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『革命前夜』 に導かれて

『革命前夜』 に導かれて

ドレスデン行きを決めたのは、この本を読んだ半年後のことだった。フラウエン教会のオルガンの音が聴きたくて。

黒い街が辿ってきた道

『革命前夜』の舞台であるドレスデン。降り立った瞬間、暗くて呑み込まれるような雰囲気に圧倒された。旧市街の教会や建物は全体的に黒ずんでいる。異質な重たさを感じた。

18世紀にバロック文化が花開き、かつては芸術の都としてパリやウィーンと並び称されたドレスデンは、1945

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『金閣寺』三島由紀夫

『金閣寺』三島由紀夫

1950年、金閣寺が燃えた。見習いの僧侶が放火したために全焼したらしい。その事件を題材にして書かれたのがこの『金閣寺』で、人間のコンプレックスと社会の歪みが生み出した一つの事象として見事に描出されている。本人すら分かっていなかったかもしれないその本質を徹底的に分析し、投げられた匙を磨き上げてしまう天才。

中でも、鹿苑寺を飛び出してから由良に着き、そして金閣を焼かねばならぬとの暗示を受けて帰路の列

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『潮騒』三島由紀夫

『潮騒』三島由紀夫

なんですかこの透明感!!?

眩しい
とにかく眩しい

10代後半のふたりの眩しさが、歌島の情景と重なってさらに眩しいのです。

今まで読んだどの小説よりも飛び抜けて清らかな、清純の権化のような作品でした。「ひまわりみたいな物語だ」と批評には書いてあったけれど、ひまわりのようなずっしりとした明るい花ではなくて、今にも風に吹かれて飛んでいってしまいそうなほど軽く透明感のある花が似合います。なんだろう

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必要な時に必要な本と出会う

必要な時に必要な本と出会う

本を読んでいて、
あ、これこれ!私が今知りたかったこと!
っていうのが増えてきた。

というか、気づいた。

“本気で悩んで知りたいと願えば、教えてくれる本が目の前に現れる”
ということ。
人との出会いも然り。

誰かにおすすめされた
たまたま目がいった
家族が読んでいたから手にとってみた…

経緯はなんであっても、自分の手元にその本が来たということが結果なわけで。
「あの時あの本に出会えたから」

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『三島由紀夫レター教室』は本当にレター教室だった

『三島由紀夫レター教室』は本当にレター教室だった

突然の読書感想文。
時々アウトプットしていかないと便秘になるよと言われたので、時間のある時は頑張って書いていこうかな。

感想冒頭の5人の自己紹介、あまりのギャグ線の高さに「天才だなこの人」と言わざるを得ない。日本を代表する文豪だし、今まで他の書籍を読んだことがなかったからもっとお堅い難しい文章なのかと思ってたから衝撃だった。想像の斜め上をいく内容。途中からギャグ漫画読んでる気分になった。
でもレ

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『だから古典は面白い』

『だから古典は面白い』

音楽においても文学においても、時代を超越した作品が「古典」であり、それらはいつの時代においても、決して古くなることはない。

半年前、『戦争と平和』を買ったものの結局読まずじまい。
”古典文学は読むのに体力が必要だから、若いうちに読んでおいた方が良い”
と言われ、なるほどと思い購入したのだが、モチベーションが上がらず……。

そして本屋さんを徘徊していた際にこの本を見つけた。
『だから古典は面白い

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『三四郎』夏目漱石

『三四郎』夏目漱石

今更ながら、夏目漱石の前期三部作を読み始めた。三四郎を読み終え、怠惰な夏休みを正当化すべく、感想をつらつらと書き連ねていく。

一番印象に残った文章は、三四郎が大学の図書室に入って、その書物の上に塵が積もっているのを見た場面。

それから凡ての上に積った塵がある。この塵はニ三十年かかって漸く積った貴い塵である。静かな月日に打ち勝つ程の静かな塵である。

本に被った埃をこんなにも美しく表現できること

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『美しい星』 三島由紀夫

『美しい星』 三島由紀夫

フルシチョフとケネディと葡萄入りのパン

これは…ただのエンタメ小説ではないぞ…!
と気がついたのはこの部分。

これは自分達は宇宙人であると自覚した一家の父、重一郎のセリフ。小説の中では「愚かな地球人」のために立ち上がり、地球人解放のために尽力している。
表題とあらすじだけでなんとなく想像していた内容の斜め上を行っていて、この辺りからだんだん読むのが楽しくなってきた。

人間の三つの宿命的な欠陥

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