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神社のストーリーから公共性をデザインする

神社とは人々が集い、祈りを捧げる場所が本質的な機能であると前回の投稿記事で述べました。


この神社という場の機能は「宗教性」と「公共性」という軸、「個人」と「集団」に分類することができそうです。この分類を神社の本質的機能である「祈りを捧げる」と「人々が集う」に分解して考えてみたいと思う。

「祈りを捧げる」とは、場の役割として「宗教性」を有し、「個人」を対象とした意味が、現代の神社ではより強いと考えられます。

例えば、「安産」などのご祈願。お子様が無事にお生まれするよう願う妊婦さまが受けられる祈願です。その願いを神主が神様へ執り持ち、祈りを捧げるのです。そこには、神社というご本殿の聖地にて、神様へ祈りを捧げるという「宗教性」が働いています。この安産祈願にお参りする方は、安産という個人、個別の祈りのために神社へ来ていることから、プライベートつまり、私的な文脈に分類されます。

一方で、「人々が集う」という場の役割を考えると、「公共性」が非常に高く「集団」を対象としています。例えば、祭り。夜に露店が出されている夏祭りは、誰でも参加できるという公共性があり、地域住民が集う行事です。


神社の宗教性と個別の祈り

神社における「宗教性」と「公共性」を紹介しましたが、それではこれからの神社はどのように場をデザインするのがよいのでしょうか?

おそらく、神社のストーリー(由緒)をベースに、宗教性と公共性の両軸の場の持つ力を活かすこと。つまり、個別の祈りが捧げられ、神社のストーリーに共感する地域住民が集う場作りが求められていると思います。

安産の神社をサンプルに考えてみます。安産の神様というストーリーを軸に、メッセージを打ち出す神社。こういった神社には、お腹の中のお子さまが無事にうまれるよう願って、ご家族や妊婦さんが集います。

つまり個人が、人生の節目に安産の神様のご神徳をいただくため、個別の祈りを捧げているのです。ほかにも「学問」「厄除け」「縁結び」など神社ごとに様々なストーリーがあります。

これは、近代化で人々の生活に選択肢が生まれ、個別の想いに寄り添えるよう、各神社が変容してきた結果であります。この「安産」という神社が有するストーリーに共感し、個別に人が祈りを捧げられる空間が演出されています。

おそらく、こういった個人の願いと神社のストーリーが結ばれるモデルが、戦後神社界に広がっていきました。

由緒をベースに公共性のある場をデザイン

それでは、神社は祈りを捧げる場所としての宗教性を個別にアプローチすること。それはもちろん大切ですが、加えて地域住民が集う公共性というポイントがさらに重要になってくると予想しています。

その公共性のデザインをする際に気を付けるべきことは、神社のストーリーに結び付いているかどうか?つまり、個人と集団どちらに対しても一貫した神社のイメージが大切であるといえます。

神社の有するストーリーに共感する人々が、集う場。それが、地域の公共性繋がっていくようデザインすること。このデザイン設計が、これからの神社に求められていると思います。

例えば、安産の神社の場合。安産の祈願に来られる方は、お子様が生まれた場合、子育てを始められます。そんな子育てするお母さんが集う場をデザインすること。それが、神社の特色である安産というストーリーが公共的な役割、つまり地域コミュニティを育むことにつながっていくのです。

子育てするお母さんが具体的に悩んでいることをイメージすると、「子供の遊び場」「子育てに関して役に立つ情報の提供」など。

安産祈願に参拝した個別のお母さんが、出産後に神社のストーリーに共感し、集う。そういったサイクルが生まれることで、神社の宗教性と公共性が発揮され、最大限社会に還元できる役割を担っていけるのではないか?そんな風に期待しています!

社会的に必要とされている場を設計することこそ、今後の神社の未来を切り開いていくのではないかと思います。


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