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最後のウイルス ⑩「連載小説」

感染10日目

一晩中優子を探しても見つからなかった。
気がついたら、幸太郎は堀川博士の研究所に向かっていた。ドローンで探せるかもしれないと思ったからだ。
もはや自転車では移動できないくらいの人がそこらじゅうに溢れている。
なんとか到着した時にはもう昼を過ぎていた。

研究所の入り口にはついたが指紋認証が必要なドアだったので、そこから大声で叫んだ。
するとロックは解除された。中に入ると博士が座っていた。
「博士!!ドローンを貸してください!!探したい人がいるんです!」
「わかったわ。とりあえず落ち着いて。」
博士は椅子に座るように促す。
「この端末で操作していいわよ。でもこの数の中から探すのは難しいと思うわよ。」
幸太郎は藁にもすがる思いでモニターにかじりついた。
都内のどの場所も人で溢れていた。見つかるかどうかはわからなかったが、何もせずにはいられなかった。

モニターに集中している時首の後ろに痛みが走った。
慌てて振り向くとそこには博士がいた。
「何したんですか?」
「このウイルスを作って世の中に広めたのは私なの」
「え?」幸太郎は何を言っているのかわからなかった。
「私がウイルスを作って、今あなたが操作しているドローンで散布したのよ。」
「どうしてそんなことを!」
「あなたは知らなくてもいいことよ。今あなたに射ったのはそのウイルスよ。直接投与しているから症状はすぐにでてくるわ。みんなと同じになった方があなたも幸せでしょ?」
幸太郎は怒りに任せて博士に掴みかかろうとした。だが、立ち上がった瞬間視界がぼやけてきて体の感覚が無くなってきた。最後に幸太郎の目に見えたのは、自分のことを押し倒す博士の姿だった。押し倒された瞬間地面に強打すると思って身構えたが、痛みは生じなかった。それどころか空に浮かぶ雲に溶け込んでいくような感じがして心地よかった。その時にはもう博士に対する怒りも消えていた。幸太郎はこの幸福感が全人類に永遠に続けばいいと思った。

                    続 




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