Nana Tabara

ワインが出会わせてくれたこと。 フリーの編集、ライター、クリエイティブディレクター。 …

Nana Tabara

ワインが出会わせてくれたこと。 フリーの編集、ライター、クリエイティブディレクター。 JSA wine expert、CPA cheese professional。

最近の記事

知ってしまうことは。 Denis Mortet~2005

先週のルソーのように、香りを感じた後にグラスを置いて立ち止まってしまうワインもあれば、 香りを感じた瞬間に「わぁぁぁ」とか「うおぉぉ」とか、言葉を発せずにはいられないワインも存在します。 お父さん作のドニ・モルテ。状態とタイミングがパーフェクトなことが多く、いや、その理由は最高のモルテを見極めている人の存在がいるからなのだけど、ここ数年、香りをとった瞬間に声を出してしまうことが多くあります。 ふと2本の父作ドニ・モルテが浮かび上がります。 1本目は、2024年1月1日に飲

    • 王子様は優しさがあってこそ。Armand Rousseau Chambertin 1992

      先週書いたルロワのリシュブールと同じ日に、ご相伴にあずかったアルマンルソーのシャンベルタン1992。 (確か)過去1度しか飲んだことが無く、もはや一生飲めないと思っていたルソーのシャンベルタン。このエチケットを目の前にすると気が引き締まります。 前に出会えたのはコロナ禍真っ最中のこと。ヴィンテージは2007、大好きな年です。 そして今回は1992。ワイン好きな人なら、ヴィンテージ的に似たようなキャラクターになりそうだとイメージできるかもしれません。 確かに同じ線上にいる

      • 🥂 切なさの正体。Domaine Leroy Richebourg 1988

        東京に、本物のサロンが登場しました。 そこは、夢。思い出すだけでふわふわしてしまいます。 扉を開くと、大理石の長テーブルと、星空のようなBOCCIの照明。 モノトーンでスタイリッシュなのに、幻想的でふわふわしてしまう。 一晩にして最上のワインと何本も向き合い、 その中でも、一生記憶に残るワインに、また出会うことができました。 切なさのあるワイン。 たまに、そんなワインと出会います。 ドメーヌルロワのリシュブール1988は、切ないワインでした。 正しく美しく香る。 清

        • 🥂 日にち薬

          今日は日にち薬の話をします。 大好きな瀬戸内寂聴さん曰く、日にち薬は京都の言葉らしいのですが、本当なのかは謎です。 本当に時間って偉大。大好きだった人との関係性も、大好きという強く鋭い角が取れていって、柔らかくなっていって、ちょうど良い関係性になっていく時はなっていくんですよね。 その昔、とーっても大好きになった人がいて。 丁度ワインの沼に両足を踏み入れた頃。ワインをちょうど良い感じに嗜んでらした、余裕のある方。その人とワインを楽しむ日が決まれば、その日に焦点を合わせてい

        知ってしまうことは。 Denis Mortet~2005

          🥂待つことは得意。だけど

          たまに東京タワーが見える場所で仕事をすることがあるのですが、 昨日、東京タワー越しの雲の輪郭に夏のニュアンスを感じてしまい、 今年は特に、時が早いし速いと感じる日々。 基本的には仕事ばかりで、今の自分にはその時間の使い方が正なのは確かですが、 本当にこの使い方でよいのか…?と思うこともあります。 ただ、ここ2年は独立したばかりで仕事で精一杯で、今年に入ってこんな風に考えられるようになっただけでも、心に余裕が出てきた証拠。 一番やりたいことは、なかなか叶わなくって、それを強

          🥂待つことは得意。だけど

          🥂 はじめの印象。から変えてくれたのは

          第一印象って、対人間の場合、結局その印象が続いたりします。 でも、その感覚は間違ってもないなって思ったりもしている、超感覚的人間な私ですが。 ワインでも、その造り手を最初に飲んだときの印象って結構大事で、記憶に強く残りやすいと思います。 この場合、良かったときの方が思い出に残りやすい。逆に、そこまでだったものは次から手を出すことが無くなって、少しずつ記憶から消えていって終わっていったりします。 とはいえ、ブルゴーニュの場合、造り方のトレンド、畑の場所、ヴィンテージなどで、

          🥂 はじめの印象。から変えてくれたのは

          🥂 そのワインを語っているのに、本質からどんどん離れていく

          テイスティングコメントとは、当たり前のことだけど、そのワインを語るということ。 一緒にそのワインを味わっている相手とは、感想を交わし合うことで、よりその1本を理解して楽しむことができますよね。 感想の交換は、時と場合、そして飲んでいるワインによっては、ふたりの関係すら変えてしまうことがあって。 それがまたワインの魔法だな、なんて思ったりもします。 後日、「あのワイン良かったよ」「こんな味わいだったよ」とワインラバー同士で語り合うときにも、必ずテイスティングコメントは付いて

          🥂 そのワインを語っているのに、本質からどんどん離れていく

          🥂 お外の昼ワインはこれだけでいい

          誰もが思っていることだろうけど、外で飲むお酒はなんでこんなに美味しいんだろう。 外で飲む、となったらやっぱり昼飲みが思い浮かびます。 昔の方が昼から飲むことが多かったのは、それだけ時間や心に余裕があったから。過去の自分はなんて柔軟で自由だったんだろうと、羨ましく思ってしまいます。 今は、昼から飲むとその日は何にもできなくなるからちょっと微妙だな、、なんて人として寂しい考えになっているのはあまりよくない気がする。 そんな私でも、年に1回、桜の季節に、絶対に昼から飲みたい!

          🥂 お外の昼ワインはこれだけでいい

          🥂 ああ、このネイルの間に会いたかったな

          ネイルのデザインは、その1ヶ月の指針。 来たる予定をイメージしながらデザインを考える人も多いのではないでしょうか。 「あの会では黒のワンピースを着るから、爪は華やかな感じがいいかな」「あの人とのお食事、久しぶりだな、ちょっと上品な感じにしようかな」 と、相手や服装のバランスを見ていくのですが、とはいえ、何より自分のご機嫌と好きを最優先しちゃう方がなんだかんだ多いんですよね。だって毎日そのネイルを見るのは自分ですしね。パソコン作業がメインとなればなおさらよ。 4月にネイル

          🥂 ああ、このネイルの間に会いたかったな

          🥂 ストレートに伝わってくる方を欲している時もある

          ワインの楽しいところ、面白いところは、 香り・味わい・余韻・全体的な雰囲気などなど、いろんな要素を内包した飲み物である点ではないでしょうか。 最近は少し飲む頻度が減っていて、あまり冒険はせずに大好きなシャンパーニュやブルゴーニュと向き合うことが多いのですが、 ここを見ている人はきっと、私のインスタのフォロワーが多いと思うので、ブルゴーニュはワインの中でも複雑さの頂点であることは自明のことでしょう。また、シャンパーニュも味わいや余韻などの点で他のスパークリングワインとは異なる

          🥂 ストレートに伝わってくる方を欲している時もある

          🥂 あたたかくしてね

          「あたたかくしてね」 今年の冬はこの言葉を何度も伝えていたように思います。 「あたたかくしてね」 この言葉をはじめてかけられたとき、その優しい響きに、その言葉を自然にかけることができるその人の素敵さに、言葉通り心まであたたかくなりました。 なにより、「あたたかくしてね」には、寒さを気遣う想い以上に、「すきだよ」という言葉が隠れていると思ったんです。 今年は、桜の開花が遅れるほど、3月も寒い日が多くて、その度に「あたたかくしてね」と伝えることができて、そして伝えてくれたこ

          🥂 あたたかくしてね

          🥂 記憶を超えていく旅。

          ジャックフレデリックミュニエのクロドラマレシャルは、ブルゴーニュをすきになるきっかけの1つとなったワイン。 ワインを感じるとき、その感じ方に左右される要素ってとーんでもなくあります。 自分の気分、一緒に飲んでいる人、飲んでいる場所、季節、開けるタイミング、温度、何杯目に味わうワインか、挙げるときりがありません。 そんな要素がいろいろ絡まって、「おいしい」という感想が浮き上がってくる飲み物って、ワインくらいかも? 初めてミュニエのマレシャル2011を飲んだとき、当時ワイン

          🥂 記憶を超えていく旅。

          🍷9/2 後々意味を持ってくる

          その日は友人とカジュアルにワインを飲むだけの日だったんです。 だから、馴染みの肩肘張らないワインバーでいいやって。 だから、ユニクロの黒Tシャツに黒のパンツスタイルという、誰にも会わない日の仕事着みたいな格好でいいやって。 だから、メイクも朝やったメイクに10分で上書き保存した感じでいいやって。 確かにその日はなんてことのないの日だった。 仕事の話をメインに、至って普通の日。 まさかそんな日のことを2年後に振り返るなんてね。 あの日は、結局日常の中でなんとなく過ぎていく

          🍷9/2 後々意味を持ってくる

          🍷4/5 鴨川は何歳になっても泣いていい場所

          京都に住んでいる人の甘酸っぱい思い出は、鴨川にあり。 高校のころ、片想いの人と初デートでここに座ったな。 そこから会うたびに同じ場所に座って、おしゃべりしたな。 もちろん友人同士との思い出も。語って笑って泣いた記憶が一本の川には点在してる。 胸がきゅっとなる、そんな余韻が残っている。 今ではすっかり橋の上から歩いて見ているだけの鴨川。 だけど、今日は久しぶりに階段を降りて、川沿いにひとり座って、親友に電話を掛けた。 それからしばらくしたら、立ち上がって、自分の心の手

          🍷4/5 鴨川は何歳になっても泣いていい場所

          🍷3/13 1分1秒

          年に数回も、忘れられないワインと出会えるのは本当に幸せなこと。 つい最近、また素晴らしい出会いがあった。 「時を飲む」そんな有り難い経験をすることがある。 幽玄で、懐が深くて。 Domaine Comte Georges de Vogue Musigny 1950は、人生を表すワインだった。 ヴォギュエミュジニーという軸はあるけれど、その1杯1杯に違いがあった。そもそも陰に、内にパワーが向くヴォギュエミュジニーが表に表情を向けているだけでも素晴らしい出会い。 1杯

          🍷3/13 1分1秒

          🍷1/12 一瞬思い出すだけでも

          今のワインラバーにとって、ワインの記録はすっかり簡単になった。 写真を撮ったら、それで完了だから。 でも、たまに手物に残しておきたいワインに出会う。そんなときは、ボトルごと持って帰ってしまう。 家に帰って、ふわふわした気持ちでどこに置こうか少しだけ悩んで、置くべき場所に置く。 今、家には5本のボトルが置いてある。 前はもっとあったのだけれど、空きボトルがありすぎると埃はたまるし風水的に微妙だと聞いて、最近減らした。 良い意味で不必要となった過去とさよならできた瞬間。 18

          🍷1/12 一瞬思い出すだけでも