と多国籍な約20名の学生ともに、神道をはじめとした日本の宗教をについて学びました。

大学院の最終授業が終わった後に、ある友人から「たいし、結局神道についてわからなかった」と言われました。
授業の回数が限られていたこと、神道の基本について説明された本がないこと、神道は言語的説明よりも感性を大切にする性質から外国人には理解することが難しかったようです。

約20名の学生が日本の宗教に興味を持ち、神道と触れ合う機会があったにもかかわらず、そのチャンスを活かしきれませんでした。

神道について形式的な概念論を伝えて頭で理解してもらうことよりも、実生活に根差した神道的な感性を伝える方法を考えないといけない。

「学術的な書物ではなく、日々の生活から感じられる神道を英語で世界中に伝えたい!」そんな想いを胸に、日本へ帰国しました。


フロリダで弓道家との出会い

帰国後数ヶ月した頃、フロリダ在住のある武道家から連絡がきました。

「日本文化の精神的支柱にある神道に非常に関心がある。ぜひ一度フロリダで話をしてほしい。」

彼は、樫門道場という弓道・空手・居合道の稽古ができる道場を設計し、建築した日本文化をこよなく愛するアメリカ人です。

イギリスへ留学していた私は、アメリカ人の神道に対する感覚を知りたいと思い、フロリダへ行くことに決めました。

彼は、せっかくの機会を多くのアメリカ人に神道の考えをシェアしてほしいということで、フロリダの森上博物館で神道に関する英語講演を企画してくれました。

その講演会で、彼の友人で弓道の錬士である79歳のアメリカ人と出会いました。彼との出会いこそが、今回の書籍出版へと繋がったのです。

弓道の錬士は私にこんなことを聞きました。

「たいし、どうしたら神道を世界中の人に理解してもらえると思う?」

すると、彼が撮影した自然風景の写真が掲載されている本を取り出し、

「あなたは地平線を見つめ、新鮮な海のそよ風に深く息を吹き込み、あなたが生かされていることに対して感謝したことはありますか?」

「この感覚こそが、Shinto Moments」と表現されました。

ぜひこのShinto Momentsを3人で書籍化しよう!という話になりました。

私は、ロンドンでの経験と繋がり、この方法なら世界中に日常的な感覚を持って神道を伝えられると確信しました。


Shinto Momentsの書籍化

早急に書籍にするために、出版会社へコンタクトし始めました。神道に関する書籍を取り扱う会社から日本文化系、自然系など多分野にわたる出版会社へ連絡しましたが、結果はNO。

お断りされる主な理由が「神道の本を出版してもマーケットが小さいので、売れない。」

つまり、世界中に神道に関心がある人が少ないので、英語で書籍化しても売れないというのが、出版会社の見立てでした。

それでも、諦められず、今回自分たちの力でアマゾンから書籍化することにしました。

「学術的な書物ではなく、日々の生活から感じられる神道を英語で世界中に伝えたい!」イギリスから帰国後もずっと心の奥底で願っていた想いが、3年越しでついに実現しました。

こちらからShinto Momentsオーダーできます。

https://www.amazon.co.jp/Shinto-Moments-Discover-connection-Japanese/dp/B08CWJ8JSF/

Shinto Momentsとは、日本語に翻訳すると「神道的な瞬間」と言えます。よく神道は、日本人の慣習や文化と表現されるように、我々日本人の感覚は日常的にあるもの。けれども、神道的なものとして、意識化されていない。その神道的な感覚が味わえる一瞬を写真で切り取り、英語で伝えることが書籍化した目的です。

神道では、人間が中心という概念はありません。日本最古の歴史書である古事記には、人間を青人草と表現しています。

青人草とは、「青草のように繁茂し生きている人々」という意味を表しています。この言葉を見ると、人間も自然の一部であり、人間と自然は共生してきたことを感じさせられます。人間は自然の恵みによって、生かされていたのです。

いのちに感謝する気持ちが沸き起こること。

この感覚は日本人だけではなく、人類に共通する普遍的な感覚であり、国境を超えて共感できると信じています。

普遍的な感覚を伝えること。それは、神社という空間にとらわれることなく、日本にいなくても感じられる感性に共感してもらうことで、神道の可能性を拡張させ、より大きなつながりを育んでいくこと。それがロンドンで学ばせていただいた神職として、私ができる恩返しです。

フロリダには神社がありませんが、79歳の弓道家のおじいちゃんは、Shinto Momentsを日々体感しているのです。

神職として歩んでいく上で大切な教えをいただきました。


Shinto Momentsへの期待

私の役割は、日本の伝統文化の真髄である神道を日本、そして世界中の人々に感じてもらうための仲執り持ち。つまり、神道と日本、世界中の皆さまの架け橋となるために、神職としての務めを全うすることです。

その務めを全うすることで、神社に参拝した日本人や外国人が、より神道や神社の魅力をそれぞれ感じてもらえたらすごく嬉しいです。
そして、彼らが感じた魅力を彼ら自身で世界の人々へ共有することで、魅力を大学院という研究機関以外にも伝えていく手段はあると信じています。

人によって感じ方が八百万あるのと同じように、その人が感じた神道の先にある道も八百万にあると思います。

神道がその人が感じたものを大切にしているからこそ、神職である私も神道を受け取った人が感じたものをそっと見守り、応援していきたい。

私が架け橋となって神道の魅力を伝えること、そうして伝わった神道が日本や世界に広がり、広がった神道の先にある道も無数に広がっていて欲しい。
そう願いながら、今後も神職としての道を歩いていきたいと思います。


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