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2020年9月の記事一覧

「清貧」を<ジジイの繰り言>から<若者の指針>とできるか:読書録「人新世の『資本論』」

「清貧」を<ジジイの繰り言>から<若者の指針>とできるか:読書録「人新世の『資本論』」

・人新世の「資本論」
著者:斉藤幸平
出版:集英社新書

「脱成長」とか言われると、(作者自身が指摘するように)
「高度成長の恩恵だけをしっかり享受したくせに、<清貧>とか言って、貧乏を次世代に押し付けようとする老人たちの繰り言」
って感じがしなくもないんですがw、「気候変動」とか考えると、今のままの経済成長路線もどうかとも…。
ってなところから、マルクスに晩年期の思想(「資本論」(第1巻)の発表

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こういうオッちゃんには引き続き頑張って欲しい…気がしないでもない:読書録「恥ずかしい人たち」

こういうオッちゃんには引き続き頑張って欲しい…気がしないでもない:読書録「恥ずかしい人たち」

・恥ずかしい人たち
著者:中川淳一郎
出版:新潮新書

「あれ?引退したんじゃなかったっけ?」

…「セミ・リタイア」で、ネットメディアの編集からは一切手を引いた…ってことのようです。
こういう物書き業の方はどうなんでしょうね?
なんか「ジジイの繰り言」みたいになっちゃうのが嫌で止めちゃう気もするし、どうせ副業みたいなもんなんだから…って続けるような気も…。
まあ、どっちでもいいですけどねw。

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「じゃあ、何してる会社なのか、分かった?」と訊かれると、「何となく…」:読書録「Learn or Die」

「じゃあ、何してる会社なのか、分かった?」と訊かれると、「何となく…」:読書録「Learn or Die」

・Learn or Die 死ぬ気で学べ プリファードネットワークスの挑戦
著者:西川徹、岡野原大輔
出版:KADOKAWA

AI(人工知能)について日本を牽引するような企業「らしい」プリファードネットワーク(PFN)について、創業者2人が説明した本。
「人工知能って、ビジネス面では今どんな感じになってんのかなぁ」
と漠然と思ってるとこにネットで紹介されてるのを見て、購入しました。

基本的には

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「利権」という枠で括るのはもったいない:読書録「ドキュメント 感染症利権」

「利権」という枠で括るのはもったいない:読書録「ドキュメント 感染症利権」

・ドキュメント感染症利権  医療を蝕む闇の構造
著者:山岡淳一郎
出版:ちくま新書(Kindle版)

作者ご自身の問題意識は
「今のコロナ対策で顕わになった感染症対策のミスマッチは、明治以降の日本の医療行政にある<組織の論理>や<利権構造>に根ざしている」
ってところにあるので、「利権」を表題に掲げるのはよく分かります。
ただ読んでみると、あまりにも重要で考えさせられるポイントが多く含まれてるん

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キャラがイイ。続編が楽しみです。:読書録「ストーンサークルの殺人」

キャラがイイ。続編が楽しみです。:読書録「ストーンサークルの殺人」

・ストーンサークルの殺人
著者:M.W.クレイヴン 訳:東野さやか
出版:早川書房(Kindle版)

停職明けの刑事、その刑事の元部下で上司になった女性警部、そして学研肌で度を越した世間知らずの女性分析官。
このトリオがすごく「イイ感じ」なんですよね。
特に「ティリー」という分析官が秀逸で、彼女と主人公が「友達」になる流れが、なんとも…。
シリーズ化されてるらしいんですが、彼女の「その後」を早く

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Netflixでドラマ化とかして欲しい:読書録「その名を暴け」

Netflixでドラマ化とかして欲しい:読書録「その名を暴け」

・その名を暴け #MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い
著者:ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー 訳:古屋美登里
出版:新潮社

「ここまでやるのか!」
と読んでて驚くくらいでした。ハーヴェイ・ワインシュタイン・サイドの工作の方ですけどね。
まあ、「金で沈黙を買う」ってことなんですが、その徹底ぶりと、それを逆手にとっての「脅迫」に近い圧力の掛け方。
元イスラエルの諜報員まで登場する

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青春やの〜
の一冊。
センター試験ラストで、その上コロナ禍の学年の青春です。
オッちゃん、こう言うの好きよ。

長いシリーズになりそうなんで、早いとこ続編を出して欲しい:読書録「その裁きは死」

長いシリーズになりそうなんで、早いとこ続編を出して欲しい:読書録「その裁きは死」

・その裁きは死
著者:アンソニー・ホロヴィッツ  訳:山田蘭
出版:創元推理文庫(Kindle版)

「メインテーマは殺人」に続く<ホーソーン&ホロヴィッツ>シリーズの第2弾。
作者自身を<ワトソン役>にして、メタ的な設定と本格推理をマッチングさせた展開を本作でも見せてくれます。
展開もスピーディで、一気に読んじゃう感じも相変わらず。

作中でホーソーンとの本は「3作契約」になってるとあったので、

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「世界史」の穴を埋めるモンゴル帝国:読書録「モンゴル帝国と長いその後」

「世界史」の穴を埋めるモンゴル帝国:読書録「モンゴル帝国と長いその後」

・興亡の世界史 モンゴル帝国と長いその後
著者:杉山正明
出版:講談社学術文庫(Kindle版)

「遊牧民から見た世界史」を読んで、ユーラシア大陸での遊牧民国家の重要性に興奮し、「風の谷のナウシカ」の読み直しから<西方>国家への興味も掻き立てられ…ってな感じで手に取った本です。
一番の目的は「モンゴル帝国」。
「遊牧民から見た世界史」は、その前段の方に重心がありましたからね。

…なんですけど、

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矢吹丈に「余生」はないけれど:読書録「一八〇秒の熱量」

矢吹丈に「余生」はないけれど:読書録「一八〇秒の熱量」

・一八〇秒の熱量
著者:山本草介
出版:双葉社

本書に関してはこのレビューが言い尽くしてくれています。
っうか、コレ読んで、読んでみる気になたんですけどw。

「狂気」に陥るのは、ボクサー本人はもちろん、ジムの会長、トレーナー、そして作者であるドキュメンタリーのディレクターもその渦に巻き込まれます。
でも、その渦を作り出すのは中心となるボクサーなんだけど、読んでると、彼が積極的に先導してって感じ

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いやはや、ここんとこは難しいです…:読書録「同調圧力」

いやはや、ここんとこは難しいです…:読書録「同調圧力」

・同調圧力  日本社会はなぜ息苦しいのか
著者:鴻上尚史、佐藤直樹
出版:講談社現代新書

もうねぇ。
個人的にはこの「同調圧力」ってのが大っ嫌いで、それを避けることが自分自身の最大のテーマ(笑)だったりもして来たんですが…。
それがここに来て…。

いや、東日本大震災の時もちょっとあったんですけどね。
海外から絶賛される整然とした日本人の災害後の行動。
それはそれで確かに素晴らしいんだけど、そこ

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ナウシカの世界をフラフラと…:読書録「ナウシカ考」

ナウシカの世界をフラフラと…:読書録「ナウシカ考」

・ナウシカ考 風の谷の黙示録
著者:赤坂憲雄
出版:岩波書店

歌舞伎「風の谷のナウシカ」をオンライン視聴するのと並行して見た番組(ナウシカ歌舞伎れんが“家“話)のなかで、鈴木敏夫さんがこの本のことを話してたんですよね。
この本の帯に、その内容が書かれています。

<この本を読んで
はじめて 原作を読みなほしました
よくも描いたものだと
あきれました 
宮崎駿>

それを聞いて、読んでみたくなって

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公安調査庁の「内外情勢の回顧と展望」が読み応えある。:読書録「公安調査庁」

公安調査庁の「内外情勢の回顧と展望」が読み応えある。:読書録「公安調査庁」

・公安調査庁 情報コミュニティーの新たな地殻変動
著者:手嶋龍一、佐藤優
出版:中公新書ラクレ(Kindle版)

読んで一番面白かったのは、紹介されている公安調査庁の「内外情勢の回顧と展望」。
HPで毎年報告されてるようなんですが、これが実に興味深かったw。
これは「おすすめ」。
もっとも公安調査庁が「思う方向」に誘導されちゃうリスクもありますがね。

本書自体は折に触れて出版されている手嶋/佐

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壮大で、緻密で、雑なストーリーw。:読書録「三体Ⅱ 黒暗森林」

壮大で、緻密で、雑なストーリーw。:読書録「三体Ⅱ 黒暗森林」

・三体Ⅱ 黒暗森林<上・下>
著者:劉慈欣 訳:大森望、立原透耶、上原かおり、泊功
出版:早川書房(Kindle版)

ファーストコンタクトを描いた前作を受け、400年かけて地球へ侵略してくる異星人(三体)への、200年をかけての「対抗戦略」が本作では描かれています。
直接的な異星人の「攻撃」よりも、その存在を受けての人類サイドのリアクションに焦点が置かれているのは、前作と同じですね。

読み始め

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